アルツハイマー病を防ぐ 遺伝子変異(NL70)

日本では高齢化が年々進んでおり、厚生労働省の統計によると、2018年には全人口の28.4%が65歳以上の高齢者だそうです。それに伴って認知症患者数も増加しており、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。認知症の原因となる病気の半分以上がアルツハイマー型認知症(AD)なのですが、現在のところ有効な治療薬は創られていません。

米国の研究グループは、遺伝的素因があるためにADを発症する可能性が高い1200人を対象に調査研究を行っています。ADの原因はよく分かっていませんが、プレセニリン1(PSEN1)遺伝子に特定の変異を持つ人は、若年性ADを発症しやすいことが分かっています。ところが、今回報告された女性はこの変異を持っているにもかかわらず、70歳代になってもADの発症がみられませんでした。
そこで、その理由を探るためにゲノムの解析が行われました。すると、(AD発症のリスク遺伝子である)ApoE遺伝子でクライストチャーチ変異という稀な変異を両方の染色体で持っていることが分かりました。この女性の脳を調べたところ、強いアミロイド沈着がみられましたが、脳の萎縮がほとんどみられなかったことから、この変異が神経変性を起こらなくしている可能性が示唆されました。 この発見は、ADの進行を抑える薬の開発につながると期待されています。

Resistance to autosomal dominant Alzheimer’s disease in an APOE3 Christchurch homozygote: a case report.
Arboleda-Velasquez. JF. et.al.
Nature Medicine (2019)
DOI:10.1038/s41591-019-0611-3

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