「がん」の診断マーカーの開発(NL51)
日本人の死因第一位であるがんの克服には「早期発見」による「早期治療」が重要です。
しかし、これまでに開発された「がん」の診断マーカー(がんの進行とともに増加する生体因子で、血液中に遊離している)の多くは、進行したがんの治療効果を判定するために使われるものだそうです。近年の研究の進展から、マイクロRNAと呼ばれる生体因子が、ある種のがんの血液中で上昇することが分かってきました。マイクロRNAは、ゲノム上のタンパク質をコードしていない遺伝子領域から発現し、切断されて20から25塩基ほどになる小さなRNA分子で、ヒトには2,500種類以上あり、様々な生命現象に関わっています。
マイクロRNAは、血液だけではなく、唾液、汗や涙などの体液中にも見つかっており、様々な種類の「がん」の診断マーカーとして使えるのではないかと、世界中で研究が進んでいます。日本でも、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立がん研究センターと東レ株式会社が、アカデミア・企業等他7機関との5年間の共同研究で、乳がんや膵臓がんなど13種類のがんを対象に、65,000人分の血液を解析し、がんとマイクロRNAとの関連を調べて、血液検査で早期に「がん」の診断ができる新手法の研究開発を始めるとのことです。
M Meng-Hsuan et al.
Cell-free Circulating miRNA Biomarkers in Cancer.
J. Cancer 2012; 3: 432-448.
DOI:10.7150/jca.4919