なぜ茎は上に伸びるの?(NL72)

植物を成長させると、根は下向きに茎は上向きに伸びます。これは重力屈性(オーキシンの移動で説明される)によるものですが、重力屈性だけでは、側枝(わき芽)が斜め方向に伸びることを説明することができません。そのため、何らかの相反する作用がありバランスをとっていると長年考えられてきました。

基礎生物学研究所のグループは、シロイヌナズナで重力屈性に関わる遺伝子を探索する過程で、LZYと呼ばれるタンパク質が、重力を感受する細胞で働いていることを明らかにしました。そして、LZYを働かなくした植物体では、側枝が重力屈性に逆らって下向きに伸びることをみつけました。

今回、この植物体を成長の途中で逆さづりにして重力を逆転させてみたところ、側枝は下向きのままだったことから、下向きの伸長にも重力が関わっていることが示唆されます。そこで、この植物体にさらに変異を加えて重力を感知できなくしたところ、側枝はランダムな方向に伸びることが分かりました。このことは、重力屈性に相反する作用もまた、重力感受のしくみが必要であることを示しています。

重力屈性については、高校生物で学習しますが、その分子機構についてはわかっていないことも多く、現在精力的に研究が行われているところです。教科書ではほんの数ページの説明があるに過ぎませんが、植物が最適な構造をどのようなしくみでとるのか、様々な研究が進められているのです。

 

基礎生物学研究所プレスリリース 
植物の根が地中へ、枝が上向きに一定の角度で伸長する仕組み

Gravity-Sensing Tissues for Gravitropism Are Required for “Anti-Gravitropic” Phenotypes of Lzy Multiple Mutants in Arabidopsis.
Kawamoto N, et.al.
Plants (2020)
DOI:10.3390/plants9050615

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