染色体分配に関わるセントロメア・キネトコアの構造とこれを維持する機構をつなぐ、新たな知見が得られました。
2015/11/2
研究開発染色体の分配機構に乱れが生じると染色体数の異常や細胞死、癌など様々な悪影響が生じます。公益財団法人かずさDNA研究所では、これまでに、細胞増殖を通じて安定に分配維持されるヒト人工染色体(HAC)ベクターを用いて、染色体分配に関わるセントロメア・キネトコアの構造とこれを維持する機構の研究を行っています。
セントロメア領域には、染色体分配やDNAの凝縮に関わる数多くのタンパク質が集まっています。セントロメア領域に形成されるキネトコアは、紡錘体糸と結合して染色体を動かす力をつくり出す構造です。また、CENP-Aタンパク質は、セントロメアに集合してキネトコア構造形成に必要な目印や記憶としてセントロメアの特性を維持するタンパク質です。これまでに、CENP-Aタンパク質の集合がCENP-Cタンパク質を介してキネトコア形成に至ることが分かっています。しかしながら、CENP-Aタンパク質が、どのようなメカニズムでセントロメアへ集合し維持されているのかは分かっていませんでした。
今回の研究で、一旦CENP-AからCENP-Cを介してキネトコア構造ができると、今度はキネトコアのタンパク質群がCENP-CやCENP-Iタンパク質を再集合させ、M18bp1タンパク質の集合を介してCENP-Aを集合させ、セントロメアとしての記憶を維持していることが細胞内でのHACを用いた実験で明らかにしました。この研究では、CENP-CやCENP-Iがキネトコア機能とセントロメアとしての記憶をつなぐ重要な役割を担っていることを明らかにしました。
この研究成果は、染色体の安定分配機構の解明と、今後の人工染色体ベクター開発に役立ちます。
研究成果は、11月2日の Journal of Cell Science誌のオンライン版で公開されました。かずさDNA研が主要な貢献をした本研究には、エジンバラ大学、NIH(米国国立衛生研究所)、東京工業大学も共同研究として参加しています。
論文のURL:http://jcs.biologists.org/content/early/2015/10/30/jcs.180786.long