パインアップルの品質に関わるゲノム領域を特定
2024/10/25
研究開発かずさDNA研究所、日本大学、沖縄県農業研究センターは共同で、沖縄県パインアップルの7つの育種集団(全703個体)のゲノム解析を行い、果肉色や糖度・酸度など9つの農業形質に関わるゲノム領域を幅広く特定しました。
パインアップルは南米北部を起源とする熱帯果樹で、沖縄県における特産果樹の一つとなっています。沖縄県では、パインアップルの魅力的な新品種の育成を実施しており、年間で2,000~4,000個体の交配個体の性質調査と育種に利用可能な個体の選抜を行っています。
本研究では、沖縄県で作出された7つの育種集団(全703個体)の果実品質や収穫までの日数に関わる形質の評価と遺伝子型解析のデータから、ゲノムワイド関連解析(GWAS)*1を行いました。この結果、果肉色の濃淡、出蕾までの日数、出蕾から収穫までの日数、糖度、酸度、アスコルビン酸(ビタミンC)、裂果性などの形質に関連するゲノム領域を特定しました。また、これらの領域について、品種改良において有用な遺伝子型を明らかにすることができました。例えば、果肉色の濃淡は第6染色体の一塩基多型(SNP)*2で決定されると考えられます(図)。
本成果をもとに、交配個体のゲノム情報を調査することで、理想とするパインアップル個体の選抜が効率化でき、魅力的な新品種育成が加速することが期待されます。
*1ゲノムワイド関連解析(GWAS):DNAの遺伝子型と形質との関連性を明らかにする技術。本研究では、果肉色の違う個体群同士で遺伝子型の違うところを明らかにしようとした。
*2一塩基多型(SNP):DNAの塩基配列(A、T、G、Cの並び順)のうち、一塩基が変わっている箇所のこと。本研究では、パインアップル第6染色体の、1,231,285番目の塩基がAかGかで果肉色の濃淡が変わることが明らかになった。
論文タイトル:Genome-wide association study of pineapple breeding population
著者:K. Nashima, Y. Omine, K. Shirasawa, T. Sato, M. Yamada, M. Shoda and M. Takeuchi
掲載誌:Scientia Horticulturae
DOI:doi.org/10.1016/j.scienta.2024.113757
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本研究の成果は(公財)かずさDNA研究所、JSPS科研費(24K08901)、イノベーション創出強化研究推進事業(JPJ007097)の助成を受けたものです。