最新技術による高精度なシイタケゲノムの解読 ~新規転移遺伝子の発見~
2025/6/12
研究開発かずさDNA研究所、北里大学、東京大学、Genetic Information Research Institute、森産業(株)は共同で、シイタケゲノムを完全解読しました。
シイタケ(Lentinula edodes)は、栄養や健康に良い成分が豊富で、世界中で食用や薬用として親しまれています。これまでにもシイタケのゲノム研究は進められてきましたが、正確な染色体の数など、まだはっきりしていない部分もありました。
今回の研究では、産業的な栽培でよく用いられている、日本の高収量なシイタケ品種「森XR1号」を材料としました。いわゆるキノコの状態である、子実体から取り出したDNAを使った最新のロングリード技術*1と、胞子から取り出したDNAを使ったシングルセル技術*2を用いた結果、森XR1号のゲノムの染色体は10本ずつ2つのセットで、合計20本であることを確認し、染色体の塩基配列(合計1億塩基対)を端から端まで、ひと続きで決定することに初めて成功しました。
さらに、染色体の末端部分(テロメア)には、Coprina(コプリナ)という種類の新しいレトロトランスポゾン(転移遺伝子)が発見され、これがテロメアの形成に関わっている可能性があることを初めて明らかにしました。
この研究成果は、シイタケの進化や品種改良に貢献するだけでなく、他の食用キノコの研究にも大きな手がかりを与えることが期待されます。
*1ロングリード技術:1万塩基以上の長い配列を連続して読み取ることができる技術。繰り返し配列が多い、似た配列がある、などの複雑なゲノム構造をもつ生物の配列の解読に適している。
*2シングルセル技術:1つ1つの細胞を個別に調べるための技術。細胞ごとの性質や働きの違いを詳しく知ることができる。
論文タイトル:Nearly telomere-to-telomere genome assembly of the L. edodes diploid genome
著者:Kazutoshi Yoshitake, Kenta Shirasawa, Kenji K. Kojima, Shuichi Asakawa, Norio Tanaka, Hiroyuki Kurokochi
掲載誌:Fungal Genetics and Biology
DOI:10.1016/j.fgb.2025.104005
本研究の成果は、(公財)かずさDNA研究所、JSPS科研費(20H00429、22H05172、22H05181)の研究助成を受けたものです。