PCR法によるソメイヨシノ開花予測技術の開発
 〜つぼみから開花に至るまでの遺伝子のはたらきを解析〜

2022/2/18

研究開発

 

かずさDNA研究所は、サクラを代表する人気品種であるソメイヨシノで遺伝子発現に基づいた開花予測技術を開発しました(島根大学、京都府立大学との共同研究)。

現在、サクラの開花予想は、花芽の生育過程に影響を与える気温の変化に基づいて行われていますが、遺伝子の発現をPCR法で解析することにより、ソメイヨシノの開花時期を予測できるようになりました。

この技術は、同じバラ科のナシやモモをはじめとする、さまざまな果樹の開花予測に応用できます。

研究成果は、国際学術雑誌Frontiers in Plant Scienceにおいて、1月26日にオンライン公開されました。
また、3月17日(木)から23日(水)に開催される園芸学会令和4年度春季大会(オンライン)にて発表いたします。

*遺伝子:親から子へと遺伝する、あるいは細胞から細胞へと伝えられる形質を決定する因子であり、生物の体を作り動かすのに必要なタンパク質などを作るための設計図のことで、その本体はDNAである。
*(遺伝子)発現:遺伝子の情報が細胞の構造などさまざまな生体機能をもつタンパク質の合成を通じて具体的に現れることをいう。狭義には、ある遺伝子に対応する遺伝子転写産物(mRNA)が合成されていることをいう場合もある。

詳しくは、リリース資料 をご覧ください。

論文タイトル:Cherry Blossom Forecast Based on Transcriptome of Floral Organs Approaching Blooming in the Flowering Cherry (Cerasus × yedoensis) Cultivar ‘Somei-Yoshino’
著者:Kenta Shirasawa, Tomoya Esumi, Akihiro Itai, Sachiko Isobe
掲載誌:Frontiers in Plant Science
DOI: 10.3389/fpls.2022.802203

図1. ソメイヨシノの萌芽から開花の時期に発現する遺伝子群とその発現量の変化(発表論文データより作成) 国内3地点の複数のソメイヨシノ樹で、花芽~つぼみ~花の組織の経時的なサンプルを用いて全転写産物解析を行った。データ解析手法のひとつであるWGCNA(weighted gene correlation network analysis)により、萌芽(ほうが)から開花の時期に同調・関連して発現量が変化する遺伝子群を見出し、その中でも特徴的な変化を示す7つのモジュールを抜粋して掲示した。各モジュールに含まれる遺伝子の機能や役割については、遺伝子データベースの情報を参照し、主なものを記述した。各グラフの縦軸は遺伝子の発現量に相当する。 萌芽から開花までに働く様々な遺伝子の発現変動を、上図のように全体像としてまとめたことで、正確な開花日予測が可能となった。

 

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