重要な農作物「タマネギ」の巨大ゲノムに挑む
2021/8/23
研究開発かずさDNA研究所は、山口大学、東北大学、農研機構、東京農業大学と共同で、ヒトゲノムの5倍以上の大きさをもつタマネギ(Allium cepa L.)の「全ゲノムの高密度遺伝地図」を作成し、その成果を6月26日付で国際科学雑誌BMC Genomicsに発表しました。
タマネギは、我が国1人当たりの野菜摂取量第1位*の重要な農作物です。
*社会実情データ図録のHPより(http://honkawa2.sakura.ne.jp/0221.html)
タマネギの育種は主として民間種苗メーカーで行われていて、生産者や消費者の要望の多様化に対応するための、ゲノムや遺伝子の情報を活用した先端的な育種技術の開発が求められています。
しかしながら、タマネギのゲノムはヒト(30億塩基対)の5倍以上の160億塩基対と巨大で、ゲノム研究は容易ではありません。このような巨大なゲノムから有用な情報を得るためには、8種類あるタマネギの染色体の上に目印となる遺伝子の場所を記したゲノムの遺伝地図が必要になります。
そこで、数万個と予想されるゲノム上の遺伝子から作られたコピーであるmRNA(メッセンジャーRNA)の大規模な分析を行い、得られた塩基配列データを基に高密度な遺伝地図を作成しました。
この「高密度遺伝地図」により、オランダ ワーゲニンゲン大学、山口大学、東北大学を中心とする国際共同研究チームはタマネギの全ゲノムを解読することができました(7月13日(火)に米国遺伝学会雑誌 G3: Genes, Genomes, Genetics にオンライン発表)。
今回の成果である「高密度遺伝地図」や全ゲノムのDNA配列情報を利用することによって、タマネギの育種、例えばタマネギのもつ優れた形質である硫化アリル(血液サラサラ効果)やポリフェノールなどの機能性代謝物を多く含む品種や、病害虫に強い品種の育成などの加速が期待されます。
これらの情報は、かずさDNA研究所が山口大学と共同で運営するデータベース「Allium TDB」から世界に向けて公開されています。
詳しくは山口大学からのプレスリリースをご覧ください。