令和4年度「かずさの森のDNAキャンプ」 ~高校生を対象としたハイレベル生命科学講座~
2022/8/30
アウトリーチ活動当研究所は、DNA研究のより深い学習から科学的な思考力・判断力・表現力を養う機会を高校生に提供する場として、千葉県内の高校や全国のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校を対象に、「かずさの森のDNAキャンプ」を開催しています。
今回のテーマは「DNAから環境を知ろう!」です。2泊3日の宿泊研修を計画しましたが、国内の新型コロナウイルスの感染状況から、2日間のZoomによるオンライン講習会に変更しました。
予め参加者には、パソコンの他、マイクロピペットやアガロースゲルなどの実験道具を送付し、リモートながら体験実習も含む充実した講習会になりました。
日 時 | 令和4年8月18・19日(木・金)10:00-12:00、14:00-16:00 |
---|---|
会 場 | かずさDNA研究所(Zoomによるオンライン講習会) |
参加者 | 高校生9名(北海道2名、山形県1名、千葉県1名、京都府1名、兵庫県1名、愛知県2名、福岡県1名) |
内 容 | 生徒の皆さんには、予め興味ある場所を綿棒でこすったものを研究所に送ってもらいました。そこに付着した微生物のDNA配列を研究所で解析し、DNAの配列データを生徒の皆さんに送りました。そして、DNA配列をデータベースと照合して、どのような微生物が採取されたのか、またなぜその場所から採取できたのか考察してもらいました。
オンライン講習会は、講義、演示・原理説明、体験、課題発表会の大きく分けて4つのメニューですすめました。来所して行う予定だった実験もビデオをみながら、疑似体験してもらいました。 A 講義 B 演示・原理説明 C 体験 D 課題発表会 |
実習講座の全体像 | (来所して行うはずだった2泊3日の内容を示してあります)
本実習講座の主旨は、1990年代半ばから急激に進んできたゲノム配列解析による「生物情報の加速度的な蓄積」、それをもたらした「DNA塩基配列解析技術の進歩」、また蓄積する膨大な情報データを扱うための「コンピュータ解析技術の急激な発展」を背景に築き上げられた、生命科学の新たな領域である「ゲノム科学」を体験してもらうことです。 身近にいる微生物を綿棒で採集し(調べたい場所)、ゲノムDNAを抽出します。抽出したゲノムDNAの一部(今回は 16S rRNA遺伝子)をPCR法で増幅させ、配列を調べるために、プラスミドと呼ばれる環状のDNAに組み込みます。できあがったプラスミドを大腸菌に入れて(大腸菌の形質転換)一晩増殖させます。 増殖した大腸菌をいくつか選び、「シークエンサー」と呼ばれるDNA塩基配列解析装置で読み取り配列データを取得します。同時に、生物情報科学(バイオインフォマティクス)による遺伝子の解析法を体験し、実際に得られたデータから、どのような種類の微生物がいたのかを配列から明らかにします。また、農業・医療・産業とバイオテクノロジーについて3つのグループに分かれて、良い面や悪い面、将来について話し合い発表をしてもらいました。 DNAキャンプを通して、ゲノム科学に関する幅広い知識を習得するとともに分子生物学の基本的な実験操作を体験することにより、現代社会にDNA研究の成果がどのように役立っているのか、また将来どのようなことに利用できるのか、皆さん自身が考えるきっかけになることを期待しています。 |