トマトの花粉稔性を回復させる新たな遺伝子を発見

2026/1/15

研究開発

 

トマトを含む多くの野菜では、異なる2つの品種を交配して得られるF1品種の開発が古くから行われています。F1品種は、両親の優れた性質を受け継ぎ、収量が多くなるなどの利点があります。F1品種の種子を作るために、自分の花粉で受粉(自家受粉)しないよう、開花前に雄しべを取り除く必要がありますが、非常に手間がかかります。この問題を解決するために役立つのが、細胞質雄性不稔性(CMS)(※)と呼ばれる植物の性質です。CMSを利用することで、雄しべを取り除く作業を省くことが可能になります。一方で、CMSを持つ植物は花粉を作れず、そのままでは果実を実らせることができないため、花粉稔性(花粉が正常に形成され、受粉後に発芽して果実をつける能力)を回復させる遺伝子が必要ですが、トマトではほとんど明らかになっていませんでした。

これまでの研究で、ジャガイモのミトコンドリアゲノムに存在する新たなCMS原因遺伝子候補を発見しました[1]。また、トマトのミトコンドリアRNAポリメラーゼ遺伝子を破壊することにより、CMS原因遺伝子の発現量が著しく低下し、花粉稔性が回復して果実が実ることを実証しました[2]。本研究では、花粉稔性を回復できるトマト系統の核ゲノムの塩基配列を網羅的に解析し、ミトコンドリアDNA複製に関わるDNA polymerase IおよびTopoisomerase Iの遺伝子に突然変異が生じていることを見出しました。また、ゲノム編集技術を用いてこれらの遺伝子を個別に破壊した結果、DNA polymerase IおよびTopoisomerase Iの機能が失われることで、CMSトマトの花粉稔性が回復することを明らかにしました。

本成果によって、トマトのF1品種をより効率よく生産できるようになると期待されます。

 

※細胞質雄性不稔性:ミトコンドリアゲノムに存在する遺伝子が、花粉の形成や機能を阻害する現象。

[1] https://doi.org/10.1093/pcp/pcaf157
[2] https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pbi.70417

 

論文タイトル:Fertility restoration in cytoplasmic male sterile tomato via knockout of either DNA polymerase I or Topoisomerase I, two nuclear-encoded organellar DNA replication genes
著者:Kosuke Kuwabara⁎, Van Bosstraeten Alexis Gaetan, Rika Nakajima, Kentaro Ezura, Kinya Toriyama, Kenta Shirasawa, Tohru Ariizumi
掲載誌:Plant Physiology and Biochemistry
DOI:10.1016/j.plaphy.2025.110970

詳しくは東北大学のプレスリリース資料をご覧ください。

 

 

 

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