白根ニンジンの種子混入を判別する技術の開発
2021/4/26
研究開発農家が栽培する野菜類の多くは、市販されている種子が用いられています。
販売されている種子のほとんどは、南米など海外で生産されています。そして種苗会社では、その種子が正常に発芽し、生育するか、確実にその品種であるかなどを検定する品質検査を行なっています。
ニンジンではごくまれに、白いニンジン(白根ニンジン)ができることが知られています。これは、採種地に自生するニンジン野生種(日本でもノラニンジンとして知られています)の花粉が栽培種のめしべと交配してできるものです。詳しいしくみはまだよくわかっていませんが、私たちが見慣れたニンジンのオレンジ色は潜性*の形質のため、野生型と交配するとその性質が隠れてしまうのです。
残念ながら種子の段階では、オレンジ色のニンジンになるか白根ニンジンになるかの区別がつかないため、輸入された種子の抜き取り調査を行い、DNA判別によりどれくらい白根ニンジンが交じっているかを調べています。
この論文では、判定技術の精度を高めるために、ニンジンが白根になるのにかかわる遺伝子領域を調べて、新たにDNAマーカー判別技術を開発したことを報告しました。
論文タイトル:Development of PCR-based DNA marker for detection of white carrot contamination caused by Y2 locus.
著者:Taeko Shibaya, Chika Kuroda, Shinobu Nakayama, Chiharu Minami, Akiko Obara, Takayoshi Fujii, Sachiko Isobe
雑誌名:Breeding Science
DOI:10.1270/jsbbs.20120
*遺伝に関して「優性・劣性」の表記が見直され、優れている、劣っているという意味に誤解されないように、主に「顕性・潜性」を使うことになりました。2021年度の中学理科の教科書で改訂されました。