植物成分中に空気由来の酸素原子の目印(標識)をつける新システムの構築と、酸素原子が取り込まれた植物成分の網羅的解析手法の開発
2018/5/24
研究開発~新規フラボノイドを発見~
公益財団法人かずさDNA研究所は、サミュエル・ロバーツ・ノーブル財団、大阪府立大学と共同で、メタボローム解析により空気由来の酸素原子が取り込まれた植物成分(代謝物)を網羅的に解析する方法を開発しました。
植物の作り出す代謝物は、染料や香料、医薬品などに利用されています。これら代謝物を人為的に生産できるようにするためには、生合成に関わる遺伝子群を同定することが必須となります。これまでに炭素、窒素、硫黄などの安定同位体を用いてメタボローム解析を行うことにより、代謝物の生合成経路が徐々に明らかになってきていますが、代謝物の構造に多様性をもたらす酸素は、その由来が水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)と複数あり、効率の良い解析方法がありませんでした。
そこで、研究グループはマメ科の牧草であるタルウマゴヤシ(Medicago trancatula)を材料に、密封ガラス容器に酸素の安定同位体を含む空気を取り込ませて植物体全体を安定同位体酸素で標識する手法を確立しました。また、メタボローム解析で非標識のものと比較することで、タルウマゴヤシではこれまで報告されていなかった新規フラボノイドを発見し、標識された酸素原子を特定することに成功しました。
今回確立された手法により、さまざまな有用植物での未知代謝物の探索や生合成経路の解明が行われることが期待されます。
論文は、国際科学誌Metabolomicsで2018年5月11日にオンライン公開されました。
論文のタイトル:Pathway-specific metabolome analysis with 18O2-labeled Medicago truncatula via a mass spectrometry-based approach.
著者:Kota Kera, Dennis D. Fine, Daniel J. Wherritt, Yoshiki Nagashima, Norimoto Shimada, Takeshi Ara, Yoshiyuki Ogata, Lloyd W. Sumner, Hideyuki Suzuki
雑誌名:Metabolomics
DOI番号:10.1007/s11306-018-1364-6