先天性疾患を対象とした乾燥ろ紙血からのタンパク質検査システムの土台となる簡便かつ高感度な分析法の開発

2020/5/11

研究開発

 現在、多くの先天性疾患の診断においては原因となる遺伝子の翻訳領域の変異を調べます。しかしながら、その遺伝子の発現に影響しmRNAやタンパク質の量に大きな変化をもたらす可能性のある発現制御領域などは未解明な場合が多く、遺伝子検査の対象となっていません。発現量の違いが疾患の原因となっている可能性もあることから、原因遺伝子のmRNAもしくはタンパク質の発現量を調べる検査が求められています。

 本研究では、先天性疾患のスクリーニングなどに広く利用されている乾燥ろ紙血(DBS)から疾患に関与する多くのタンパク質を直接検出することができるか試みました。DBSにはヘモグロビン、アルブミン、グロブリンなどの親水性タンパク質が大量に含まれており、これらのタンパク質が微量なタンパク質の検出を妨げることが知られています。本研究においては、DBS由来の検体に対して炭酸ナトリウム沈殿(SCP)を行うことにより、疎水性タンパク質を濃縮すると同時に、DBSに大量に含まれている親水性タンパク質を簡便かつ効率的に除去できることを見いだしました。

更に、最新鋭の液体クロマトグラフィー連結型質量分析計(LC-MS/MS)と最先端のデータ非依存型解析法(DIA)を組み合わせることにより、DBSに含まれる1977種類のタンパク質を同定することに成功しました。これらのタンパク質には、ヒトの遺伝子変異と遺伝病のデータベースであるOnline Mendelian Inheritance in Man (OMIM)に登録されている585種類の疾患関連タンパク質が含まれていました。

 本研究で開発したシステムにより、タンパク質一斉解析(プロテオーム解析)の感度と定量限界を拡大することが可能となりました。このシステムを、新生児などの先天性疾患の検査に応用することで、これまでの検査で見落としていた疾患について、発症の予防と早期治療が可能になることが期待されます。

論文タイトル:Simple and sensitive analysis for dried blood spot proteins by sodium carbonate precipitation for clinical proteomics.
著者:Daisuke Nakajima, Yusuke Kawashima, Hirofumi Shibata, Takahiro Yasumi, Masahiko Isa, Kazushi Izawa, Ryuta Nishikomori, Toshio Heike and Osamu Ohara.
掲載誌:Journal of Proteome Research
DOI:10.1021/acs.jproteome.0c00271
オンライン公開日:2020年4月28日