Manual PowerGet PowerMatch PeakAlignment

提供:KOMICS WIKI
移動: 案内, 検索

ピークのアラインメント

目次


複数のサンプル間で、同じ化合物に由来すると考えられるピークを対応づけることを、ここでは「ピークのアラインメントをする」と呼んでいます。

同一の化合物かどうかの判断は、クロマトグラフィーの保持時間、検出されたm/z値、MS/MSが取られているピークの場合はMS/MSフラグメントパターンの類似性を考慮して行われます。したがってアラインメントをする複数のサンプルは、溶出時間を比較可能な同一のクロマトグラフィー条件で分析されていることが前提となっています。

PowerMatchのアラインメント機能には次のような特徴があります。

  1. MS/MSの類似性を考慮する
  2. PowerFTでイオン化状態を推定しているため、m/zではなく元の分子の分子量で比較することが可能。このため、ポジティブモードとネガティブモードのデータを一緒にアラインメントすることも可能です。

アラインメント条件の設定

PowerMatchを起動しホームディレクトリを選択した後、サンプルセットが作成されているものとします。サンプルセットが作成されていない場合は、前項を参照して作成してください


メイン画面のAnalysisメニューから、Alignment Settings...を選択すると、Alignment Settingsウィンドウが開きます。ここでパラメーターを設定した後、OKボタンを押してください。

アラインメントパラメーター

溶出時間の許容範囲

Alignment Conditions: 欄の「R.T. margin」に、数値(単位は分)を入力します。比較する二つのピークの溶出時間が設定値を超えた場合は、同一化合物と見なされません。

質量値の許容範囲

Alignment Conditions: 欄の「m/z margin」に、数値を入力し、その単位を「ppm」または「m/z」から選択します。比較するふたつのピークの質量値が設定値を超えた場合は、同一の化合物とみなされません。

比較する質量値は「Mass Compare Mode」で以下から選択します。

by Actual Mass
推定された付加イオンを除去した分子の分子量
by Detected Mass
検出されたm/z
by Both
上記二つともが一致していなければ、同一化合物とはみなさない

Enable MS/MS comparison

チェックを入れると、MS/MSが取られているピーク同士はMS/MSの類似性を考慮した比較が行われます。この比較は、サンプルセット作成時に「MS/MS Group Index」に同一の値を入力したサンプル間だけで行われます。

考慮するMS/MSフラグメント

検出されたMS/MSフラグメントのうち、類似性の評価に用いるフラグメントを、下記二つのクライテリアから選択します。

フラグメントの検出強度の強い順に上位n個を採用する。

フラグメント強度が全て同じと仮定し、m/z値に関係なくフラグメント強度について1標本のt検定を行い、その信頼区間設定値α%以上確率で差があると判定されたフラグメントだけを採用します。

どちらを選択した場合でも、フラグメントのm/z値は、Round at欄で設定した小数点で四捨五入され(丸められ)、比較されます。Round at 欄に1(デフォルト)を入力すると、小数点第1位で四捨五入され、整数マスで比較されることになります。

MS/MS類似性の評価

MS/MS matching: で設定します。

PowerMatchでは、MS/MSフラグメントパターンの類似性指標として、下記のような独特のパラメーターを用います。

類似性指標 = ピアソンの相関係数 × ファクター + コサインθ相関係数 × ファクター + スピアマンの順位相関係数 × ファクター

たとえば、ピアソン相関係数のファクターを1、その他をゼロにすると、ピアソンの相関係数だけを用いた比較となります。類似性指標は上記のような単純な式で計算されるため、最大1、最小が-1となるようなスケーリングは行われません。


例えば比較するピークAとピークBで、それぞれ以下のようなm/z値(丸めた後)のフラグメントが評価に使用される場合、

ピークA: 103 273 564 ピークB: 95 273 564 827

一方のピークに存在しないフラグメントの強度(ピークAの95と827、ピークBの103)は、強度がゼロと見なされ、のべ5点での強度が相関係数の計算に使用されます。

フラグメントの強度は、最強強度を100とするようなスケーリングを行わず、そのままの数値が使用されます。


3つの相関係数のうち、どれか一つでも設定した値よりも小さくなった場合は、フラグメントパターンが似ていなかったものとして、マッチしなかったと判定(棄却)されます。類似性指標の設定で、たとえピアソン相関のファクターをゼロに設定してあったとしても、ピアソンの相関係数がこの設定値よりも小さければ棄却されますので、ご注意ください。棄却させたくない場合は、それぞれの相関係数の最小値である-1を設定してください。

溶出時間(RT)によるマス値、MS/MS類似性評価値の重み付け

アラインメントは、1)溶出時間、2)マス値、MS/MSが取得されている場合には3)フラグメントパターンの類似性といった、それぞれ独立した単位の数値をもとに評価されます。R.T. considerationのチェックを入れると、比較するふたつのピークの溶出時間(R.T.)の差に、設定したファクターをかけて、それをマス値の差の増大、MS/MS類似性評価値の低下と見なしてアラインメントを行うようになります。つまり、溶出時間(RT)によって、マス値とMS/MS類似性評価値に重み付けをすることができます。


どの程度のファクターが適切なのかを見極めることが難しいため、この設定はあまり使われることがありません。しかし、うまく設定することでよりよいアラインメントが得られるかも知れません。


ファクター設定は、Weight RT -> Mass欄(マス値用)、およびWeight RT -> CC欄(類似性用)で設定します。

たとえばWeight RT -> Mass欄に0.001(デフォルト)が入力されていると、二つのピーク間の溶出時間の差1秒間あたり、マス値の差が0.001加算されて評価されます。単位はppmではなくマスユニット(m/z)です。

Weight RT -> CC欄に0.05(デフォルト)が入力されていると、二つのピーク間の溶出時間の差1秒間あたり、MS/MSの類似性評価値が0.05減算されて評価されます。

このように、RTのずれが大きいほど、またファクター設定が大きいほど、マス値やMS/MS類似性評価値が設定した許容範囲を超えやすくなり、「マッチしない」と判断されやすくなります。

アラインメントのアルゴリズム

ステップ1)まず、MS/MSが取得できた化合物ピーク同士を比較します。設定条件に適合したピークのうち、MS/MS類似性スコアが最も高かったピークを、同じアラインメント番号にアサインします。

※Enable MS/MS comparisonにチェックが付けられていない場合(MS/MS比較をしないモードの場合)、このステップは省略されます。

※このアルゴリズムは、基本的にFragmentAlignツールのものと同一です。さらに詳細はFragmentAlignのマニュアルをご覧ください。


ステップ2)次に、MS/MSが取得できなかったピークを、ステップ1で作成されたアラインメントと比較します。MS/MS類似性以外の条件に適合したピークが存在し、かつ設定した溶出時間・質量値の許容範囲内にMS/MSが取得できたピークが存在しない場合に、適合したピークのうち最もm/z値が近いピークを、そのアラインメント番号にアサインします。


PowerFTのPeakSelectionでinvalidと設定したピークは、ここでのアラインメント対象になりません。ただし、アラインメントの結果を表示するアラインメントテーブルでは、invalidのピークも合わせて表示させることが可能です。

アラインメントの実行

アラインメント条件を設定した後、以下の手順でアラインメントを実行します。

1)AnalysisメニューからLoad Sample Dataを選択します。

サンプルセットに登録したサンプルのデータが一つずつ読み込まれます。このとき、PowerGet起動時に表示される黒いコンソール画面には、1データが読み込まれるごとに1行ずつ、現在使用しているメモリの情報が表示されます。

※沢山のデータをアラインメントしようとすると、この段階で「OutOfMemoryException」というエラーが発生する可能性があります。インストールと起動の高度な設定に従って、PowerGet起動時の.batファイルを編集して、より多くのメモリを確保できるようにしてください。

2)次に、AnalysisメニューのDo Alignmentを選択すると、アラインメントが開始されます。

アラインメントが終了すると、結果を表形式で示した「アラインメントテーブル」が表示されます。


アラインメントの際、PowerFTで使用したIonization Modeについて、各サンプル間で矛盾がないかをチェックします。もし、同じIonization Modeの登録名であるにも関わらず、サンプルによって違う値が設定されている項目があった場合は、アラインメントの途中で以下の様な画面が表示されます。

ここでは、[Actual - H2]-というIonization Modeが、サンプルAとサンプルBで異なって登録されていることを示しています。

Browse AあるいはBrowse Bを押すと、それぞれのサンプルでの設定内容を確認できます。

Apply A(Aを採用する)、Apply B(Bを採用する)、Rename the title of B as (Bの登録名を別の名前にリネームする)から適宜選んでください。 リネームを選択し適当な登録名を入力すると、以降サンプルBについては、PowerFTに戻った後もリネームされたタイトルで表示されることになります。

OKボタンを押すとアラインメントが続行されます。Abortを押すと処理が中断されます。


このような混乱を防ぐため、アラインメントするサンプル間では、出来る限り同一のIonization Mode設定を使うようにしてください。PowerFTおよびPowerMatchで共通に使われるデフォルトのIonization Modeの設定は、PowerFTの最初の画面のSettingメニューから、Ionization Modes...を呼び出すことで編集できます。

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ツールボックス