テーマ 8生殖細胞は1セットの染色体を持ち、体細胞は2セットの染色体を持ちます

テオドール・ボヴェリが、発生過程での染色体の役割を示します。

こんにちは、私はテオドール・ボヴェリです。私は染色体と、発生での染色体の役割に興味を持っていました。1800年代後半に私はモデル生物として線虫を使用していました。 これら線虫は有性生殖を行なうことから、親の性細胞(精子と卵)は子に与えるもの、すなわち、“染色体”を持っている必要があると私は考えました。 回虫属、寄生回虫 ここで疑問が生じました。もし、精子や卵のような性細胞と普通の体細胞の染色体数が同じ場合には、それらが融合するたびに子の染色体数が倍加していくことになります。しかしながら、子の染色体数が倍加することはありません。そのため、性細胞には染色体数が半分になるというしくみが存在しなければなりません。 このしくみは減数分裂と呼ばれていて、2回の細胞分裂があります。では、最初の減数第一分裂(meiosis I)を見てみましょう。 第一分裂中間期 第一分裂前期 第一分裂中期 第一分裂後期 第一分裂終期 有糸分裂では、細胞が分裂していない時期は、間期にあると言われます。第一分裂の間期には、細胞は核にある素材を複製します。ここにあげた例では、細胞はそれぞれ8本に複製された4つの染色体を持っています。(実際には、減数第一分裂の前期の終わりごろまで、このような構造の染色体を見ることはできません。) [減数第一分裂] 減数第一分裂の前期になると、染色体は凝集し、光学顕微鏡で見ることができるようになります。 それぞれのオリジナルの染色体とコピーはセントロメア領域でつなぎ留められていて、姉妹染色分体と呼ばれます。分裂前期の後半には、相同染色体、例えば、母方の一番染色体と父方の一番染色体、が対合します。この対合した染色体を“相同対”といいます。 [姉妹染色分体] [セントロメア] [相同対] 減数第一分裂の中期には、相同対は細胞の赤道面に移動して並びます。 相同対 減数第一分裂の後期には、相同対は分離して細胞の向かい合った極に移動します。 減数第一分裂は終期で終わります。相同対は母細胞の向かい合った極に集まり、細胞質も分かれ、それぞれが1セットの染色体を持つ2つの娘細胞になります。 2つの娘細胞は、もう一度分裂します。減数第二分裂では、有糸分裂で見られるように、セントロメアは分裂し姉妹染色分体が分離します。減数第二分裂の間期と前期は、減数第一分裂の間期と前期よりはるかに短時間で終わります。 [減数第二分裂] 要約すると、減数分裂開始時に2組の染色体を持つ細胞は、2回分裂してそれぞれ1組の染色体を持つ4つの娘細胞になります。それらは成熟して精子か卵のいずれかになります。 染色体は遺伝に重要に違いありません。 さもなければ、有糸分裂や減数分裂の際に細胞が何本の染色体を受け取るかは問題にはならないでしょう。 私は、適切な数の染色体が正確な発生のために必要なことを証明するために、ウニを用いました。 ウニの卵では、時々2つの精子による受精が起こります。この場合、最初の細胞分裂が不均一になります。受精卵は2つではなく、3つの細胞に分裂します。 これら3つの細胞はそれぞれ分裂を続け、発生は順調に進むようにみえますが、二重受精卵は最終的には死んでしまいます。それらがウニになることはありません。 私は、2つの精子がひとつの卵と受精するときに、余分な染色体が入り込んでいることに気がつきました。 受精後の最初の分裂が非対称で、3つの細胞はそれぞれ不完全なセットの染色体を受け取ります。そして、これらの細胞は死んでしまいます。染色体は遺伝の基礎であり、細胞は適切な発生のために完全な数の染色体を必要としています。 私以外にも染色体についてこれらの結論に達した人がいました。1902年に、コロンビア大学のアメリカ人学生のウォルター・サットンがバッタの染色体の数と形についての論文を発表しました。 [サットンの論文から改変したバッタの染色体] 彼の論文では、サットンはバッタの染色体を大きさや形状の違いで並べています。サットンも私と同じように、形の似た染色体が減数分裂時にペアを作り、相同なペアの分離によって染色体数を減少させることに気がつきました。 サットンと私は染色体がメンデルの遺伝の法則の物質的成分であることを立証しました。 減数分裂時に見られる染色体の分離は、メンデル氏が要素の分離について予測していたものだったのです。

factoid Did you know ?

倍数性とは、生物が2セット以上の染色体を持つことを言います。倍数性は植物ではかなり一般的です。コムギ、ジャガイモ、バナナ、コーヒー、チューリップは倍数体です。

Hmmm...

なぜ植物では倍数性が可能で、一般的なのでしょうか?