オオムギの種子休眠が精密に制御されてきた歴史を解明 ~ビールの品質向上への新しい知見~

2025/11/7

研究開発

かずさDNA研究所が参画した国際研究グループは、我が国で発見されたオオムギの種子休眠性遺伝子(MKK3)を解析し、
地域の気候やビールづくりの目的に合わせて、発芽のしやすさが巧みに調節されてきたことを明らかにしました。

オオムギはビールや麦茶、食品の原料として広く利用されています。収穫前に穂が発芽してしまう「穂発芽」が起こると、品質や収穫量が大きく下がってしまいます。現在では「MKK3」という遺伝子を利用して「穂発芽」を防ぐための品種改良が進められています。

本研究では、大規模なゲノム解析により、MKK3遺伝子の構造が長い時間をかけて複雑に変化してきたことを示しました。さらに、世界中のオオムギ系統のMKK3遺伝子の変異を比較し、穂発芽耐性やビールの醸造特性との関係を解析しました。その結果、人類は地域ごとの環境条件や利用目的に合わせて「休眠レベル」を精密に制御し、穂発芽を防ぎながら高品質なビール原料を生産してきたことが明らかになりました。

この知見は、気候変動が大きくなる現在の栽培環境下で、穂発芽のリスクを抑えつつビールの品質を向上させる次世代育種の道筋を示しています。

詳細はプレスリリース資料をご覧ください。

論文タイトル:Post-Domestication selection of MKK3 Shaped Seed Dormancy and End-Use Traits in Barley
邦題:「オオムギ栽培によるMKK3の選抜が種子休眠性と実用形質を確立した」
掲載誌:Science
DOI: https://doi.org/10.1126/science.adx2022

著者:全41名9か国による国際共同研究、下線はかずさDNA研究所の著者

Morten E. Jørgensen, Dominique Vequaud, Yucheng Wang, Christian B. Andersen, Micha Bayer, Amanda Box, Katarzyna B. Braune, Yuanyang Cai, Fahu Chen, Jose A. Cuesta-Seijo, Haoran Dong, Geoffrey B. Fincher, Zoran Gojkovic, Zihao Huang, Benjamin Jaegle, Sandip M. Kale, Flavia Krsticevic, Pierre-Marie Le Roux, Antoine Lozier, Qiongxian Lu, Martin Mascher, Emiko Murozuka, Shingo Nakamura, Martin Ude Simmelsgaard, Pai R. Pedas, Pierre A. Pin, Kazuhiro Sato, Manuel Spannagl, Magnus W. Rasmussen, Joanne Russell, Miriam Schreiber, Hanne C. Thomsen, Nina W. Thomsen, Sophia Tulloch, Cynthia Voss, Birgitte Skadhauge, Nils Stein, Eske Willerslev, Robbie Waugh, Christoph Dockter

本研究は、(公財)かずさDNA研究所研究補助金、JSPS科研費(23H00333) の研究助成を受けたものです。

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