新しいタンパク質検査法「NANDA」を開発

2025/8/18

研究開発

遺伝子の変化によって起こる病気は「遺伝性疾患」と呼ばれます。近年、こうした疾患に対する治療法は進歩していますが、早期発見が難しく、診断された時点ですでに重い症状や合併症が現れていることも少なくありません。こうした病気の子どもを救うには、すべての赤ちゃんに検査を行い、症状が出る前に病気を見つけることが重要です。
多くの国では、赤ちゃんの血液をろ紙に染み込ませて乾燥させた「乾燥ろ紙血」を用いて、遺伝性疾患を早期に発見する「新生児マススクリーニング」という検査が導入されています。乾燥ろ紙血は保存や輸送が容易で、多くの検体を一度に調べることができますが、現在の検査では対象となる疾患が限られており、時間と手間がかかります。

本研究では、乾燥ろ紙血から「安く、早く、良く」タンパク質を測定できる新しい検査法「NANDA」を開発しました。「NANDA」とは一体「何だ」? この検査法では、簡単な操作でろ紙に大量に含まれるヘモグロビンなどの不要なタンパク質を洗い流し、遺伝性疾患に関係する重要なタンパク質の有無を検出することが可能です。さらに、乾燥ろ紙血の洗浄時に鉄粉を加えることで、磁石を使ってろ紙を効率よく回収できることを発見し、ロボットによる自動処理にも成功しました。この方法を用いることで、1件あたり約500円という低コストで、疾患に関連する約2,000種類のタンパク質を一度に測定することが可能となりました。

世界初の検査技術となる「NANDA」を用いて多くの病気を早期に診断し、適切な治療につなげることが可能になるかもしれません。この検査法を日本から普及させることで、より多くの赤ちゃんの命を救えるようになることが期待されます。

論文タイトル:Toward the Development of a Novel Newborn Screening Modality:In-Depth Nontargeted Proteome Analysis of Dried Blood Spots with a Robotic Pipeline Using Low-Cost Iron Powders
著者:Daisuke Nakajima, Masaki Ishikawa, Ryo Konno, Yusei Okuda, Hideo Sasai, Osamu Ohara, and Yusuke Kawashima
掲載誌:Analytical Chemistry
DOI:10.1021/acs.analchem.5c01720

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