ゲノム解読技術の進歩による遺伝的多様性の解明に期待 ~植物横断的なゲノム解析に向けて~
2025/3/19
研究開発植物のゲノム解析は、2000年に高等植物としては初めてシロイヌナズナの全ゲノムが解読されたことから始まり、現在までにゲノムが解読された植物は1,800種を超えています。私たちは2021年に発表した総説論文 で、染色体レベルでのゲノム解読が可能になったことから、植物の進化研究は、特定の遺伝子のアミノ酸配列を比較するのではなく、ゲノム配列全体の構造に着目する段階にあることを紹介しました。 その後もシークエンス技術は飛躍的に進歩しています。一つの植物種においても複数の品種・系統のゲノム解読が実施されるようになり、その種を成立させるためのゲノム・遺伝子を解き明かそうとするパンゲノム解析が行われています。さらに染色体の端から端までを一続きに解読するテロメア・ツー・テロメア (Telomere-To-Telomere; T2T)というレベルでゲノム解読が達成され始めています。
この総説論文では、T2Tレベルのゲノム解読を達成するために必要な最新のシークエンス技術とデータ解析方法に焦点を当て、植物におけるT2Tレベルのゲノム解読がパンゲノム解析に与える効果を紹介しています。
かずさDNA研究所は、被子植物の全ての目(もく)のT2Tレベルでのパンゲノム解析を目指した「かずさゲノムプロジェクト」を推進しています。また、「和色バイオゲノムコンソーシアム」を有志で設立し、日本固有の生物に着目したゲノム解析も進めています。
論文タイトル:The impact of telomere-to-telomere genome assembly in the plant pan-genomics era
著者:Yuta Aoyagi Blue, Hideaki Iimura, Mitsuhiko P. Sato, and Kenta Shirasawa
掲載誌:Breeding Science
DOI:10.1270/jsbbs.24065
本研究の成果は、(公財)かずさDNA研究所、JSPS科研費(22H05172、22H05181)の研究助成を受けたものです。