セントロメア構造の形成維持機構に関する、新たな知見が得られました。

2016/5/9

研究成果

染色体の分配維持機構(セントロメア機能)に乱れが生じると、染色体数の異常や細胞死、細胞のがん化など様々な悪影響が生じます。公益財団法人かずさDNA研究所ではこれまでに、本来の染色体と同等の分配維持機構を備えた、ヒト人工染色体(HAC)を作製しています。このHACを用いると、セントロメアの構造形成機構や維持機能を調べることが可能になります。

ゲノムDNAとタンパク質などの複合体構造であるクロマチンは、細胞の複製のたびに解きほぐされ、新旧入り交じったヒストンタンパク質が取り込まれて、新しいクロマチンが再構成されます。セントロメア領域がその機能を維持するためにも、同じクロマチン構造が引き継がれなければなりません。
セントロメアの構造形成には、CENP-Aタンパク質を含むセントロメアクロマチンタンパク質の集合が必須ですが、同じセントロメアDNA上へは、これとは拮抗するヘテロクロマチンタンパク質も集合します。クロマチンを構成するタンパク質のひとつ、ヒストンのN末端領域にみられるアセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化などの化学修飾は、これらのタンパク質の集合に大きく関わっています。

そこで、ヒストンH3タンパク質の化学修飾に作用するタンパク質のセントロメアの機能構造への影響を調べる実験を行いました。
まず、HACのセントロメアDNA領域に、ヒストンメチル化酵素(Suv39h1)を結合させて、ヘテロクロマチンの印であるヒストンH3の9番目や27番目のリジン残基のメチル化を誘導しましたが,セントロメアの機能阻害はすぐには起こりませんでした。
ところが、ヒストンH3の9番目や27番目のメチル化されたリジン残基に結合するヘテロクロマチンタンパク質であるPRC1タンパク質やHP1タンパク質を結合させると、速やかなCENP-Aタンパク質の減少と分配機能阻害が引き起こされました。
この結果は、セントロメアの機能構造は、ヘテロクロマチンの印であるヒストンH3の9番目や27番目のリジンメチル化には耐えても、ヘテロクロマチンタンパク質であるPRC1タンパク質やHP1タンパク質の集合には耐えられないことを示しています。

この研究成果は、染色体の安定分配機構の形成に関わるセントロメアクロマチンとヘテロクロマチンの集合機構の解明と、今後の人工染色体ベクター開発に役立ちます。

研究成果は、1月1日付けのMolecular Biology of the Cell誌で公開されました。この研究は、英国エジンバラ大、NIH(米国国立衛生研究所)との共同研究です。

論文情報:
Martins NMC, Bergmann JH, Shono N, Kimura H, Larionov V, Masumoto H and Earnshaw WC.
Epigenetic engineering shows that a human centromere resists silencing mediated by H3K27me3/K9me3.
Mol Biol Cell. (2016) Jan 1;27(1):177-96.
doi: 10.1091/mbc.E15-08-0605. Epub 2015 Nov 12.

論文のURL:
http://www.molbiolcell.org/content/27/1/177.long