オオムギのゲノム多様性の大規模解読に成功-品種改良のための複雑なDNA情報の活用が可能に-
2024/11/14
研究開発かずさDNA 研究所が参画した国際研究グループは、最新のロングリード技術によってオオムギの⾼精度なゲノム解読を⾏い、ビールの醸造や病害抵抗性に関わる遺伝⼦などの構造が品種間で変化していることを明らかにしました。
オオムギはビールの醸造や、⻨飯などの⾷⽤、⻨茶などに⽤いられている重要な穀物の⼀つです。しかし、オオムギのゲノムは約50 億塩基対と巨⼤で、ヒトの1.7 倍、イネの13倍もあります。したがって、オオムギの品種によるゲノムの違いを明らかにすることは、時間的・経済的にも容易ではなく、多くの品種のゲノム配列を⾼精度に解読する技術の開発が求められていました。
本研究では、国内外にある76 種類のオオムギのゲノムを最新のロングリード技術によって解読し、⾼精度なゲノム情報を取得しました。得られたゲノム情報を相互に⽐較した結果、醸造に必要なデンプン分解酵素遺伝⼦の数がビールの醸造に関わる酵素の働きと関連していることや、病害抵抗性に関わる遺伝⼦構造の違いが明らかになりました。この結果から、ビール醸造に有⽤なオオムギの選抜や、病原菌の集団などに対する作物の適応が、オオムギがもつ遺伝⼦の構造変化と関連している可能性があることがわかりました。
今回の成果により、世界の異なる環境で⽣育する様々なオオムギのゲノムの多様性が明らかになりました。これを利⽤することによって、オオムギの品種育成にかかる時間的・経済的なコストが削減され、新品種の育成が加速することが期待されます。
詳細はプレスリリース資料をご覧ください。
論文タイトル:Structural variation in the pangenome of wild and domesticated barley
邦題:「野生および栽培オオムギにおけるパンジェノムの構造変異」
掲載誌:Nature
DOI:10.1038/s41586-024-08187-1
著者:全80名12か国、下線太字はかずさDNA研究所の著者
Murukarthick Jayakodi, Qiongxian Lu, Hélène Pidon, M. Timothy Rabanus-Wallace, Micha Bayer, Thomas Lux, Yu Guo, Benjamin Jaegle, Ana Badea, Wubishet Bekele, Gurcharn S. Brar, Katarzyna Braune, Boyke Bunk, Kenneth J. Chalmers, Brett Chapman, Morten Egevang Jørgensen, Jia-Wu Feng, Manuel Feser, Anne Fiebig, Heidrun Gundlach, Wenbin Guo, Georg Haberer, Mats Hansson, Axel Himmelbach, Iris Hoffie, Robert E. Hoffie, Haifei Hu, Sachiko Isobe, Patrick König, Sandip M. Kale, Nadia Kamal, Gabriel Keeble-Gagnère, Beat Keller, Manuela Knauft, Ravi Koppolu, Simon G. Krattinger, Jochen Kumlehn, Peter Langridge, Chengdao Li, Marina P. Marone, Andreas Maurer, Klaus F.X. Mayer, Michael Melzer, Gary J. Muehlbauer, Emiko Murozuka, Sudharsan Padmarasu, Dragan Perovic, Klaus Pillen, Pierre A. Pin, Curtis J. Pozniak, Luke Ramsay, Pai Rosager Pedas, Twan Rutten, Shun Sakuma, Kazuhiro Sato, Danuta Schüler, Thomas Schmutzer, Uwe Scholz, Miriam Schreiber, Kenta Shirasawa, Craig Simpson, Birgitte Skadhauge, Manuel Spannagl, Brian J. Steffenson, Hanne C. Thomsen, Josquin F. Tibbits, Martin Toft Simmelsgaard Nielsen, Corinna Trautewig, Dominique Vequaud, Cynthia Voss, Penghao Wang, Robbie Waugh, Sharon Westcott, Magnus Wohlfahrt Rasmussen, Runxuan Zhang, Xiao-Qi Zhang, Thomas Wicker, Christoph Dockter Martin Mascher & Nils Stein
本研究は、(公財)かずさDNA 研究所、JST 未来社会創造事業18076896、JSPS 科研費(23H00333、22H05172、22H05181) の研究助成を受けたものです。