植物工場への一歩 ~植物で外来DNAの状態を操作~

2023/3/24

研究開発

かずさDNA研究所は、ヒトの人工染色体の開発を進めてきました。細胞分裂の時に染色体を引っ張る把手部分(X字型の交わったところ)はセントロメアと呼ばれ、DNAが染色体として機能するのに必須の部分です。ヒトの人工染色体はセントロメアの配列に似せた合成DNA配列を細胞に導入することで作れます。その人工的な配列に任意のタンパク質を結合させて、人工染色体を操作する技術を駆使し、研究を深めてきました。

今度は、この技術を植物での物質生産に活かすことを試みました。

これまで、微生物や動物細胞に外来遺伝子を導入して、工業原材料や医薬品原材料など有用な物質を作る技術が開発されてきました。植物でも外来遺伝子を導入した直後に起こる一過的な発現で抗体医薬などを生産させることなどには実績があります。しかし植物で外来遺伝子を永続的に発現させることは大変難しく、導入された外来遺伝子は生育とともに発現が抑えられてしまいます。
これはエピジェネティクスと呼ばれる現象で、DNAの配列は変わらないのに、DNAや、DNAが巻き付いているヒストンと呼ばれるタンパク質に、発現させないための目印がつけられることが関係しています。逆に発現させるための別の種類の目印もあります。
そこで、ヒトの人工染色体で培った任意のタンパク質を狙ったDNA配列に結合させる技術を使って、そのような目印を付け替えることを試みました。これが可能になれば植物で永続的かつ都合のいいタイミングで外来遺伝子を発現させることが可能となります。

今回、ヒトの人工染色体で培った技術を応用し、外来のDNA配列とそこに集合するヒストンの目印を人為的に変更することに成功しました。これは今後、植物で外来遺伝子の発現を自在に制御する技術の第一歩となります。

詳しくは発表論文をご覧ください。
ヒトの人工染色体(ニュースレター特集):PDF 2,260KB
ヒトの人工染色体作製法の改良:https://doi.org/10.3390/cells11091378
ヒトのセントロメア配列上のエピジェネティクス:https://doi.org/10.1242/jcs.243303
植物で外来DNAの状態を操作:https://doi.org/10.1111/tpj.16164

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