ホンシメジのゲノムから共生進化を考える

2023/2/7

研究開発

かずさDNA研究所、基礎生物学研究所、信州大学と金沢大学は、共同でホンシメジの全ゲノムを解読しました。

「香り松茸、味しめじ」という言葉にあるしめじは、「ホンシメジ」のことです。秋にコナラやアカマツ林で採取された天然ものはとても美味です。

ホンシメジなどキノコの仲間はカビなどと同じ「菌類」に含まれ、木材や土壌などの有機物を分解する「腐生性」のものと、樹木と“共生”する「外生菌根性」のものに分けられます。キクラゲやシイタケなどは「腐生菌」、トリュフ、ボルチーニやマツタケなどは「外生菌根菌」です。

外生菌根菌は、系統が異なる複数の腐生菌からそれぞれ独立に進化したと考えられ、

①ゲノムサイズは増大し、
②木材を分解する酵素の遺伝子は減少する、

という共通した特徴が知られています。しかしこれらの特徴が、樹木との共生に必要な条件なのか、共生の結果そうなったのかはわかっていませんでした。

そこで今回、「ホンシメジ」のゲノムを解読したところ、外生菌根性にもかかわらず共通した特徴がみられなかったことから、①②の特徴は共生の“結果”だということがわかりました。ホンシメジは外生菌根菌に進化して歴史が浅いと考えられ、腐生菌に近い特徴も残っています。近年、ホンシメジの人工栽培が可能になったのもそのことと関係しているのかもしれません。

今後、菌類と樹木の共生に関わる遺伝子の研究が進めば、他の外生菌根性キノコの人工栽培も可能になるかもしれません。             

詳しくは、プレスリリースをご覧ください。

論文タイトル:The genome of Lyophyllum shimeji provides insight into the initial evolution of ectomycorrhizal fungal genomes
著者:Yuuki Kobayashi, Tomoko F. Shibata, Hideki Hirakawa, Tomoaki Nishiyama, Akiyoshi Yamada, Mitsuyasu Hasebe, Shuji Shigenobu, Masayoshi Kawaguchi
掲載誌:DNA Research
DOI:10.1093/dnares/dsac053


図1:菌類の系統関係と生態様式
外生菌根菌は腐生的な祖先からいくつもの系統で独立に進化したと考えられている。

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