令和3年度「かずさの森のDNAキャンプ」 ~高校生を対象としたハイレベル生命科学講座~

当研究所は、DNA研究のより深い学習から科学的な思考力・判断力・表現力を養う機会を高校生に提供する場として、千葉県内の高校や全国のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校を対象に、「かずさの森のDNAキャンプ」を開催しています。

今回のテーマは「DNAから環境を知ろう!」です。2泊3日の宿泊研修を計画しましたが、国内の新型コロナウイルスの感染状況から、Zoomによるオンライン(2日間、計8時間)を利用した講習会に変更しました。

予め参加者には、パソコンやWebカメラの他、マイクロピペットやアガロースゲルなどの実験道具を送付し、リモートながら体験実習も含む充実した講習会になりました。

日 時 令和3年8月18・19日(水・木)10:00-12:00、14:00-16:00
会 場 かずさDNA研究所(Zoomによるオンライン講習会)
参加者 高校生9名(北海道2名、山形県1名、千葉県1名、東京都1名、神奈川県1名、愛知県1名、大阪府1名、佐賀県1名)
内 容 生徒の皆さんには、予め興味ある場所を綿棒でこすったものを研究所に送ってもらいました。そこに付着した微生物のDNA配列を研究所で解析し、DNAの配列データを生徒の皆さんに送りました。そして、DNA配列をデータベースと照合して、どのような微生物が採取されたのか、またなぜその場所から採取できたのか考察してもらいました。

オンライン講習会は、講義、演示・原理説明、体験・課題発表会の大きく分けて4つのメニューですすめました。来所して行う予定だった実験もビデオをみながら、疑似体験してもらいました。

A 講義
・DNA研究とバイオテクノロジー
・微生物の世界と実社会での利用

B 演示・原理説明
・DNA抽出
・PCR、電気泳動
・遺伝子組換え実験
・塩基配列の解析

C 体験
・マイクロピペット操作
・電気泳動(ゲルへのアプライ)
・バイオインフォマティクス(配列解析)
・DNAキーホルダーの作製

D 課題発表会
課題①:DNAから環境を知ろう!(個人発表)
課題②:バイオテクノロジーってなに?(班単位発表)

実習講座の全体像 (来所して行うはずだった2泊3日の内容を示してあります)

本実習講座では、1990年代半ばから急激に進んできたゲノム配列解析による「生物情報の加速度的な蓄積」、それをもたらした「DNA塩基配列解析技術の進歩」、また蓄積する膨大な情報データを扱うための「コンピュータ解析技術の急激な発展」を背景に築き上げられた、生命科学の新たな領域である「ゲノム科学」を体験することができます。

初日は、身近にいる微生物を綿棒で採集し(調べたい場所)、ゲノムDNAを抽出します。抽出したゲノムDNAの一部(今回は 16S rRNA遺伝子)をPCR法で増幅させ、配列を調べるために、プラスミドと呼ばれる環状のDNAに組み込みます。できあがったプラスミドを大腸菌に入れて(大腸菌の形質転換)一晩増殖させます。

2日目は、増殖した大腸菌をいくつか選び、「シークエンサー」と呼ばれるDNA塩基配列解析装置で読み取り配列データを取得します。同時に、生物情報科学(バイオインフォマティクス)による遺伝子の解析法を体験し、実際に得られたデータから、どのような種類の微生物がいたのかを配列から明らかにします。また、農業・医療・産業とバイオテクノロジーについて3つのグループに分かれて、良い面や悪い面、将来について話し合い発表をしてもらいました。

3日目は、明らかにした微生物の特徴や、採取場所との関係を発表してもらいます。また、農業・医療・産業とバイオテクノロジーについて3つのグループに分かれて、良い面や悪い面、将来について話し合った結果を班で発表してもらいます。

DNAキャンプを通して、ゲノム科学に関する幅広い知識を習得するとともに分子生物学の基本的な実験操作を体験することにより、現代社会にDNA研究の成果がどのように役立っているのか、また将来どのようなことに利用できるのか、皆さん自身が考えるきっかけになることを期待しています。

感想 ・オンラインながらも刺激的な体験をすることができ、生命科学への関心がさらに高まりました。実験器具などを郵送していただけたことで、家にいながらも現地に行ったかのような体験ができたことがとてもよかった。特にDNA配列から微生物の種を予測するという体験は今までにしたことがなく、バイオインフォマティクスにも触れたことがなかったのでとても勉強になりました。

・DNAの解析をする技術を体験し身近に感じることができた。実際に自分で採取した微生物の塩基配列を解析してとてもワクワクした。

・学校では出会えない全国のハイレベルな人たちと話せて仲良くなれたこと、研究所の先生方の講義や講評によってバイオテクノロジーについて深く考えさせられたこと、DNAの実際の塩基配列を見られてよりDNAに興味を持つことができて良かった。

・シーケンシングすることにより、身の回りにある菌を調べることができ、そこの環境を知ることができました。そして発表活動によって、自分では気づかないような視点で意見を聞けてとても勉強になりました。講義もスライドや動画を使いながら説明していただいたのでとてもわかりやすく、様々なことを知ることができました。これからも、生物学について詳しく学んでいきたいと思いました。

・PCR法や、バイオインフォマティクスを学べたこと。科学についてだけでなく、バイオテクノロジーについても考えを深められたことが良かった。

・ただ知識を得るだけでなく、器具の操作や実験方法についてもくわしく学ぶことができた。科学技術について様々な角度から考えることができ、人とのつながりが持てたことが良かった。

・科学部や生物部に所属している参加者も多かったので共通の話題で盛りあがる友達を得ることができた。講義は難しい内容も多かったが、生命科学に対してより興味がわいた。

・今年はコロナの影響で実験を千葉まで行ってすることはできませんでしたが、その分2日間の計8時間という間でDNAキャンプに参加した理由でもあった課題を見つける能力という点において、班活動などを通して学べたということはとても大きなものでした。

・私の知らなかったDNAの事を深く知れた事が一番良かったです。また、私と同じもしくはそれ以上にDNAが好きで深く勉強したいという意思・興味を持っている方々と出会い交流できた事も良かったです。