臨床研究を加速する基盤技術を開発しました

2018/11/20

研究開発

 近年、生命現象や疾患メカニズムをより詳細に理解するために、様々な生体分子を網羅的に解析するオミックス解析を組み合わせた統合オミックス解析が行われ始めています。しかしながら、個々のオミックス解析によって適した前処理が異なるために1つのサンプルを小分けして保存することが求められ、サンプル保存にあまり手間を掛けられない手術検体や少量しかサンプル採取ができない臨床検体などで統合オミックス解析を行うことは困難です。
*オミックス解析とは → 用語説明

 そこで、本研究では小分けすることなく1つのサンプルから RNA、DNAおよびタンパク質を連続的に抽出することが可能なフェノール/グアニジニウムチオシアネート(P/GTC)試薬に着目し、この試薬による連続抽出法をベースとした統合オミクス解析手法の構築を行いました。P/GTC試薬は核酸研究では一般的に使用されますが、タンパク質研究では使用される事例がほとんどないため、まず初めにP/GTC試薬から抽出されたタンパク質が網羅的タンパク質解析(プロテオーム解析)に適応可能かを評価しました。
 
 その結果、十分に網羅性の高いプロテオーム解析が行えることを証明することができ、タンパク質分解酵素や夾雑物の多い試料などでは、むしろP/GTC試薬からのタンパク質抽出の方がプロテオーム解析に適していることを明らかにしました。さらに、ヒト好中球とHEK293細胞からP/GTC試薬によってRNAとタンパク質を連続抽出してトランスクリプトーム解析とプロテオーム解析を行い、構築した方法で統合オミクス解析ができることを実証しました。

 ここで構築した方法は臨床統合オミックス研究の基盤となる技術であり、様々な臨床検体への応用が期待できます。

論文のタイトル:Proteogenomic analyses of cellular lysates using a phenol-guanidinium thiocyanate reagent.(フェノール/グアニジニウムチオシアネート試薬を用いた細胞溶解物のプロテオゲノム解析)
雑誌名:Journal of Proteome Research
著者:Kawashima Y, Miyata J, Watanabe T, Shioya J, Arita M, Ohara O.
論文のHP:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jproteome.8b00609
かずさDNA研究所と、理化学研究所、横浜市立大学、慶応大学との共同研究