エキビョウキンのDNAによる系統比較法を開発しました

2020/1/22

研究開発

 トマト/ジャガイモ疫病は、エキビョウキンという微生物が寄生して起こります。この病気は、1840年代に起こったアイルランドのジャガイモ飢饉(ききん)以降、今もなお世界中のトマトやジャガイモに膨大な被害をもたらしています。疫病を対策し防除するために、エキビョウキンに抵抗性をもつ作物品種の育成が行われていますが、エキビョウキンの変異するスピードが速く、また、菌株が世界的に移動している例も見られることから、従来の疫病対策法では対応しきれない状況です。

 エキビョウキンのゲノムは2009年に報告されていますが(Nature 461, p393–398)、ゲノムサイズが大きい(約2.4億塩基対)ことなどから、ゲノムの情報が系統解析などにあまり活かされていませんでした。

 そこで、エキビョウキン株の遺伝的多様性を理解するために、トマトやジャガイモに疫病を引き起こす病原であるエキビョウキンをエジプトや日本から収集し、さまざまな分析方法でゲノム多様性を調べたところ、次世代シークエンサーを利用する方法が有効であることが分かりました。そしてこの方法により、エジプトで収集された菌株からこれまでに報告のない系統を見出すことに成功しました。

 この方法を応用することにより、エキビョウキンの遺伝子型と薬剤耐性や流行しやすい環境条件などの相関を取ることができます。また、トマトやジャガイモの様々な系統と比較解析することで、エキビョウキンに耐性のある品種を作り出すことができると期待されています。

エジプト農業研究センター、カイロ大学などとの共同研究

論文タイトル:Analysis of the lineage of Phytophthora infestans isolates using mating type assay.
traditional markers, and next generation sequencing technologies.
著者:Ramadan A. Arafa1, Said M. Kamel, Mohamed T. Rakha, Nour Elden K. Soliman, Olfat M. Moussa, Kenta Shirasawa.
掲載誌:Plos One
DOI:10.1371/journal.pone.0221604
オンライン公開日:2020年1月21日

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