テーマ 17遺伝子はDNAからできています

オズワルド・アベリーのチームが、タンパク質ではなく、DNAが、遺伝分子であることを証明しています。

はじめまして。オズワルド・アベリーです。私は同僚と一緒に、肺炎を起こす肺炎球菌の株を使った一連の実験を行いました。 肺炎球菌は宿主の体の中で増えますが、他のタイプの細菌と同様に、固形または液体培地で増やすこともできます。 1928年、フレッド・グリフィスは肺炎球菌の異なる株についての研究を発表しました。特にS株とR株の2つは違って見えます。S株のコロニーは表面がなめらかであり、R株のコロニーはでこぼこに見えます。 [なめらか(S)] [粗い(R)] S株のコロニーがなめらかに見えるのは、それぞれの細菌が糖でできたカプセル状の膜を持っているからです。この膜タンパク質は 宿主の免疫系からS株の菌体を守っています。そのため、S株は感染性を持っているのです。膜のないR株には感染性がありません。グリフィスはS株を注入したマウスは肺炎を起こし、数日のうちに死ぬことを発見しました。 [S株] R株を注入されたマウスは肺炎を起こしません。 [R株] グリフィスはひとりの患者から異なる株の肺炎球菌を培養できることに気がつきました。彼はひとつの株が別の株に変化することができるのかが気になり始めました。このアイデアを試すために、彼は R株とS株を使って一連の実験を行いました。 グリフィスは、まずS株の培養液を熱して、その菌を殺しました。予想どおり、それをマウスに注入しても、熱で殺菌された細菌は感染性を示しませんでした。 グリフィスは熱で殺菌したS株と生きているR株を一緒にマウスに注入しました。大変驚いたことに、マウスは肺炎を起こして、死にました。 更にもっと驚いたことに、グリフィスは感染したマウスの血液からS株を単離することができたのです。 培養したものは他のマウスにも感染しました。感染したマウスからの培養したS株は活性を持ったままで、その変化は安定していて、遺伝しました。 グリフィスは、ある“因子”が熱で死んだS株からR株に移ったのだと結論を出しました。この因子がR株を感染能力のある、なめらかな膜を持ったS株に変えた(形質転換)のです。 [粗い][因子][なめらか] 私はグリフィスの結果を読んで、形質転換する“因子”にとても興味を持ちました。コリン・マックロード、マクリン・マッカーティと私はマウスの代わりに試験管内で分析する手法を用いて、実験を始めました。 私たちは、熱で殺したS株の細胞を溶かすために、洗浄剤を使いました。 [洗浄剤] [溶解液][細胞の破片] それから、この溶解液を形質転換の分析に使いました。 この試験管分析はうまくいき、熱で殺したS株の溶解液は、R株をS株に変化させることができると分かりました。形質転換因子は、この溶解液の中の何かでした。 [膜][タンパク質][DNA][RNA] [チューブにカーソルを合わせて中を見る] 私たちは、溶解液の成分ごとに、形質転換能力があるかどうかを調べました。まず、私は熱で殺菌したS株の溶解液を、糖の膜を完全に破壊する酵素であるSIIIを加えて、培養しました。 [酵素SIII] 私たちは、糖の膜のないS株溶解液の形質転換能力を調べました。 [膜無し][溶解液] 糖の膜のないS株溶解液は、依然として形質転換できました。このことから、R株は、S株の糖の膜の断片をつないで新しい膜を作るのではないと分かります。 次に、私たちは糖の膜のないS株の抽出液にタンパク質分解酵素であるトリプシンとキモトリプシンを入れて培養しました。 [トリプシン][キモトリプシン] 私たちは、このS株溶解液の形質転換能力を調べました。 このタンパク質のない溶解液は、まだ形質転換できました。ですから、形質転換因子はタンパク質ではありません。 [膜無し][タンパク質無し][溶解液] 溶解液を試し、純化しながら、私たちは核酸、すなわち、DNAとRNAをアルコールで沈殿させました。私たちは初めて肺炎球菌から核酸を単離したのでした。 [アルコール][核酸] 形質転換因子は糖でもタンパク質でもなかったので、私たちは、それは核酸のうちのひとつだろうと疑いました。私たちは沈殿を水で溶かし、その溶液の形質転換能力を試しました。 最初に、RNA分解酵素でRNAを分解しました。 この溶液に形質転換能力があるかを調べました。 [膜無し][タンパク質無し][RNA無し] この溶液は形質転換能力を持っていました。ですので、RNAは形質転換因子ではないでしょう。 残ったのは、事実上、純粋なDNAでした。最後のテストとして、私たちは溶液にDNA分解酵素であるDNaseを加えて培養しました。 この溶液に形質転換能力があるかを試しました。 [膜無し][タンパク質無し][RNA無し] [DNA無し] 溶液には形質転換能力がありませんでした。 私と同僚はDNAが形質転換因子であると結論を出し、1944年にこれらの結果を発表しました。

factoid Did you know ?

今では、アベリーの実験が与えたであろう衝撃の大きさを想像することは難しいことです。アベリーの実験までは、科学者たちには細菌が遺伝子を持つということすら、はっきり分かっていなかったのです。

Hmmm...

アベリーの実験はDNAが形質転換因子であることを示しました。しかし彼はどのように形質転換が起こるのか明らかにしようとはしませんでした。あなたはどのように形質転換が起こるのだとと思いますか?