酵母の人工合成(NL60)

出芽酵母(パン酵母)は最も単純な真核生物として、分子生物学の初期から研究に用いられています。1996 年に真核生物として初めてゲノムが解読されて以降は、すべての遺伝子のそれぞれを欠損させてその表現型を調べるなど、網羅的なアプローチによる研究も行われてきました。そのような流れの中で、米国・中国・英国・フランスの研究グループは、酵母のゲノムを人工合成した DNA に置き換える「Synthetic Yeast 2.0(合成酵母 2.0)」プロジェクトを立ち上げました。

2014 年には、最初の 1 本(272,871 塩基対)を 3 番染色体(316,617 塩基対)と置き換えることに成功しました。そして、その染色体が完全に機能すること、125 世代(約 10 日間)にわたって安定に子孫に伝わることも確かめました。そして、今回発表した7論文では、新たに 2、5、6、10、12 番染色体に相当する 5 本を人工合成し、置き換えた酵母を作製したことを報告し、すべての染色体の設計も終わり、今年中にはすべての染色体を入れ替えた酵母が完成するだろうとしています。

完成した人工酵母は、真核生物の最少ゲノムを調べたり、遺伝子の並び順の再配置による進化研究などの基礎的な研究のほか、遺伝子改変により薬などの有用物質を生産する酵母を作るなど様々な目的で利用できます。