ニワトリから恐竜をつくる?(NL53)

1990 年出版の SF 小説『ジュラシック・パーク』では、バイオテクノロジーを駆使して恐竜を復活させましたが、現実世界では、まだまだ不可能です。それでも爬虫類から鳥類への進化のしくみを研究することで、現実となる日が来るのかもしれません。

米国の研究チームはこれまでに、どのようにして爬虫類の口になる部分、吻(フン)が鳥類のクチバシに変化したのか、鳥の種によるクチバシの形態の違いはどのようにして生じるのか、についての研究を行ってきました。

多くの生物種の研究から、顔の骨格形成には、FGF と WNT という分泌性のタンパク質が関わっていることが分かっています。そこで、卵の中で顔が形成されている時期のワニとニワトリの胚で、これらのタンパク質の働きを比較したところ、ニワトリではタンパク質が発現している範囲が広く、後にその部分がクチバシになることが分かりました。

次に、ニワトリ胚のクチバシになる予定の領域で、これら 2 つのタンパク質がつくられるのを人為的に抑制したところ、ワニや恐竜のヴェロキラプトル(中生代の獣脚類)の口に似た骨格に変化したのだそうです。

古生物学者のジャック・ホナーは、ニワトリの遺伝子のいくつかを祖先型に戻すことで、『チキノサウルス』を作れるのではないかと言っています。この結果を見ると、案外、夢物語ではないのかもしれませんよ。

Callaway E
‘Dino-chickens’ reveal how the beak was born
Nature 12 May 2015
DOI:10.1038/nature.2015.17507
Bhullar BA et. al.

A molecular mechanism for the origin of a key evolutionary innovation, the bird beak and palate, revealed by an integrative approach to major transitions in vertebrate history.
Evolution. 2015 Jul;69(7):1665-77. Epub 2015 Jun 30.
DOI: 10.1111/evo.12684

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