Manual PowerGet PowerFT MainWorkFlow PeakAssignment
解析ステップ4)Peak Assignment
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これまでの解析ステップで処理したデータを統合します。まず内標補正した質量データをとりこみ、質量精度が高い位置でピークの精密質量を決定します。MS/MSデータも統合します。さらに、化合物中の炭素原子の数の絞り込みに役立つ13C/12C比の計算も行います。これらの情報と、推定されたイオン付加体の種類をもとに、組成式の推定と代表的なデータベースに対する検索を、全ピークに対して高速に行います。これらの集計結果はマニュアルでの編集・修正が可能です。
Peak Assignmentまで解析したデータは、PowerMatchで読み込んで他の解析データとアラインメントをとることができます。繰り返し分析やブランクとの比較など、複数の分析データがある場合、データベース検索などのアノテーション作業は、PowerMatchで行うことをお勧めします。PowerMatchではより強力なアノテーション機能が提供されています。
解析の流れ
前ステップまでの解析データを開いたら、まず以下の処理を行います。
- 精密質量の計算
- MS/MSデータの統合
- 13C/12C比の計算
- イオン付加体の推定
これで、アノテーションに必要な情報がすべて統合されます。その後は、データベース検索ツールなどを使って、アノテーションを進めます。
編集したピークのアノテーション情報は、FileメニューのSave Dataを行うことで保存されます。時間をかけて作った大切なアノテーション結果を守るためにも、こまめな保存をお勧めします。
ツールの起動とデータの読み込み
解析ステップ3まで終了した後、PowerFTメイン画面からホームディレクトリを選択して、AnalysisメニューのPeak Assignmentを選択します。右図のようなウィンドウが開きます。
FileメニューOpen Analysisを選択し、解析名を選択したのちにOKボタンを押します。
進捗ウィンドウが表示された後、ツール画面の大きな表にデータが表示されたら、データの読み込み完了です。
はじめに行う処理
最初にPeak Assignmentでの処理を行う時は、データを読み込んだ後、以下の4つの処理をこの順序で行ってください。この操作により、これまでに解析したデータが全て統合され、アノテーションを進めるための準備が整います。
※PCが不安定なときなどは、各処理ごとにセーブをして次に進むと安全です。各処理で早めにクリックや選択をしてしまって出力ファイルが実際にはできていない(または途中までしか処理できていない)場合に、後の処理が途中で止まることがあります。その場合は少し前の処理に戻って再処理を行うとうまくいく場合があります。
精密質量の計算
前準備のステップで作成した、内標補正した質量データを統合します。
AnalysisメニューのAttach Corrected Massを選択すると、右図のような画面が現れます。フォルダアイコンのついたボタンをクリックして、内標補正で作成したISC_~という名前のファイルを選択してください。OKボタンを押してFile Settings画面を閉じます。
※ 内標補正をせずISCファイルが存在しない場合は、このファイル選択手順はスキップしてください。
次に、WindowメニューからExact Mass Calcを選択し、右図の様な画面を表示させてください。このExact Mass Calculation画面が表示されている状態で、AnalysisメニューのCalc. All Exact Massを選択してください。進捗ウィンドウが現れたのち、すぐに消えて処理が終了します。
処理が終了したら、Exact Mass Calculation画面は閉じても結構です。
※ 内標補正をせずISCファイルが存在しない場合も、この操作は行ってください。
上記の操作をすると、全ピークに対して精密質量の計算がされます。
※この段階では、まだピークグループテーブルのm/z Actual Predictedの列は質量値が0のままです。この列のデータは、イオン付加体の推定のステップが終わった後に表示されるようになります。
Exact Mass Calculation画面の設定項目の詳細はこちらをご覧ください。
MS/MSデータの統合
AnalysisメニューのAttach MS/MS Dataを選択すると、ファイル選択画面が現れます。フォルダアイコンのついたボタンをクリックして、MS/MSの対応付けステップで作成した、MSMS.txtという名前のファイルを選択してください。OKボタンを押してFile Settings画面を閉じます。
※MS/MSデータが存在しない場合は、このステップは省略してください。
ここでは、13C同位体グループ中で、一番m/zの小さいピーク(PowerGet用語でBase Peakと呼びます)についてだけ、MS/MS情報が付加されます。Base Peakのピークトップに一番近いMS/MSデータが、そのピークを代表するMS/MSデータとして採用されます。
13C/12C比の計算
Windowメニューの13C/12C Ratio Calc.を選択し、右図の様な画面が現れます。この13C/12C Ratio Calculation画面が表示されている状態で、AnalysisメニューのCalc. All 13C/12C Ratioを選択してください。 すぐに処理が終了します。
13C/12C Ratio Calculation画面の設定項目の詳細は、こちらで解説します。
イオン化モード(イオン付加体の種類)の推定
SettingメニューからDefault Ionization Modeを選択します。ダイアログボックスが現れるので、質量分析のモード(ポジティブ/ネガティブ)を考慮して、デフォルトのイオン化モードを選択してください。
多くの場合、ポジティブモード分析では[Actual + H]+、ネガティブモード分析では[Actual - H]-が採用されます。
設定したら、OKボタンを押してダイアログを閉じます。
その後、AnalysisメニューのPredict Ionization Modeを選択してください。全ピークについて、イオン化モードの推定が行われます。また、検出されたm/z(m/z Detected)から付加体の質量を加減した、正味の化合物質量(m/z Actual Predicted)が計算され、ピークグループテーブル中に表示されます。
イオン化モードの修正
解析ステップ3(Peak Characterization)で評価されたイオン化状態と、ここで設定したデフォルトのイオン化モードが矛盾する場合には、ピークグループテーブル中のIonization Modeの欄は、空欄のままか、複数のイオン化モードが記載されます。この場合、正味の質量の欄は0になります。
m/z Actual Predictedのカラムヘッダーをクリックすると、数値の大小でソートされるので、数値がゼロのものをピークグループテーブルの上端(あるいは下端)に表示させます。ピークの詳細情報を編集するPeak Group Details画面で、一つずつ、イオン化状態を適切なものに修正してください。
Peak Group Detailsの操作についてはこちらをご覧ください。
データ閲覧
ピークグループテーブル
取得されたピークの情報が表形式で表示されます。カラムの意味は以下です。
カラム | 説明 |
---|---|
ID | ピークグループ(13C同位体ピークをまとめ上げたもの)に付けられた通し番号 |
Deconv. ID | 解析ステップ3で計算されたデコンボリューショングループに付けられた通し番号 |
Member Num. | ピークグループに含まれる同位体ピークの数 |
RT (ave) | ピークトップの溶出時間 (min)。13C同位体ピークがある場合は、それらのピークトップの平均溶出時間。 |
m/z Detected | 検出されたmz/ |
m/z Actual Predicted | イオン付加体の質量をm/z Detectedから差し引いた質量。イオン化モードが決定できない場合は0になります。 |
Intensity | Base Peak(モノアイソトピックイオンピーク)の強度(エリア値) |
Annotation | ピークのアノテーション |
Ionization Mode | イオン化モード |
Char. Base | 解析ステップ3で関連ピークが見つかった場合、Adduct Ion Settingsで定義したTitle。Baseとして定義していた場合ここに表示される。 |
Char. Target | 解析ステップ3で関連ピークが見つかった場合、Adduct Ion Settingsで定義したTitle。Targetとして定義していた場合ここに表示される。 |
Fragmentation | MS/MSデータから、オートフラグメンテーションの可能性がある場合、possibleと表記される。 |
MS/MS Data | MS/MSデータが存在する場合はyesと表記されます。 |
Peak Cor. | Base Peak(モノアイソトピックイオンピーク)のピーク形状と理想の形状とのピアソン相関係数。データがない場合は-2 |
Peak log(P) | 上記Peak Cor.のp-valueのlog 10値。最小は-20。 |
[DB All] | データベース検索および組成式演算を行った結果(下記[ExactMass]~[Pep1000])の数の合計。 |
[ExactMass] | MFSearcherによる組成式高速演算の結果得られた組成式数 |
[KNApSAcK] | MFSearcherによるKNApSAcKへのデータベース検索結果数 |
[KEGG] | MFSearcherによるKEGGへのデータベース検索結果数 |
[PubChem] | MFSearcherによるPubChemへのデータベース検索結果数 |
[KomicMarket] | MFSearcherによるKomicMarketへのデータベース検索結果数 |
[FlavView] | MFSearcherによるFlavViewへのデータベース検索結果数 |
[LipidMAPS] | MFSearcherによるLipidMAPSへのデータベース検索結果数 |
[Pep1000] | MFSearcherによるPep1000へのデータベース検索結果数 |
valid | 有効ピークかどうか |
checked | MFSearcher作業用のチェック。チェックされたものだけMFSearcherで検索対象となる。 |
label | ユーザーが任意につけることができるラベル |
locked | チェックされていると、MFSearcher等による自動的なデータ更新が行われない。 |
to KomicMarket | (管理者用)チェックを入れたモのだけがKomicMarketへ登録される |
カラム設定
SettingメニューのTable Columns...を選択すると、各カラム(列)についてピークグループテーブルへの表示の有無や、表示の順番を変更できます。
表示したいものにValidを付けます。順番を変更するときは、移動したいカラム名を選択して、▲または▼のボタンを押します。
Applyボタンを押すとテーブルに反映されます。
フィルター
SettingメニューのSearch and Filter...を選択すると、Data Filterパネルが表示されます。フィルター条件を入力してFilterボタンを押すと、条件を満たすピークだけが、ピークグループテーブル上に表示されます。条件をクリアして全件表示するときはClearボタンを、条件をクリアせずに全件表示するときは、Show Allボタンを押してください。
ピークテーブル右下のFilterアイコンを押すことでも、Data Filterパネルを表示することができます。
数値データについては二つにテキスト入力欄があり、上限値と下限値を入れます。どちらかが省略された場合は、最小値・最大値がそれぞれ入ったモのとして扱われます。
チェック状態の変更 Record Marker
ピークグループテーブル上では、validやcheckedなどのチェック状態を変更することができません。チェック状態を変更するには、Peak Group Details画面で個別に設定するか、Record Markerツールで一括変更できます。ここでは、Record Markerについて説明します。
SettingメニューからMark Recondsを選択するか、ピークグループテーブルの右下のMarkerボタンを押すと、Record Marker画面が表示されます。
それぞれのチェック項目に対して、「Mark」(チェックを付ける)と「Unmark」(チェックを外す)のボタンがあり、ボタンを押すと実行されます。
パネル上部には、FilteredとSelectedの選択項目があります。
Filteredが選択されていると、フィルター機能などで絞り込み、現在ピークグループテーブルに表示されているもの全部に対してMarkまたはUnmarkされます。
Selectedが選択されていると、現在ピークグループ上で選択され青色反転されているもののみが、Mark/Unmark処理の対象となります。
任意の文字列を入力できる「Label」については、コンボボックスが表示されており、登録した文字列を選んでMarkすることができます。新しい文字列を登録したい場合は、テキスト入力欄に文字列を記入し、Newボタンを押します。ラベルを消去したい場合は、コンボボックスの一番上(空欄)を選択し、Markボタンを押してください。
Peak Group Details
ピークグループの詳細情報は、WindowメニューPeak Group Detailsで閲覧できます。詳細情報画面(Details of Peak Group)が開いた後、ピークグループテーブルを改めてクリックしてください。クリックしたピークグループの情報が表示されます。
詳細情報画面は、三つのタブから構成されています。
Peak Group Infoタブには、基本情報とアノテーション情報が掲載されています。
Related Peaksタブには、13C同位体ピークグループの詳細と、Peak Characterizationで得られたピークが表示されています。
Evidencesのタブには、推定された組成式についてアノテーションの根拠を記録する機能があります。
編集機能
Peak Group Infoタブでは、値を変更・編集した後にUpdateボタンを押すと、編集内容が適用されます。
アノテーションの編集、Evidencesタブの編集については、こちらの詳しい解説をご参照ください。
視覚化ツール
2D View
Windowメニューから2D Viewを選択すると、現在選択されているピークグループを、二次元のマスクロマトグラム上で見ることができます。
動作はPeak Characterizationツールの2D Viewとほぼ同様です。ピークグループテーブル上でピークグループを選択すると、そのピークグループ周辺が拡大表示され、ピークトップに赤丸がつきます(複数行選択した場合は、一番上のピークグループだけについて表示されます)。
Peak View
WindowメニューPeak Viewを選択すると、右図のような画面が表示されます。
ピークグループテーブルで選択したピークについて、
上のパネル: 横軸 - 溶出時間、縦軸 - 強度
下のパネル: 横軸 - m/z、縦軸 - 強度
のデータを閲覧することができます。同じデコンボリューショングループに入るピークも同時に表示されます。
Peak CharacterizationのPeak Viewと同様の動作です。
MS/MS View
WindowメニューのMS/MS Viewを選択すると右図のような画面が表示されます。
ピークグループテーブルからMS/MSデータが存在するピークグループを選択すると、MS/MSが取得されたイオン(□)と、このピークの代表として選択されたMS/MSが取得されたイオン(赤い■)が表示されます。下段には、その代表MS/MSのスペクトルが表示されます。
Show Textボタンを押すと、MS/MSのデータを数値で表示します。表を選択状態にしてCTRL + Cを押すことで、数値データをコピーし、メモ帳やExcelにペーストすることができます。
無効になっているボタンは、現在機能がつけられていません。また、deltaの列も常にゼロです。
データ解析・編集
組成式推定、データベース検索 MFSearcher
Windowメニューから、MF Searcherを選択します。右図のMF Searcher画面が表示されます。
個別検索
この状態でピークグループテーブルをクリックすると、質量値、イオン化モード、検出された13C/12C比がパネル上に挿入されます。対象となるDBを選択してSearchボタンを押すと、結果画面が得られます。
Peak Group Detailsの画面が開いていれば、Addボタン(追加)またはRepボタン(入れ替え)で、検索結果をピークグループに添付することができます。その後Updateボタンを押すと、データがピークグループに記録されます。
バッチ検索
checkedのチェックのついた全ピークグループに対して、組成式の推定およびデータベース検索を行います。
MFSearcher画面が開いている状態で、AnalysisメニューからAll DB Searchを選択してください。案内画面が出てOKを押すと、checkedを付けたグループに対してデータベース検索が行われます。Lockedがついたものは、検索結果の上書きがされません。
対象となるデータベースの選択の他、元素の数による組成式の絞り込みや、13C/12C比での絞り込み方法の設定などができます。こちらの詳しいご案内をご参照ください。
ピーク情報の編集
Peak Group Detailsで、ピーク情報を編集することができます。
詳しくはこちらをご参照ください。