81ることが可能となります。この利点を活かして、アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそくが呈するエンドタイプ(分子病態による分類)を定義するため、エンドタイプと表現型分類を結びつけるための疾患連続性を有した臨床データを得ます。また、かずさDNA研究所が有するマルチオミクスプラットフォームを活用して、新たなバイオマーカーの探索を行います。さらに、重度のアレルギー症状を呈する小児患者さんに対しては、シングルセル解析を実施して、より確度の高い検証を行う予定です。 バイオマーカーの探索についてはCHIBA studyを参考に推進します。CHIBA studyは、千葉大学小児病態学で行われたハイリスク出生コホート研究で、出産時情報から1か月、4か月、1歳、2歳、3歳、5歳、7歳までのアレルギーの家族歴のある小児を対象としています。当該研究により、ビタミンDの低値が1歳時の食物アレルゲン感作の極めて高いリスクファクターとなること、1歳時点の食物アレルゲン感作およびアトピー性皮膚炎が7歳時点での気管支喘息発症のリスクファクターとなることがわかりました。このCHIBA studyの結果から、乳児期早期のビタミンD介入によってアレルギーマーチの発症予防が可能か検討するために、出生直後から6か月までビタミンDもしくはプラセボを投与する、プラセボコントロール無作為化比較試験(Vitamin D mediated Prevention of Allergic march in Chiba(D-PAC) study)を行っています。D-PAC研究においても臍帯血、6か月、1歳時の単核球、血清の保存、6か月、1歳時の腸内細菌叢の解析を行っています。CHIBA study及び介入研究であるD-PAC studyで培った出生コホート研究のノウハウを活用して新しい出生コホート研究を立ち上げます。3.将来展望 アレルギー疾患は国民の半数以上が罹患する疾患で、QOLの著しい低下から生産性の低下を招くことから、予防が可能となれば社会全体として極めて有益です。アレルギーマーチの予防には特に乳児期早期の介入が重要であり、その点において本出生コホート研究はこの課題解決に重要な役割を果たすと考えられます。世界各国でアレルギー発症予防研究が行われていますが、未だにアレルギー疾患有病率の減少にはつながっていません。私たちは君津・木更津地区での長期にわたる出生コホート研究を継続し、アレルギー予防に対して安全かつエビデンスのあるものを用いて介入を行い、アレルギー疾患の有病率の減少を目指します。また、アレルギーマーチの予防を行うモデル都市として国内外に情報を発信し、アレルギー疾患の有病率の減少を目指します。君津・木更津地区の基幹病院である君津中央病院、地域の出産を担う産院、小児を診療するクリニック、乳幼児健診を担う行政とのネットワークを利用し、アレルギー発症予防研究だけでなく、他の疾患においても発症予防や重症化予防を目指すことが可能となります。URL:https://www.kazusa.or.jp/laboratories/advanced-department/budding-research-lab/translational-omics-team/
元のページ ../index.html#88