30周年記念デジタルブック
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DNA解析センター HP https://dna.kazusa.or.jp/67グループ長田畑 哲之1.ミッションと主要なテーマ   植物DNA解析グループは、かずさDNA研究所でこれまでに蓄積されてきたゲノム情報や分析ノウハウを利用して、主に実用植物や微生物を対象とするさまざまなDNA分析や実用技術開発の受託サービスを行っています。また、最新技術の導入や独自技術の開発を行い、これらを積極的に提供することによって、最先端DNA分析技術の利活用を推進しています。DNA分析技術を広く社会に普及させ、産業支援だけでなく、環境保護・食品安全・バイオテクノロジーなどの領域においても貢献できます。これまでDNA分析を行ったことのない方にもこれらの技術を提供することで、DNA解析に対する理解を社会全体に広めることができます。私たちはDNA分析を通じて問題解決と新たな機会を創出し、持続可能な未来の実現に寄与します。2.最近のトピックスや成果等    F1種子の純度検定、品種識別、DNAマーカー解析とマーカー分析、次世代型シークエンサーを用いたゲノム解析、ゲノム情報解析ならびに種子病害検査などを受託で解析しています。F1種子の純度検定はウリ科・アブラナ科・ナス科・ネギ類・ニンジン(セリ科)・イチゴ(バラ科)などの園芸作物を中心に、自殖種子の混入割合を主にSSRマーカーを用いて解析しています。品種識別解析は、種苗法の改正をうけて、2022年頃から種苗業界だけでなく、個人や警察組織などからの鑑定依頼が増加しています。 依頼があった植物種は多岐にわたり、園芸作物や果樹のほか、シバやサクラといった景観作物や花木などの検定も行いました。DNAマーカー解析は、主に育種選抜で用いることを目的とした解析です。公表されている文献などから、病害耐性など品種改良に欠かせない重要な形質の選抜に適しているDNAマーカー情報を探索し、これらのマーカーが依頼者の希望する育種集団の選抜に使えるかどうかを確認します。SSRマーカーなど従来型のDNAマーカーだけでなく、次世代型シークエンサーを用いたゲノム解析の取り組みにも力を入れています。全ゲノムシークエンスの他、遺伝子発現解析(RNA-Seq)、制限酵素認識サイトの近隣領域を解析するdd-RAD-Seq法やトヨタ自動車株式会社が開発したGRAS-Di法などによるゲノムワイドな遺伝型(ジェノタイピング)解析も行っています。 また、次世代型シークエンサーから得られたデータの解析は高度な専門性を要するため、情報解析も受託で提供しています。情報解析を行う際は、最適な解析法の提案や得られた結果の解釈などもお伝えすることで、解析結果だけでなくDNA解析技術に対する理解を深めてもらえるように努めています。DNA配列解析は技術発展が非常に速い分野です。そこで、最新の研究を行ってる植物ゲノム・遺伝学研究室と連携し、常に最新の技術を提供できる体制で事業を展開できるよう取り組んでいます。3.将来展望 植物DNA解析グループの活動は2008年に始まりました。この間、最新の技術を導入しながら、日本の種苗産業や食品産業などの産業界、ならびに大学や国公立研究機関などのアカデミア界に対し、DNA分析技術の普及と提供に努めてきました。これからも日本の関係機関に最新のDNA分析技術を提供し続けるとともに、DNA分析が普及していないアジアなど近隣の諸国にも分析技術の提供を行い、世界に貢献するかずさDNA研究所としての役割を果たしていきます。植物DNA解析グループ

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