65グループ長長谷川 嘉則1.ミッションと主要なテーマ 遺伝子構造解析グループは、開所以来30年の間に培ってきた各種技術とノウハウを確実に継承していくこと、その技術とノウハウを研究所内で活用しつつ、共同研究や受託サービスを通して社会還元していくことをミッションとしています。ノウハウの中には、長年の技術の変遷を体得した上で、さまざまな経験をしたからこそ得られたものがたくさんあります。遺伝子解析においては、DNA・RNAの品質や量に合わせた適切なサンプル処理の方法を解析目的に応じて選択することが重要です。サンプルが細胞集団である通常のシークエンス(DNA配列分析)だけでなく、1細胞レベルの超微量のシークエンスや、分解が進んだサンプルのDNA・RNAのシークエンスなど、技術的に難易度の高い解析も増えてきています。最新技術を常に取り入れながら、かずさDNA研究所が保有する遺伝子クローンや特許技術を利用した独自技術の開発も進めています。2.最近のトピックスや成果 2014年度に全国レベルでの広範な受託サービスを開始したのち、2015年度に当研究所発のベンチャーとして設立された株式会社かずさゲノムテクノロジーズ(KGT)とも連携し、順調に受託額を伸ばしています。2021年度・2022年度には、総額3億円を達成しました。そして、この原資を元に多額の初期投資が必要な最新の先端遺伝子分析機器を取り揃え、共同研究や受託サービスに活用しています。 技術開発として、当研究所の財産であるcDNAクローン、および、特許技術である新規部位特異的組換え酵素を活用した研究を進めています。また、文部科学省の都市エリア事業で得た研究成果を発展させて、導入した遺伝子の発現が安定に続く安定発現細胞株の新規作製方法を開発しました。これらの成果は、学術論文として公表したのち、KGTを通じた受託メニューに追加しています。 次世代シークエンサー・ロングリードシークエンサーの最新機器を活用した研究も進めています。若返るベニクラゲの研究や環境DNAを活用した研究などは、衆目を集めています。ベニクラゲの全ゲノム解析については2022年に学術論文として発表しました。現在は、ベニクラゲ細胞の脱分化(初期化)や分化(機能を持つ細胞になること)に関わる遺伝子の解析を進め、若返り機構の解明をめざしています。3.将来展望 技術やノウハウの継承は確実に行っていかなければいけません。高い品質を保ちながら再現性のある作業を行うという、開所以来の伝統である「かずさプライド」を受け継ぐことが何よりも大事だと考えています。作業に携わる全ての人が「かずさプライド」を持つことが重要です。実作業は当然のこと、言葉だけでなく、マインドを伝えていくために、人材育成にも力を入れていきます。遺伝子構造解析グループ
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