30周年記念デジタルブック
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53最先端の分子レベルの代謝オミクス解析技術を通じた社会貢献 ゲノム研究の対象は、当初のゲノム(=DNA)に留まらず、遺伝子発現(=mRNA)や遺伝子産物(=タンパク質)、さらには代謝物質へと展開しています。生命現象の維持には、生体内外の多種類の代謝分子が重要な役割を果たしています。生体分子解析センターは2007年に設置されたバイオ産業技術支援センターのサブセンターのひとつ(当時の名称は生体物質解析センター)として、研究・産業界への貢献が期待される画期的技術であった精密質量分析によるメタボロミクスの受託事業を開始しました。その後このサービスは、より幅広い代謝分子の高精度解析を行うため2018年に新たに設置された生体分子解析グループに引き継がれ拡充されました。このように私たちは様々な生命現象を分子レベルで解き明かす上で欠かせない代謝オミックス(メタボロミクス、リピドミクス)技術について、その黎明期から研究開発や応用研究に取り組んでいます。 代謝オミックス解析は、長年にわたって植物・ヒト・動物のように生物種によって区分され、それぞれで発展してきましたが、近年では腸内細菌のように共生する微生物と宿主との代謝の相互作用が着目されるなど、様々な生物種間での横断的/網羅的な解析が求められるようになってきました。このように代謝オミックス解析の高度化や複雑性も飛躍的に高まってきていることから、私たちは独自の分析や探索システムの新規開発などを通じて、解析技術のさらなる向上に現在取り組んでいます。 これまで培ってきたノウハウを受託分析サービスにより広く展開し、ヘルスケア・医療・農業・食品などの様々な分野に応用して、幅広い産業の発展を支援するなどの社会還元・貢献にも努めています。さらに、最近では産学共同研究を通じてシーズ技術の社会実装化を推進し、代謝分子ビックデータ構築に向けた基盤分析の技術開発、ヘルスチェックツールの開発、機能性ペプチドの開発など、健康長寿社会の実現に向けた取り組みを進めています。(池田 和貴)生体分子解析センターの開設

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