フェノーム解析におけるデータ取得イメージ植物の三次元(3D)計測の実際52植物形質データの大規模収集に向けて かずさDNA研究所ではこれまで様々な植物種のゲノム解読や遺伝解析を行ってきました。これらの情報を研究や育種に活かすには、DNA配列の情報を機能と結びつけること、すなわち、DNA配列の特徴と個体の形質の特徴とを比較し関連づけることが必要です。この比較には多くの植物個体の形質情報(表現型=フェノタイプ)を蓄積しなければなりません。 そこで、植物のフェノタイプを多様なデジタル技術を用いて大量に測定する(フェノタイピング)技術の開発に取り組んでいます。植物のフェノタイピングには、対象とする植物種や目的により必要な技術が異なるため、用途に応じたカスタマイズが必要です。また、圃場や温室などの環境は、高精度なデータをデジタルデバイスで大規模に安定して取得するのが厳しいものであるために、考慮すべき技術的課題が多くあります。これらの課題を乗り越えながら、様々な植物フェノタイピング技術の開発を行ってきました。開発した主な技術は、植物の形状データを高精度に計測する三次元(3D)計測技術、大量の植物体の計測を効率よく実現するための栽培ポット(鉢)自動搬送技術、大量の植物の成長状態を記録するための小型ドローン撮影技術、そして栽培環境のデータを高精度に計測するセンサーシステム技術などです。 さらに重要になるのは、取得した大規模デジタルデータから必要な情報を抽出し、ゲノム情報と比較し関連づける手法の開発です。撮影された画像からは、物差しや秤など従来の計測デバイスで得られる情報以外にも、形ほか生長に伴う変化など、得られる可能性のある多くの情報が解析の対象になります。 これまでに開発したフェノタイピング技術を活用して、大規模な形質情報を包括的に取得することで、植物が成長し、次世代を作り、枯死に向かうまでの過程における変異の抽出と、変異から生じた現象を理解するフェノーム解析の確立に取り組んでいます。(磯部 祥子)植物フェノタイピング技術の開発
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