30周年記念デジタルブック
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SSRマーカーによる遺伝的連鎖地図の例(イチゴ)Isobe et al. DNA Research 20:79-92(2013)47ゲノム育種の基盤情報を整備 DNAマーカーは、品種や個体間でDNA配列が異なる領域を識別するものです。研究対象とする遺伝子の位置を、ゲノム上で特定するための遺伝解析に重要な役割を果たします。DNA配列の分析技術の発展にあわせて、これまでに様々な種類のDNAマーカーが開発・利用されてきました。かずさDNA研究所では、次世代型シークエンサー(NGS)が登場する以前は、EST(Expressed Sequence Tags)配列などを利用したSSR(Simple Sequence Repeat:単純反復配列)マーカーを主に開発していました。NGSが導入されて以降は、一塩基多型(SNP:Single Nucleotide Polymorphism)マーカーの開発が主流となっています。当研究所でDNAマーカーの開発を行った実用植物種は、トマト・落花生・ダイコン・イチゴ・クローバなど50種以上にのぼります。 遺伝的連鎖地図は、DNAマーカーやSNPなどの相対的な位置関係を、遺伝的組換え頻度(連鎖距離)で推定し、染色体上に示したものです。NGS登場前の連鎖地図作成はSSRマーカーやSNPアレイなどを用いて手間と時間がかかりましたが、NGS登場後は、RAD-Seq(Restriction-site Associated DNA Sequencing)法など大規模全ゲノムDNA配列解析で検出された多数のSNPを利用するため、染色体全体に渡って短期間で作成できるようになりました。また、かつては多種多様な実用植物で全ゲノム解読を行うことが技術的に困難であったため、ゲノムの全体の構造を知るための情報としても連鎖地図は重要な役割を果たしていましたが、今では染色体全体のSNPのパターンだけからも形質を予測できるようになりつつあります。また、連鎖解析以外でも、開発したDNAマーカーは、品種開発において優良な形質をもった個体を選抜する選抜マーカーとして、また、品種の同定や種子の純度などを調べる検定用マーカーなどとして利用されています。(磯部 祥子)実用植物のDNAマーカーと連鎖地図の整備

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