45研究所の技術や成果を社会に活かす かずさDNA研究所は、DNAやゲノムを対象に高度な基礎研究や技術開発を行うことに加えて、そこから得られた知識や技術を社会に役立てることをミッションとしています。このうちの特に後者を実現するため、開所以来多くの大学や公的研究機関、民間企業と共同研究を実施してきました。この活動を通じて、共同研究先から最先端ゲノム関連分析の希望が非常に多いこと、特に民間企業からは権利関係が生じない有料の受託分析サービスの需要が多いことがわかりました。 そこで、様々なゲノム関連解析で優れた技術や経験をもつ複数の研究グループが参加して、各々の技術を活かした受託分析を行うバーチャルな組織を構築することを検討しました。その結果、「オミックス解析普及センター(当時の名称はバイオリソース普及センター)」「DNA解析センター」「生体分子解析センター(当時の名称は生体物質解析センター)」の3つのサブセンターから構成される「バイオ産業技術支援センター」を2007年に設置し、受託分析サービス事業を開始しました。受託メニューの選定にあたっては、公益法人としての活動であることから、社会的需要が高いにもかかわらず既存のサービスが十分でないこと、価格面で民業を圧迫しないことを考慮しました。 開設当初はDNAシークエンシングや実用植物のDNAタイピングが分析メニューの中心でしたが、メタボロミクス(大規模質量分析)やゲノム情報解析、コンサルティングなどの新規メニューが加わり、事業は順調に成長しました。その後、2017年にかずさ遺伝子検査室(44,61ページ参照)が新たに設置され、希少難病の遺伝学的検査や新生児スクリーニングが始まり、さらにプロテオーム(タンパク質大規模)解析が加わったことによって、受託件数や売上収入も大きく増加しました。 現在では、ロングリードシークエンシングやシングルセル解析などのシークエンシング関連の先端的技術、リピドミクス(脂質大規模分析)の導入、農業用種子の品質検査(F1種子純度検定)、ゲノム育種支援などが加わり、公的研究機関や民間企業に基礎的分析から検査事業まで幅広いサービスを提供することによって、研究支援や産業支援を展開しています。また、売上収入の一部を分析機器の更新に充てることで、常に最新の技術を社会に提供することができています。(田畑 哲之)バイオ産業技術支援センターの開設
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