かずさDNA研究所でゲノムが解読された実用植物(抜粋)38作物の品種改良の効率化に弾み シロイヌナズナ、ミヤコグサ、トマトのゲノム解読の経験を活かし、かずさDNA研究所は、多くの実用植物のゲノム解読にも取り組みました。おりからのシークエンス技術の進歩を取り入れてその解析手法も変化していきました。 ユーカリとヤトロファ(ナンヨウアブラギリ)については、第一世代のDNA配列解析技術であるサンガー法を用いた全ゲノムショットガン法で行いました。ユーカリはオーストラリア原産の常緑高木で、生育が早く、製紙業で使用されるパルプ材として有用性があったことから、王子製紙株式会社との共同研究で行いました。ヤトロファは中南米原産の落葉低木で、種子を絞って得られるヤトロファ油がバイオ燃料として利用価値が高いことから、大阪大学との共同研究で行いました。 2000年代の半ば以降、DNA塩基配列の分析技術が急速に進展し、次世代シークエンス技術が実用化されると、大量のゲノム情報を収集できる新型の装置の利点を活かして、60種類を上回る数の実用植物のゲノム解析を実施してきました。野菜(ダイコン・ナス・トウガラシ等)や果樹(ブドウ・サクランボ・ナシ等)、花き(アジサイ・キク・サクラ等)などを対象とした解析では、国内外の大学や研究機関、種苗メーカーとの共同研究を広く展開しました。さらに、ゲノム解析が困難とされていた高次倍数体(ラッカセイ・イチゴ・サツマイモ等)や、巨大なゲノムを持つ針葉樹(スギ・ヒノキ等)などの解析にも成功しました。そして、解読データの多くは国際塩基配列データベース並びに当研究所で個別のデータベースを構築して公開しています(https://www.kazusa.or.jp/genome/)(https://plantgarden.jp)。 これらのゲノム研究の成果から、学術的にも産業的にも重要な遺伝子が発見されたほか、DNA鑑定による品種識別技術を開発したり、ゲノム情報に基づいた新しい品種開発技術を応用して新品種が開発されたりするなど、ゲノム研究が社会実装され、種苗産業の発展に大きな役割を果たしています。(佐藤 修正、白澤 健太)実用植物ゲノムの大規模解読
元のページ ../index.html#45