30周年記念デジタルブック
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自生する(五島列島)ミヤコグサ宮崎大学 橋口 正嗣 准教授 提供36ミヤコグサの花日本に自生するマメ科のモデル植物を世界に発信 ミヤコグサはアジアの温帯地域に分布するマメ科の草本植物で、日本では沖縄から北海道まで広く自生しています。貝原 益軒(かいばら えきけん)が編纂した1708年成立の日本最初の本草学書「大和本草」にも掲載されるほど、日本人にとって古くから馴染みの深い植物です。このミヤコグサはマメ科植物の中で例外的に人為的な遺伝子導入が可能であることから、マメ科のモデル植物として、マメ科植物の特徴である根粒菌との共生を中心に広く世界で研究に利用されてきました。 実験に用いるミヤコグサの系統としては、岐阜県の長良川河畔で採取されたGifu B-129系統が永らく使われていましたが、2000年代に入ると、基礎生物学研究所の川口 正代司教授により沖縄県の宮古島で採取されたMiyakojima MG-20系統がGifu 系統よりも早咲きで、かつ、人工気象器でも開花させることができることから、分子遺伝学的な解析を行う実験系統として注目を集めていました。 かずさDAN研究所では、シロイヌナズナゲノム解析の国際共同プロジェクト(30ページ参照)終了後の植物ゲノム解析の対象として、日本に由来する国際的な研究材料であるミヤコグサのゲノム解析を研究所単独で行うこととし、利用の拡大が見込まれるMG-20系統を解析対象として、ゲノムライブラリーの作製や遺伝地図の作成などの準備を進めました。 ゲノム配列解析はシロイヌナズナのゲノム解析と同様に第一世代のシークエンサー(サンガー法)で行い、ゲノムクローンを用いて高精度で配列を決める方法と、全ゲノムショットガン法で低精度ではあるけれどもゲノム全体の情報を把握していく方法を併用して行いました。そして、2008年にはマメ科植物の中で最初となるゲノム情報解読の論文を発表し、DNA配列情報を当研究所のミヤコグサゲノムDB(データベース)から全世界に向けて公開しました。 また、ミヤコグサを使った共同研究の推進もプロジェクトの重点課題とし、その結果、根粒菌や菌根菌との共生に関わる数多くの遺伝子の同定に貢献することができました。並行して進められていた、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)ミヤコグサ・ダイズからのリソース提供と相まって、ミヤコグサは現在もマメ科植物研究の中心材料として、世界の研究者に利用され多くの研究成果を生み出しています。(佐藤 修正)ミヤコグサのゲノム解読

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