30周年記念デジタルブック
39/222

ミヤコグサ根粒菌ゲノムの遺伝子地図、ゲノムとは別に2 個のプラスミドを持つ32ミヤコグサ根粒菌の電子顕微鏡写真(鹿児島大学 内海 俊樹 教授 提供)ミヤコグサの根粒窒素固定能力を持つ共生細菌の全ゲノム解読に世界で初めて成功 根粒菌は、マメ科植物の根に共生して、根粒と呼ばれる器官の形成を誘導する細菌です。根粒菌は根粒の中で空気中の窒素(N2)を植物が利用できるアンモニア(NH3)に変換し、宿主植物に提供する能力をもっています。この共生窒素固定の能力を利用して、ゲンゲなどのマメ科植物を耕作地で栽培して緑肥とすることが古くから行われてきました。 シロイヌナズナに続く植物ゲノム解析の対象として、ミヤコグサ(36ページ参照)を選んだかずさDNA研究所では、ラン藻のゲノム解析(23ページ参照)で培った細菌ゲノムの解析技術を用いて、ミヤコグサに共生するミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium loti MAFF303099(解析当時の学名、現在はMesorhizobium japonicum MAFF303099)のゲノム解読に取り組みました。全ゲノムショットガン法と挿入サイズの異なるゲノムライブラリの両末端配列の解析を組み合わせたブリッジショットガン法を用いて、2000年に世界初となる根粒菌ゲノムの解読として報告しました。 ミヤコグサ根粒菌のゲノム解読に続いて、農業上の重要性を考慮して、ダイズの根粒菌Bradyrhizobium japonicum USDA110( 解析当時の学名、現在はBradyrhizobium diazoefficiens USDA110)のゲノム解読に取り組みました。ミヤコグサ根粒菌と同様にブリッジショットガン法を用いてゲノム解読を行い、2002年に論文発表しました。続いてこれら2種類のゲノム情報を基にして、酵母two-hybrid 法を用いた大規模なタンパク質相互作用解析や、大規模な挿入変異ライブラリーの構築など、遺伝子機能解析に向けたプロジェクトを進め、根粒菌側からの共生研究をサポートする研究基盤の構築で、研究コミュニティの活動を支えました。 根粒菌のゲノム情報と研究リソースが整備されたことにより、根粒菌による共生窒素固定のメカニズムの詳細が解明されつつあり、根粒菌を活用した持続可能な農業形態の確立への歩みが進んでいます。(佐藤 修正)根粒菌のゲノム解読

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る