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研究成果

ラッカセイのゲノム育種を目指した新しい技術の開発

〜高オレイン酸品種の早期開発に期待〜

2016年9月15日

 千葉県では、ラッカセイの消費拡大に向け、酸化されにくく、動脈硬化や高血圧、心疾患などの生活習慣病を予防・改善するとされるオレイン酸含量の高いラッカセイ品種の育成に取り組んでいます。

 公益財団法人かずさDNA研究所では、千葉県農林総合研究センターと共同で、こうしたラッカセイ品種の育成に取り組む中で、このたびラッカセイのゲノム育種*1,2を目指した新しい技術を開発し、導入しました。

 具体的には、ラッカセイ祖先種のゲノム配列データを元に、ラッカセイ栽培品種(ナカテユタカ、千葉半立など)の一塩基多型*3を大規模に同定するとともに、ゲノム全体のDNAマーカー*4を迅速かつ簡便に分析できる方法を開発し、高オレイン酸含量のラッカセイを効率よく分析できるようにしました。

 なお、研究成果は、米国の科学雑誌The Plant Genomeに掲載されるのに先立ち、オンライン(8月31日付)で公開されました。

 ※本研究は農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(26107C)の助成を受けたものです。

 参考:育種に使用しているラッカセイのさやの写真

 参考:それぞれの種子に含まれるオレイン酸とリノール酸の含量(g/100g)

*1 ゲノム育種: ゲノム*2情報に基づいて、作物や家畜の品種改良を行うこと。統計的手法により、ゲノム全体にわたるDNA マーカー*4の配列から、個体の表現型や遺伝的能力を予測して選抜する方法で、選抜の際に実際に栽培して形質の評価を行う必要がないことから、選抜の過程を大幅に短縮することができる。
*2 ゲノム:生物をその生物たらしめるのに必須な最小限の染色体のひとまとまり、またはDNA 全体のことをいう。染色体は遺伝情報の伝達を担う生体物質で、細胞の核の中にあり、DNA を含んでいる。
*3 一塩基多型:配列のさまざまな場所で一つの塩基が他の塩基に置き換わっていること。遺伝子領域に変異が入ることで、遺伝子の働き方が変わったり、機能が失われたりすることもある。DNA マーカー*4としても用いられる。
*4 DNAマーカー:生物個体の遺伝的性質、もしくは系統(個人、親子・親族関係、品種など)を特定するための目印となる個体特有のDNA配列。DNAマーカーもメンデルの遺伝法則に従って遺伝するため、単純な遺伝様式で伝わる形質に関わる遺伝子については、どのDNAマーカーの近くに存在するのかを利用して、遺伝子の染色体上の位置を明らかにすることができる。

論文情報:
Shirasawa K, Kuwata C, Watanabe M, Fukami M, Hirakawa H, and Isobe S.
Target amplicon sequencing for genotyping genome-wide single nucleotide polymorphisms identified by whole genome resequencing in peanut.
The Plant Genome (2016)