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研究成果

染色体のセントロメア構造の維持に重要なタンパク質を同定

〜セントロメア領域の維持には2つのタンパク質、KAT7とSuv39h1のせめぎ合いがある〜

2016年6月7日

 細胞が増殖して分裂するときには、複製したそれぞれの染色体DNAが2つの細胞に正しく分配されますが、この染色体分配にはセントロメアと呼ばれる領域が重要な働きをします。セントロメアの機能に欠陥が生じると正しい染色体数(ヒトでは46本)を保てなくなり、細胞死や癌など様々な悪影響が生じます。通常DNAが染色体上で折りたたまれるときには、ヒストンH3を含んだヒストン複合体に結合します。ところが、セントロメアは特別な場所で、ヒストンH3の代わりにCENP-Aを含んだヒストン複合体が結合してセントロメアの構造および機能の目印になっています。

 セントロメアの外側には、ヘテロクロマチンと呼ばれる機能的に不活性化された領域も集合します。ヘテロクロマチンはヒストンメチル化酵素(Suv39h1)によりメチル化されたヒストンH3を含むことが目印になっています。セントロメアとヘテロクロマチンはどちらも同じ反復DNA配列からなる100万塩基対を超える巨大領域に集合するため、Suv39h1によるメチル化が強く働きすぎると、セントロメア機能も不活性化されてしまいます。セントロメア機能を維持するために、セントロメアとヘテロクロマチンの境界では、セントロメアを守るためのせめぎ合いが行われています。

 ヘテロクロマチンの侵略からセントロメアを守るためにはヒストンH3をアセチル化する酵素が必要です。今回の研究発表では、KAT7というヒストンアセチル化酵素がメチル化されたヒストンH3をアセチル化し染色体上から追い出すことにより、空いた場所へCENP-Aを補充してセントロメア機能を維持していることを明らかにしました。
 
研究成果は、6月6日付けのDevelopmental Cell誌で公開されました。この研究は、NIH(米国国立衛生研究所)、英国エジンバラ大との共同研究です。

論文情報:
Jun-ichirou Ohzeki, Nobuaki Shono, Koichiro Otake, Nuno M. C. Martins, Kazuto Kugou, Hiroshi Kimura, Takahiro Nagase, Vladimir Larionov, William C. Earnshaw and Hiroshi Masumoto1.
KAT7/HBO1/MYST2 regulates CENP-A chromatin assembly by antagonizing Suv39h1-mediated centromere inactivation. 
Developmental Cell. (2016) Jun 6;37(5):413-427.
doi: 10.1016/j.devcel.2016.05.006
論文のURL: http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.05.006