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バイオ燃料に関する用語解説 -1-

Q&A

バイオ燃料に関するより詳しい解説です。

Q 1.   燃料について
 Q 1. a. そもそも燃料とは何でしょう?
 Q 1. b. 現在使われている化石燃料とその問題点
Q 2. バイオ燃料って何ですか?
 Q 2.a.バイオ燃料は何から作られるのでしょう?
 Q 2.b.なぜエタノールを作るのですか?
 Q 2.c.エタノールを混ぜることの問題点は?
 Q 2.d.ガソリンとディーゼルの違いは?
Q 3. 石油などとバイオ燃料と何が違うのですか?
 Q 3.a.バイオ燃料の優れている点とは?
 Q 3.b.カーボンニュートラルとは何のことですか?
 Q 3.c.その考え方はバイオ燃料とどう関係するでしょう?
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Q 7 - Q 11 へ

Q 1. 燃料について

Q 1.a. そもそも燃料とは何でしょう?
A. 一般に、化学反応を起こすことによって熱や光などのエネルギーを発生させる(つまり、燃える性質をもつ)ものを燃料といいます。
 通常の燃料は次の3つに大きく分けることができます。
 ・植物燃料 = 植物から得られるもの (木炭などに加工したものを含む)
 ・動物性燃料 = 動物から得られるもの (動物性脂肪など)
 ・化石燃料 = 過去の生物に由来するもの (石炭・石油など)
  (これ以外に、原子力発電などに用いられる燃料もありますが、ここでは省きます。)
 燃料は炭素を含む有機物です。有機物の多くは動植物によって分解されたり、再利用されたりして生物体や排泄物などとして蓄えられます。 これらの有機物はその中に蓄えられた化学的なエネルギーを放出してより安定した状態に戻ろうとします。 これが「燃えやすい」という性質なのです。
古来人類は、燃料を熱源や光源として直接利用してきましたが、 蒸気機関が開発されてからは各種の動力源として用いられるようになり、さらに電気エネルギーに変換することにより燃料の用途が拡大されています。

Q 1.b.現在使われている化石燃料とその問題点
A. 
<石油>
 人類が採掘可能な石油埋蔵量を究極可採埋蔵量といいます。現在1.3兆バレル (1バレル=約159リットル) あると考えられています。 この量は今のペースで石油を使用していくとすると、50年分に相当します。
ただし、石油の需要は今後も拡大すると考えられること、 また、現在までに発見されていない石油資源が存在する可能性があることから、この数値はあくまでも現在の推計値でしかありません。
原油からは、ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油・アスファルト・ガスなどが精製加工で作られます。
同一原材料から同一行程で作られる異なった製品のことを連産品といい、次のようなものがあります。
連産品一覧
  オフガス (メタン・エタン)  → 工場等の燃料など
  LPG (プロパン・ブタン)  → 家庭用燃料、石油化学原料など
  ナフサ → ガソリン原料、石油化学原料など
  灯油 → 家庭用燃料、ジェット燃料など
  軽油 → ディーゼルエンジン用燃料など
  重油 → ボイラー、船舶用燃料など
  アスファルト → 道路舗装や防水剤など
<石炭>
 石炭は古くから燃料として使われており、特に産業革命以後20世紀初頭までは最も重要な燃料でした。 石炭は石油に比べて燃焼カロリーが1/2で、燃焼した際の二酸化炭素排出量が多いなど、石油に比べて使いにくいところがあります。
しかし、天然ガスや石油はあと数十年の埋蔵量しかないのに対し、石炭は150年以上の埋蔵量があるといわれており、 また、石油と違い政情の安定している国の埋蔵量が多く、価格も安定しています。 そのため、産業用燃料や発電用燃料として石炭を使用している国も多く、 米国やドイツや中国などでは石炭は現在も重要なエネルギー源です。
<天然ガス>
 天然に産する化石燃料である炭化水素ガスのことを指します。
天然ガスにはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭素化合物と窒素が含まれていて、 産出する場所によってその組成が異なります。燃焼したときの二酸化炭素排出量は石油より少ないですが、 主成分であるメタンの温室効果は二酸化炭素の21倍あります。

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Q 2.バイオ燃料って何ですか?
A. バイオ燃料とは、生物由来の物質を利用して作られる燃料のことです。 近年の原油高により、バイオエタノール、バイオエタノール混合ガソリン、バイオガソリン、バイオディーゼルなどと呼ばれる 代替燃料に注目が集まっています。バイオ燃料はそのままエンジンで燃やしたり、ガソリンや軽油と混ぜたりして利用されています。
 米国では、ガソリンにエタノールを10%ほど混ぜた「E10」と85%混ぜた「E85」が主に流通しています。 E10は一般に販売されている自動車で利用可能ですが、より高い濃度のエタノールを混合したE85などを利用するには、 キャブレター (=空気とガソリンを混合した混合気をシリンダー内に供給する装置) や気化装置 (=液体燃料をガスに気化させる装置) などの改良が必要になります。自動車メーカーは、エタノールとガソリンを任意の比率で混合して利用できるフレックス燃料車 (FFV) を開発しており、ブラジルでは新車販売台数の85%ほどをFFV車が占めています。

* ヨーロッパでは軽油にバイオディーゼルを5%混合した「B5」や30%混合した「B30」が流通しています。ディーゼルエンジンは、もともと19世紀末に落花生油を燃料とするために発明された機関なので、バイオディーゼルを使うためにエンジンを改良する必要はありません。

フレックスカー *バイオエタノール100%でも走る車
(写真提供:本田技研工業株式会社)

Q 2.a.バイオ燃料は何から作られるのでしょう?
A. バイオエタノールの主な原料は、米国ではトウモロコシのデンプン、ブラジルではサトウキビのショ糖と、食料として用いられている糖類を原料としています (第一世代バイオエタノール) 。したがって食料との競合が避けられません。 そこで、草や木材のセルロースなど食料としない部分から生産する研究開発が行われています (第二世代バイオエタノール) 。
 バイオエタノールの生産方法は、原料によって異なります。米国ではトウモロコシのデンプンを酵素によって糖に分解し、エタノール発酵と濃縮を行っています。 生産工程の熱源には主に天然ガスや石炭を使用し、生産過程で出てくる副産物は飼料として利用しています。 ブラジルではサトウキビの茎に含まれるショ糖を原料としていますので、デンプンのように糖に分解するためのステップを省略できます。 また、バガス (サトウキビの搾りかす) をサトウキビ処理工場の熱源に用いることでエタノール生産に必要な投入エネルギー量を抑えることができます。
一方、バイオディーゼルの主な原料はナタネ油やダイズ油、パーム油、廃食用油 (いわゆる天ぷら油) などです。

Q 2.b.なぜエタノールを作るのですか?
A. エタノールは、水や炭化水素を含む各種の有機溶媒などと自由に混合できます。 ガソリン(これも有機溶媒)とも混合しやすく、ある程度の混合比までであれば既存のガソリンエンジンを改造することなく利用できます。 また、エタノールは酒類に含まれており、太古の昔から米や大麦などのバイオマスから微生物を用いて作られてきました。 そのため、研究基盤も整っています。
 ブラジルでは、1973年の石油ショックによる原油価格の高騰に対処するために、 1975年から自国のサトウキビから生産できるエタノールをガソリン代替にする政策を実施してきました。 また、地球温暖化の対策の一環として、温室効果ガスの1つである二酸化炭素の排出削減に対する関心が高まっていることもその背景にあります。

Q 2.c.エタノールを混ぜることの問題点は?
A. エタノール混合ガソリンは、同じ量のガソリンと比較して熱量が約34%小さいこと、 燃料を供給する装置にあるゴム製、プラスチック製の部品や内燃機関に使用されているアルミニウム製の部品を腐食する可能性があることが問題点として指摘されています。 エタノールなどのアルコールは水との親和性が非常に高いので、燃料タンクの中と外の温度差によって発生した結露水が燃料に混ざり、 水分を高温高圧な燃焼室へ送り込むことで、腐食を急激に早める可能性があるとされています。 また、現行のエンジンでのガソリン燃焼と比較して人体に有害とされる窒素酸化物 (NOx) が多く排出されることも指摘されています。

Q 2.d.ガソリンとディーゼルの違いは?
A. ガソリンエンジンでは自然発火しにくいガソリンを使い、スパークプラグによる電気発火で混合気を燃焼させます。
一方、ディーゼルエンジンは着火点の低い軽油を高圧状態にして、自然発火によって燃焼させています。
<ガソリンエンジン>
 ガソリンエンジンは、燃料 (ガソリン) と空気の混合気を燃焼室内に注入し、ピストンで圧縮した状態でスパークプラグから火花を出して混合気に点火します。 するとスパークプラグ周辺から燃え広がり、膨張しながらピストンを押し下げることになります。このピストンの往復運動を動力へと変換させるのです。
*ディーゼルエンジンとの比較
利点排気量あたりの出力が大きい。高速で回転させることができる。振動や騒音が少ない。
欠点一つの発火で短時間に燃焼させなければいけないため、排気量の大きさに限界がある。
<ディーゼルエンジン>
 ディーゼルエンジンは空気のみを吸入し、ピストンで圧縮します。そのときの圧縮比はガソリンエンジンの2倍以上で、温度は数百度に達します。そのあと、圧縮した空気が入った燃焼室に軽油を噴射します。すると軽油は一気に燃焼室のさまざまな場所で自然発火し、膨張しながらピストンを押し下げます。
*ガソリンエンジンとの比較
利点燃焼室の大きさに左右されることなく排気量を大きくできるので、大型トラックに適している。
同じエネルギーを得るための二酸化炭素の排出量が少ない。実用的な内燃機関の中では最も熱効率に優れている。
欠点燃焼が均一に起こらないため黒煙が生じやすい。燃焼室内の窒素量が多いため、NOxが排出される。
軽油には硫黄が残留しているため、SOxが排出される(脱硫作業が必要)

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Q 3.石油などとバイオ燃料と何が違うのですか?

Q 3.a.バイオ燃料の優れている点とは?
A. 燃料としてバイオ燃料の方が優れているということはありません。 あくまでも、できるだけ現在の産業活動のレベルを維持し、同時に、これ以上大気中の二酸化炭素の量を増やさないようにするには どうすればよいかという観点からと、石油資源の枯渇にどう対処すればいいのかという観点から考えられた代替策なのです。

Q 3.b.カーボンニュートラルとは何のことですか?
A. カーボンは炭素、ニュートラルとは中立という意味です。 つまり、カーボンニュートラルとは、何かを生産し、一連の人為的な活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、という概念です。

 少し専門的になりますが、例えば、植物の茎・葉・根などは全て有機化合物 (炭素原子を構造の基本骨格に持つ化合物) でできています。植物は成長するときに、光合成により大気中の二酸化炭素を取り込んで有機化合物を作り、植物のからだを作ります。
6 CO2 + 6 H2O → C6H12O6 + 6 O2
その植物を燃やして空気中に排出される二酸化炭素の中の炭素原子は、もともと空気中に存在した炭素原子です。
C6H12O6 + 6 O2 → 6 CO2 + 6 H2O

したがって、その植物の生育する前の大気中の二酸化炭素の総量と、生育した植物を燃やした後の二酸化炭素総量は変わらないことになります。
この考え方を、「カーボンニュートラル」と言うのです。

Q 3.c.その考え方はバイオ燃料とどう関係するでしょう?
A. 糖からエタノールを作り、それを燃焼させた場合、化学式では次のように表されます。
C6H12O6 → 2 C2H6O + 2 CO2
2 C2H6O + 6 O2 → 6 H2O + 4 CO2
反応で生じたエタノールを燃やしても、元の植物体を燃やした場合と同様に、式の右側に表される二酸化炭素 (CO2) の総量は変わりません。

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