P-1     枯草菌HTH因子の標的遺伝子とcis配列の同定を目指す体系的方法論

 

吉田健一、山口弘毅、藤田泰太郎

福山大学・生命工学部・生物工学科

 

我々は枯草菌ゲノムに見い出された約200種のHTH因子それぞれの標的遺伝子  (レギュロン構成)ならびにcis配列の同定を目指している。これまでにCcpA  (カタボライト抑制制御), IolR(イノシトール分解系制御), TnrA(窒素代謝制  御)等に関し研究成果を挙げてきたが、特にTnrAの研究では標的遺伝子の一次スクリーニングにDNA microarray解析を導入し体系的方法論をほぼ確立した。現在、機能未知HTH因子の解析に対応すべく、解析例がほとんど無い MarR, TetR familyのHTH因子を対象に方法論の拡張を進めている。

 

 

 

 

 

 

 

P-2     マイクロアレイとインシチュハイブリダイゼーション法に基づいた遺伝子発現パターンの解析結果とその応用             

 

1)      前田ミネ子、1) 坂本晴代,1) 丸尾俊也、2) 森尾貴広、2) 漆原秀子、2) 田仲可昌、3) N. Iranfar, 3)D. Fuller, 3) W. F. Loomis

1)      大阪大学 院理 生物科学、2) 筑波大学 生物科学系、3) カリフォルニア大学サンディエゴ校

 

細胞性粘菌における約6000 ESTsを用いて、マイクロアレイとインシチュハイブリダイゼーション法により細胞型特異的に発現する遺伝子を同定した。細胞性粘菌では2つの細胞型(予定胞子細胞と予定柄細胞)の分化が知られている。予定胞子細胞には113遺伝子が特異的に発現し、予定柄細胞には104遺伝子が特異的に発現することを明らかにした。また、空間的発現パターンの解析結果から、これらの遺伝子は発生過程を通じてダイナミックな発現調節  を受けていることを明らかにした。さらに、この成果を細胞型の分化や発生が異常になることが予測されている突然変異株の解析に適用して極めて興  味深い結果を得ることができたので報告する。

 

 

P-3     ラン藻Anabaena sp. PCC7120の遠赤色光受容体AphC

 

岡本 忍  中平 有香  大森 正之

東京大学大学院総合文化研究科

 

ラン藻は様々な外界の刺激に応じて細胞内cAMPレベルを変化させる。Anabaena sp. PCC 7120でアデニル酸シクラーゼCyaCの信号伝達系の上流に位置すると考えられる光受容体AphC (Alr2669)を見いだした。AphC920アミノ酸からなるタンパク質をコードする、新規の遠赤色光センサーである。また、Microarrayを用いてAphCの制御下の遺伝子群も探索した。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-4     大腸菌RNAポリメラーゼsigma Sサブユニットの発現制御におけるHis-Aspリン酸リレー情報伝達系の役割

 

饗場浩文1、大島拓2、山本兼由3、内海龍太郎3、森浩禎2、水野猛1

1名大院・生命農学、2奈良先端大・遺伝子教育研究センター、3近畿大・農

 

大腸菌のストレス応答に関わるシグマSRNAポリメラーゼサブユニット)の発現が複数のHis-Aspリン酸リレー情報伝達系(TCS)の欠失株において上昇することがマイクロアレイ解析から示唆された。シグマSの発現は転写、翻訳、安定性の3つの段階で複雑に制御されている。本研究では、シグマSの発現に影響するTCSとそれらの作用点を同定し、シグマSの発現制御に関して考察する。


P-5     ミヤコグサ根粒菌ゲノム整列化コスミドライブラリーの利用による新規共生遺伝子の探索

 

佐伯和彦*、服部嘉行*、大森博文*、三島絵里奈*、羽生真樹*、丸屋淳平*、金子貴一**、  田畑哲之**

*大阪大学・大学院理学研究科、**かずさDNA研究所

 

ミヤコグサとその根粒菌は、マメ科植物と根粒菌の共生のモデル系として注目を集めている。ミヤコグサ根粒菌の全ゲノム塩基配列は決定済みだが、各種の遺伝学的研究基盤の整備は遅れている。 ゲノム配列情報を効果的に利用するために、この根粒菌に接合導入可能なベクターを用いた整列化コスミドライブラリーとその派生物によるゲノム破壊系を構築した。破壊株ならびに異種相補実験による新規共生遺伝子の探索の現状を報告する。

 

 

 

 

 

P-6     全ゲノム解析から見た極限環境に生きるBacillus関連種の多様性と保存性

 

高見英人*、高木善弘*、内山郁夫**   

*海洋科学技術センターゲノム解析研究グループ  **岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所             

 

陸上から深海底に至る様々な環境に棲息するBacillus関連種の生育範囲は、pH212578C030% NaCl、大気圧〜少なくとも30気圧と広い。系統分類学上類縁性の高いこれらBacillus関連種の環境適応ストラテジーの解明は、生命進化の謎を解く手掛かりになると思われる。そこで、 Bacillus関連種の環境適応機構の解明を目指し、好アルカリ性、耐塩性、好熱性Bacillus関連種の全ゲノム配列決定を試みた。現在、好アルカリ性菌の遺伝子発現パターンを解析中である。


P-7     ウェルシュ菌のVirR/VirSシステムによるグローバル発現調節解析

 

清水 徹、大谷 郁、林 英生

筑波大学・基礎医学系、宮崎医科大学・微生物

 

ガス壊疽の起因菌、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)の全遺伝子をスポットしたmicroarray を用いて、病原性調節に重要である二成分制御系VirR/VirSシステムによるグローバルな調節系を解析した。VirRVirSシステムが発現に影響を与える遺伝子が約500存在し、染色体の約1/5の遺伝子が正または負にVirR/VirSシステムの影響を受けていることが判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-8          Orientia tsutsugamushi のゲノム解析

 

中山恵介1、大西真1、黒川顕2、山下敦士3、大島健志朗3、服部正平3、福原正博4、浦上 弘4、多  村 憲4、林哲也1

宮崎医大・微生物1、阪大・遺伝情報2、北里大・ゲノム情報3、新潟薬大・微生物4

恙虫病の起因菌であるOrientia tsutsugamushiはツツガムシをリザーバー・ベクターとす  る偏性寄生性のグラム陰性細菌である。当グループでは本菌の全ゲノム解析を進めており、現在、コンティグ15本分(>2 kb、最長:300 kb・総長:2.01 Mb)のアセンブリ配列を得ている。本発表では進捗状況を中心に、反復配列を多く含む本菌の特徴的なゲノム構造などについて報告する。


P-9     ダイズ根粒菌Bradyrhizobium japonicumのゲノム構造解析

 

金子貴一、中村保一、佐藤修正、田畑哲之

かずさDNA研究所

 

Bradyrhizobium japonicum USDA110はダイズの根に根粒形成を誘導し、共生窒素固定する能力をもつ。その遺伝子制御システムの全容を解明するために、全ゲノム塩基配列解析をおこなった。配列  解析にはホールゲノムショットガン法を適用し、200211月に完了した。ゲノムは9,105,828 bpの環状の染色体で構成されていた。染色体上には共生アイランドが存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-10   好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatus BP-1ゲノム構造解析

 

金子貴一、中村保一、佐藤修正、田畑哲之

かずさDNA研究所

 

Thermosynechococcus elongatusは約55℃が最適増殖温度で、タンパク質の安定性からその光化学系  の結晶化が成功し、立体構造解析に用いられた株である。本菌の遺伝子制御系の全容を解明するために、ゲノム塩基配列解析をおこなった。配列解析にはWGS法を適用し、20025月に完了した。ゲノムは2,593,857 bpの環状染色体で構成され、多コピーのイントロンがみつかった。


P-11   酵母two-hybrid大規模解析系を用いたラン藻遺伝子産物の相互作用推定

 

佐藤 修正、中村保一、田畑 哲之

かずさDNA研究所

 

ゲノムレベルで解析された遺伝子情報を基に生命現象を理解していくうえで、遺伝子産物間相互作用を明らかにすることは重要な課題となっている。我々はラン藻Synechocystis遺伝子産物の機能解析の一環として大規模な相互作用解析を計画し、酵母two-hybrid法を基にして大規模解析可能な系を確立した。この系を用いて行ったシロイヌナズナゲノムにオルソログが保存されている605 Synechocystis遺伝子についての解析結果を紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

P-12   DNAチップを用いた病原性大腸菌O157ゲノムの比較解析

 

小椋 義俊1、大西 真 1、戸邉 亨2、黒川 顕3,中山 啓介1、林 哲也1       宮崎医大・微生物1、阪大院・医・感染因子防衛 2,阪大・遺伝情報3

 

病原性大腸菌O157は株間で高度なゲノムの多様化が進んでおり、我々はWhole genome PCR scanning (WGPS)法でその多様性の多くがプロファージおよびファージ様配列に存在することを明らかにしてきた。今回はその多様性を遺伝子レベルで大規模に解析するためDNAチップを作成し、その有効性を評価した。その結果、大腸菌K-12では、95%以上の精度で遺伝子の有無を判別できた。また、O157でもWGPS法の結果とおよそ一致し、この手法が十分に有効であることが確認できた。


P-13          Development and Implementation of the G-language Genome Analysis Environment Version 2

 

荒川和晴(1,2)、森航哉(1,2)、松崎建君(1,3)、服部亮(1,4)、山田洋平(1,4)、冨田勝(1,4)

1.慶應義塾大学先端生命科学研究所  2. 同・政策・メディア研究科

バイオインフォマティックスプログラム  3. 同・総合政策  4. 同・環境情報

 

G-language Genome Analysis Environmentはバイオインフォマティックスにおける汎用解析環境を目指したソフトウェアである。現在本ソフトウェアはVersion.2に向けて開発が進められており、汎用性及び計算効率が高められている。本ソフトウェアはhttp://www.g-language.org/ にてGPLライセンスのもとフリーに公開されている。

 

 

 

 

 

 

 

P-14   シアノバクテリアと植物の全ゲノム比較解析

 

佐藤直樹

埼玉大学理学部分子生物学科

 

シアノバクテリアの起源と相互の類縁関係,およびシアノバクテリアから葉緑体への進化,藻類・植物のもつ遺伝子の起源に関する解析をするため,シアノバクテリア,光合成細菌,植物,および非光  合成生物(真核・原核)から15種を選んで,全推定タンパク質配列約10万個の総当たりBLASTP検索を行った。結果を以下の基準に基づいてクラスター化した。(1E-valueによるcut-off (2)相同領域が両被比較配列に占める割合(3)複数ドメインの存在(4)部分配列または断片。このクラスターの数に基づいて,各生物がもつ遺伝子セットの相互関係を示す系統樹を作成したところ,従来の遺伝子配列に基づくものときわめて類似したものができた。また,シアノバクテリア8種と植物,またはシアノバクテリア8種+光合成細菌3種と植物に共通するクラスタを,E-valueを変えながら検索することにより,光合成に関連すると考えられる植物がもつ未同定の推定葉緑体ター ゲットタンパク質を多数ピックアップすることができた。今後,これらの機能を実際に確認することにより,新規光合成遺伝子を網羅的に同定できる可能性がある。


P-15   自己組織化地図法(SOM)を用いた配列既知の全ゲノムを対象にしたゲノム個性の解析

 

阿部貴志1,2、金谷重彦3、木ノ内誠4、上月登喜男2、大山彰2、池村淑道1

1国立遺伝研, 2()ザナジェン, 3奈良先端大, 4山形大学

 

大量で複雑なデータに潜む特徴を検出し、大量情報を容易に2次元的に可視化できるSOMをゲノム解析に適用した。原核生物81種および真核生物9種を対象とし、各ゲノム配列を10kb及び100kbごとに断片化したゲノム配列の2連・3連・4連続塩基頻度に基づく自己組織化地図を作成した。各生物種の特徴を反映した高解像度の分類が行われ、ゲノム配列に潜む種固有なサイン(genome signature)が見出された。

 

 

 

 

 

 

 

P-16   セパシア菌群ATCC17616株のゲノム解析

 

永田 裕二1, 小松 春伸1, 松田宗昭1,源河浩之1,井村 喜之1, 澤田 宏之2,津田 雅孝1

1東北大・院生命科学,2独立行政法人農業環境技術研究所

 

ゲノムが3.4, 2.5, 0.9 Mb3種の環状染色体から構成され,多彩な環境適応能力を有するセパシア菌ATCC17616株のゲノム構造とその構成原理の解明を目的としている。現在までに,3種の染色体の物理地図を作製し,dnaA等が存在する3.4 Mb染色体のみならず,2.5 Mb染色体上にも機能的なアミノ酸合成遺伝子群や基本的生命活動に必須な遺伝子が重複なく散在するなどの特徴を見出した。さらに,染色体の分配に関与するparAなどの解析を進めている。


P-17          Development of Comparative Genome Analysis System (COMGA) on the G-language Genome   Analysis Environment

 

中村征良(1,4) 松崎健君(1,3) 荒川和晴(1,2) 森航哉(1,2) 中山洋一(1) 冨田勝(1,4)

.慶應義塾大学先端生命科学研究所 2. 同・政策・メディア研究科 バイオインフォマティクスプ  ログラム 3. 同・総合政策 4. 同・環境情報                

 

G-language Genome Analysis Environment(G-language GAE) は、慶応義塾大学先端生命科学研究  所において開発されているゲノム解析用システムであり、容易にゲノム情報処理を行うことの出来る環境を提供するものである(http://www.g-language.org/) このシステムに実装する比較ゲノム解析システム(Comparative Genome Analysis System:COMGA) の開発の概要及び展望を報告する。

 

 

 

 

 

 

P-18   共生細菌から宿主昆虫へのゲノム水平転移

 

深津 武馬

産業技術総合研究所生物機能工学研究部門

 

我々は、豆類の害虫として知られるアズキゾウムシのX染色体の中に、細菌の大きなゲノム断片が入りこんでいることを明らかにした。この微生物はボルバキアと呼ばれる共生細菌で、昆虫の細胞の中に生息する性質をもっている。本発見によって、微生物から多細胞生物への遺伝子の水平転移が自然界で実際に起こったという明確な証拠が、世界で初めて示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-19   ゲノム解析から見た微生物研究の動向

 

服部正平

北里大学・北里生命科学研究所・ゲノム情報             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-20   ラン藻 Anabaena sp. PCC 7120 の乾燥ストレスに関わる遺伝子の探索

 

加藤 浩1)Ravi Kumar Asthana2)、大森 正之1)

1)      東京大学大学院 総合文化研究科、2)Banaras Hindu University

 

我々は DNA segment array を用いて乾燥ストレスで発現の変動する遺伝子をラン藻 Anabaena sp.  PCC 7120 で探索した。これまでに乾燥初期でトレハロースの合成、カリウムの取り込みに関わる遺伝子群、乾燥後期で熱ショックタンパク質の遺伝子の発現が誘導され、RNAポリメラーゼサブユニット、集光タンパク質に関わる遺伝子群の発現が抑制されることを見いだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-21   A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)ゲノムのリアレンジメントによるファージ遺伝子の再構成

 

中川一路,黒川顕,中田匡宣,川端重忠,浜田茂幸

阪大院・歯・口腔細菌、阪大微研遺伝情報

 

A群レンサ球菌(S. pyogenes)は咽頭炎,膿痂疹,猩紅熱や,まれに非常に急激で高い致死率を示す劇症型の感染症(TSLS)を引き起こす.TSLS由来SSI-1株と他株とのゲノム構造の比較を行ったところ,SSI-1株では分裂軸に対象に存在するrrn-comX領域とファージ部位でリアレンジメントが認められた.ファージ領域内でのゲノムのアレンジメントは病原性遺伝子を含む領域で認められ,ゲノムのリアレンジメントによるファージ遺伝子の再構成が示唆された.

 

 

 

 

 

 

P-22   腸管病原性大腸菌EPECの細胞付着に伴う遺伝子発現調節

 

1戸邉亨、1安倍裕順、2大島 拓、2森浩禎、1杉本央

1大阪大学・医・感染因子、2奈良先端大学院大学

 

EPECの上皮細胞への付着形態は段階的に変化するが、この過程で、病原因子の発現量が細胞付着後も変化することが確認されている。上皮細胞に付着後のEPECにおける病原性遺伝子群の転写量の経時的変化をDNA microarray を用いて解析した。その結果、病原因子の発現は細胞と付着後転写段階において調節されていること、さらに細胞との密着刺激による調節を受けていることが示唆された。

 

 

 

 

 

 

 

P-23          Genomic Object Net による分裂酵母 細胞周期のモデル化とシミュレーション

 

藤田 祥恵(1  松井 美香(1  松野 浩嗣(1  宮野 悟(2

(1)山口大学 理学部  (2)東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-24   大腸菌の網羅的タンパク質間相互作用の解析

 

和田千惠子1, 2Arifuzzaman Md 3, 4 前田真希1, 2、大島拓4、伊藤綾5、金谷重彦6、北川正成  4、山本奈津子1, 3、荒武5、森浩禎2, 3, 4, 5

1京都大・ウイルス研、2科技団・CREST3新エネルギー産業技術総合開発機構・NEDO4奈良先端  大・遺伝子教育研究センター、5慶応大・先端生命研、6奈良先端大・情報      

大腸菌はゲノム生物学のモデル生物として優れた特性を持つ。大腸菌の全体像を分子レベルで理解するうえで、総タンパク質(ORF4300個)のタンパク質間相互作用の網羅的解析によるネットワークの構築は重要なステップである。我々は試みとして、我々のグループによって作成されたHis-tag を付加した大腸菌の全ORFクローンを用いて、各クローンについてPull Down Assay を行い、共精製されてくるタンパク質をMALDI-TOF MSを用いて分析、同定した。約2000個のORFのタンパク質間相互作用の概要を紹介する。

 

 

 

 

 

P-25          Nocardia farcinicaのゲノム解析

 

石川 淳1、山下 敦士2、三上 襄3、星野泰隆3、大島健志朗4、古谷恵子2、吉野智絵2、山下恭江2  中澤麻子2、柴 忠義2、服部正平2

1国立感染研、2北里大学、3千葉大学、4日立計測器サービス

 

ノカルジア症の原因菌であるN. farcinicaのゲノム塩基配列の決定を全ゲノムショットガン法により行った。最新のアセンブリーは、約600個のコンティグからなり、ゲノムサイズは6.0MbGC含量は 70.5%と推定された。ORF解析の結果、最も近縁な結核菌との類似性が多く見受けられ、病原因子、薬剤耐性因子、生物活性物質の生合成遺伝子と考えられるORFが見出された。

 

 

 

 

 

 

 

P-26   雑種由来の酵母種Saccharomyces pastorianusの祖先系統解析

 

Sandra Rainieri、原島 俊、金子嘉信

大阪大学大学院工学研究科応用生物工学専攻

 

酵母Saccharomyces cerevisiaeとその近縁種グループはゲノム構成の解析が進んでおり、このグループの共通祖先種がそのゲノムを重複させ、その後に再編成を起こすことにより、現在のゲノムに至っているというゲノム倍加仮説が提案されている。雑種形成から誕生した種とされているS. pastorianusの一方の祖先種と考えられる系統を遺伝子の多様性解析より新たに見出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-27   共生・微好気・炭素飢餓条件におけるミヤコグサ根粒菌の網羅的遺伝子発現解析         

南澤 究2、大和田琢二1、三井久幸2、板倉 2、貫井憲之2、田畑哲之3、金子貴一3、横山 4  手島光平4、佐伯和彦5、大森博文5、室岡義勝6、林 6、前川隆紀6、田島茂行7、野村美加7、下村  憲司朗7、阿部美紀子8、内海俊樹8、鈴木章弘8、下田宜司8、塩屋幸

1 帯畜大・生物資源、2 東北大院・生命科学、3 かずさDNA研、4東京農工大・農、5 阪大院・理、6   阪大院・工、7 香川大・農、8 鹿児島大・

 

雷、生窒素固定細菌であるミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium loti MAFF303099株の全ゲノム塩基  配列情報(7.6 Mb)に基づいて、マクロアレイによる網羅的発現解析を行った。共生バクテロイドでは、単生の根粒菌と比較して染色体上の共生領域(611 kb)および微好気条件で発現するfixNOPQなどの遺伝子発現が上昇した。炭素飢餓では脂質分解系が上昇し、翻訳や糖代謝系の低下が目立った。共生で高発現する遺伝子の破壊株の一部は、共生能の低下を示した。

 

 

 

P-28   構造認識法の現状と可能性         

 

富井  健太郎

産業技術総合研究所   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-29          Genes involved in iron and inorganic carbon  transport  in Synechocystis sp. PCC 6803  

 

加藤大和(1)、柴田真理(1)、福沢秀哉(2)、Aaron Kaplan (3), 小川晃男(1

(1)名大 生物分子応答研究センター、(2)京大 生命科学研究科、 (3Hebrew Univ. of Jerusalem

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-30   ゲノム配列の解読結果およびアノテーションの閲覧ソフトウェアの開発

 

北川正成(1), 赤坂 賢洋(2)

(1)タカラバイオ株式会社ドラゴンジェノミクスセンター, (2)三菱スペースソフトウェア株式会社関西事業部バイオインフォマティクス部

 

様々な生物のゲノムについて、その全塩基配列決定が広く行なわれるようになって久しいが、解析結果をわかりやすく閲覧することは、ゲノム解析の結果を生物理解に結びつけるためになくてはならない手段である。  我々は、CAP4によるConstrainedなアセンブルを行なっているが、今回、配列決定の結果、すなわち解読データのアセンブル結果やアノテーション結果を統合的に閲覧できるビューワを開発したので、実際の解析結  果の例を示して紹介する。 このビューワの主な特徴は、 (1)ゲノム全体のアノテーションの概略の表示  (2)任意の位置の遺伝子の並びの表示  (3)任意の位置のORFのフレームごとの表示  (4)各遺伝子のCOGsによるアノテーション (5)各遺伝子のアセンブル結果とのリンク  (6)アセンブル結果の信頼度の表示と解読データのアライメント表示などである。

 

 

 

P-31          FAMSBASE-99sp99生物種ゲノム規模タンパク質立体構造モデルデータベース

 

岩舘満雄、梅山秀明

北里大学薬学部生物分子設計学教室

 

遺伝学研究所のGTOP公開の128生物種中99生物種についてそのRPS-BLAST出力を元にFAMSでモデルを構築したデータベース。モデル数の合計は540701個となった。立体構造モデルのデータベースとしては世界最大級に相当。モデル構築のための計算には、味の素ライフサイエンス研究所内本研究室分室の1000台のPCクラ  スターを用いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-32   プロテオミクスで遺伝子を発掘する。微生物ゲノムへの応用

 

谷口寿章、松崎英樹、村田康信

徳島大酵素センター/理研播磨研

 

いわゆるプロテオミクス技術は、質量分析で得られるペプチドの構造情報と、タンパク質データベース上のアミノ酸配列を比較し、タンパク質を同定する。本演題では、ペプチドの構造情報をゲノム配列に直接マップすることで、得られた結果を紹介する。推定ORFよりもさらにN末端、C末端側に長いケースや未知のORFが見出され、ゲノム配列とアノテーションの精度を高めるためにこの手法が有効であることが明らかとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-33   細菌プロモータ領域の種間配列比較による網羅的なレギュロン予測

 

蒔田由布子12、中井謙太2

1東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター、2東京農工大学生命工学

 

微生物における共発現遺伝子を予測するために、同属生物種など、比較的近縁なゲノム配列に着目した。具体的には、近縁種間のオルソログ遺伝子のプロモータ領域を比較することにより、保存されている候補シスエレメント配列の抽出を行う。またそれらを配列類似性によりクラスタリングし、レギュロンの予測を行った。現在までに7目に渡る生物種において解析を進めている。今回それらの解析結果を報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-34   微生物ゲノムシークエンシングプロジェクト

 

山下 敦士1、大島 健志朗2、藤 英博1、古谷 恵子2、吉野 智絵2、中澤 麻子2、山下 恭江2、柴 忠義2、服部 正平1

1北里大・北里生命研、2北里大・理

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-35   出芽酵母の遺伝子発現プロファイルデータを用いた代謝系における制御関係の抽出

 

上橋 慶吾、牛島 理恵、油谷 幸代、牟田 滋、田代 康介、久原 哲

九州大学大学院  生物資源環境科学府  遺伝子資源工学専攻

 

本研究はDNAマイクロアレイ法による120個の出芽酵母の遺伝子欠失変異株の発現プロファイルデータを使用し、代謝関連遺伝子同士の制御関係の解明を目的としている。代謝系に分類される1010個の遺伝子について、総当りで相関係数を計算した。さらに、相関係数が高い遺伝子群について、各遺伝子の上流配列に特異的な共通配列がないかを調べ、データベースや文献等、既知の情報との照合を行った。

 

 

 

 

 

 

 

P-36       出芽酵母における効率的な染色体分断技術の開発とゲノムの大規模改変

 

杉山 峰崇1, 生嶋 茂仁2, 中澤 利雅2, 金子 嘉信1,2, 原島 俊1,2

1NEDO, 2阪大院 応用生物

 

我々は出芽酵母を対象に、染色体を望みの部位で分断できる染色体分断技術を開発してきた。本研究では、酵母染色体を多数のミニ染色体に分断後、様々な条件下で培養し、生存に不要な遺伝子を担うミニ染色体を脱落させるとのストラテジーにより、種々の条件下で自在に最小ゲノム酵母を作成する技術の確立を目指す。その為、高効率酵母染色体分断法を開発し、幾つかの染色体において分断株、脱落株が作成できたので報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-37   酵母two-hybrid法を用いた枯草菌ECFシグマ因子群の制御機構解析

 

吉村美香1、朝井 計2、定家義人2、吉川博文1

1東京農大・バイオ、2埼玉大・理   

 

我々は枯草菌の蛋白質間相互作用ネットワークを解明することを目的として、超音波破砕法によりゲノムライブラリーを作製し、酵母Two-hybridシステムによるライブラリースクリーニング及びマトリックスアプローチによる解析を行っている。今回は環境ストレス応答機構に関与するECFExtracytoplasmic  function)シグマ因子の制御機構に関わる因子についての解析結果を報告する。

 

 

 

 

 

 

P-38          PVDFメンブレンを用いた高感度・ハイスループットMALDI-TOF MSによるプロテオーム解析法の開発と枯草菌膜タンパク質プロテオミクスへの応用

 

武内桂吾、井上太郎、濱野 幸、大鐘新也、野崎 学、根本 直*、中西洋志*、山根國男

筑波大学生物科学、*産業技術総合研究所

 

プロテオーム解析はMALDI-TOF MSMS/MSで解析し、各タンパク質を同定する方法が正確で、迅速で、最も効率の良い方法として利用されている。この方法ではゲル中のタンパク質を直接プロテアーゼ消化する”In gel digestion 法”が現在主流である。 しかし、この方法では検出感度やゲルの取り扱いに困難さがあることが分かった。そこで、ゲル電気泳動で分離したタンパク質を一度PVDFメンブレンにブロットした後、プロテアーゼ消化を80 Acetonitrile中で行う” On membrane digestion 法”を確立した。この方法ではプロテアーゼ消化は  37oC, 一時間で充分であり、”In gel digestion 法”の1/3程度の時間でサンプルを調製することができる。標準タンパク質、枯草菌SecA, また一次元および3種類の二次元ゲル電気泳動で分離した枯草菌膜タンパク質について解析した。さらに1個のサンプルを数枚のメンブレンから調製できるため、10 - 50 fmolのサンプルを検出できることが分かった。この方法を利用して、枯草菌細胞膜を構成するタンパク質約630種類を検出・解析した結果、約20%もの水溶性と推定されるタンパク質が含まれていることが分った。

P-39   枯草菌胞子形成細胞のタイムラプス顕微鏡観察

 

細谷 茂生、佐藤

東京農工大学・農学研究科             

 

微生物ゲノムを研究する上で、一つの生細胞としての形態変化やタンパク質の動態を経時的に詳細に観察することは、今後必要となる技術である。我々は、タイムラプス顕微鏡観察により、枯草菌胞子形成過程のDNA、細胞膜、タンパク質の挙動を追い、特に胞子を構築するのに必要な母細胞の崩壊の瞬間を捕らえることに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-40              hydropathy profile を用いた配列多様なタンパク質ファミリーの in silico 解析      

英博、山下 敦士、服部 正平

北里大学・北里生命科学研究所・ゲノム情報             

 

ゲノム配列から抽出される遺伝子の約4割を占めるhypothetical protein群を分類できれば、ゲノム情報をさらに有効に活用できる。その一例として、我々はhydropathy profileを用いて、クラミジア菌ゲノムのhypothetical protein群から表層タンパク質ファミリーを抽出した。これらの遺伝子群は菌種特異的で、類似したhydropathy profileを示すが、配列は非常に多様であった。配列相同性以外の指標はhypothetical protein群の分類に有効であり、現在は他の細菌ゲノムを対象に解析中である。

 

 

 

 

 

 

 

P-41          Development of Chi Sequence Analysis System on the G-language Genome Analysis Environment

 

久間大輔(1,4) 荒川和晴(1,2) 鵜野レイナ(1,2) 中山洋一(1) 冨田勝(1,4)

1. 慶應義塾大学先端生命科学研究所 2. 同・政策・メディア研究科 バイオインフォマティクスプログラム 3. 同・総合政策 4. 同・環境情報

 

本研究ではχ配列などのオリゴ配列解析に特化したChi sequence Analysis Systemの開発を行った。 χ配列とはRecBCD及びそのホモログの認識配列であり相同組換えの促進を意味する。同システムにはχ配列基礎情報、候補の出力、コンセンサス、マルコフ解析などのメソッドが格納されている。結果として3種のバクテリアにおいてin silico的にχ配列の候補を取得した。

 

 

 

 

 

 

P-42   アスコルビン酸様物質の酸化還元状態を攪乱して見た酵母の酸化ストレス応答

 

尼子克己(1,2)、村田善則(3)、大西由希子(1)、山内祐造(1)、大桐由華子(1)、岸本律子(1)、合田清(1,2)

1.神戸学院大・栄養、2.神戸学院大・ハイテクリサーチセンター、3.産総研つくば・特許微生物

 

出芽酵母にはアスコルビン酸のC5アナログ(eAsA)が見いだされるがその機能は不詳であった。我々はeAsA合成系遺伝子破壊株の酸化ストレス耐性等から細胞内酸化状態のプローブとしての機能を提唱している。植物由来のアスコルビン酸酸化・還元酵素を導入した酵母から、eAsAの酸化還元状態がグルタチオン代謝に影響を及ぼすことを明らかにし、マイクロアレイによって制御を受ける遺伝子群とその転写制御因子を推定した。

 

 

 

 

 

 

P-43   好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatus BP-1の形質転換にかかわる遺伝子の解析

 

岩井雅子、加藤浩、片山光徳、池内昌彦

東京大学大学院総合文化研究科

 

2002年に全ゲノム配列が決定されたThermosynechococcus elongatus BP-1は、遺伝子操作が可能で、不安定な光化学系II複合体などの単離が可能であることから、光合成研究において極めて重要な生物である。しかし、その形質転換にはいくつか問題点がある。本研究ではI型制限酵素の破壊株を作製し、形質転換効率を調べるとともに、形質転換・組み換えにかかわる遺伝子をリストアップした。

 

 

 

 

 

 

 

P-44   プロテオームワイドな視点に基づいた非ユニバーサル遺伝コードとアミノ酸頻度の関連性    

 

○藤井信之 新田実 西潟憲策 金谷重彦

奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 情報生命科学専攻 構造機能ゲノム学領域 比較ゲノム学  分野        

 

普遍遺伝コードを用いない繊毛虫の系統では、本来コーディング領域に存在しないストップコドンUAAUAGがグルタミンのコードとして広がっている。ゲノムワイドなコドン解析の結果、対応コドンの2個から4個への増加と、グルタミンの相対頻度の増加の協調が見られた。理論的には淘汰圧が低い領域でグルタミンが増加すると予想されるので、この系はプロテオームワイドな淘汰圧を検出するモデルとして使えるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

P-45   枯草菌における細胞分化と翻訳系:リボソームを構成する蛋白質の網羅的解析 

七宮英晃1、赤沼元気1、名取陽祐1、古園さおり2、工藤俊章2Seung-Moon Park3, 越智幸三3、小  林和夫4、小笠原直毅4、河村富士夫1 "

1立教大・理、2理研・生物基盤研究部、3食総研・生物機能開発部、4奈良先端大・情報科学

 

枯草菌の細胞分化過程におけるリボソーム蛋白質の構成変化を調べるため、各生育段階より抽出した粗精製リボソームをRFHR 二次元電気泳動法を用いて分離し、2種のL31蛋白質(RpmE, YtiA)を含む51種のスポット同定を行った。また、RpmEは主に栄養増殖期、YtiAは主に定常期の細胞より抽出したリボソーム中に認められた。これらの解析結果に加え、ytiA遺伝子の転写制御機構についても併せて報告する。

 

 

 

 

 

 

P-46   ラン藻プロモーターデータベースの構築

 

今清水正彦、岡本忍、藤澤貴智、肥後明佳、大森正之

東京大学大学院総合文化研究科      

 

ラン藻の全ゲノム配列は現在10種以上決定されている。これらのラン藻は、形態的、生理的多様性に富んでおり、数種においてはゲノミクス解析も進行している。今後DNAアレイ解析とインフォマティクスを組み合わせたプロモーター解析は重要性を増すと考えた。その基礎データとして、文献からのラン藻プロモーター情報の抽出、整理を行った。これらに基づき、-10, -35コンセンサス配列の再定義やレギュロン予測を試みる。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-47   高度好熱菌遺伝子機能情報の協調的研究環境としてのグリッド技術利用について

 

福崎昭伸、三戸範子、井手香、長嶋剛史、畠山眞里子、小西史一、梅田浩之、倉光成紀、小長谷明彦                  

理化学研究所ゲノム科学総合研究センター(GSC)ゲノム情報科学研究グループ             

 

高度好熱菌Thermus thermophilus HB8株は、タンパク質立体構造解析研究におけるモデル生物である。多くの大学、研究機関が結集し、この細菌由来の約2000個の遺伝子産物を対象にしたタンパク質の発現、精製、構造解析が進められている。また、構造解析とは別に、遺伝子配列解析、発現解析、タンパク質相互作用解析、プロテオーム解析、代謝解析などの研究も並行して行われており、このプロジェクトの最終目的としては、これらの一生物由来のすべての情報を総合した細胞シミュレーションを行うことを目指している。  我々が構築しているのは、多くの機関や研究者が横断的に関わる大規模なプロジェクトを遂行する上で、データやシミュレーションモデルおよび、その実行環境を共有し、研究者が自由に最新のデータや知見をセキュアに交換できる仕組みが不可欠な仕組みである。  このような設計方針のもとOBIGrid(Open Bioinformatics GRID )上に構築したネットワーク型知識  共有環境であり、細胞シミュレーション等、莫大な計算資源必要とする対象にグリッド技術を使って、提供できるように設計している。本研究会では、上記のGRID環境下で多くの研究者による遺伝子配列のアノテーションを可能にした環境を作成したので、それを報告する。

 

 

P-48   出芽酵母の遺伝子発現制御ネットワークの構築と解析

 

嶋田 有希子1,油谷 幸代1,高橋 順子2,渡辺 昭次2,江口 至洋2,牟田 滋1,田代 康介1,久原   哲1

1 九州大学大学院生物資源環境科学府遺伝子資源工学専攻  2 三井情報開発株式会社      

本研究では出芽酵母の遺伝子欠失変異株176個のDNAマイクロアレイによる発現プロファイルデータから、制御関係が既知の552個の遺伝子を選択し、ブーリアンモデルによる遺伝子発現制御ネットワークの構築を行った。構築したネットワークについて転写因子同士の制御関係に注目し、細胞機能間の制御関係を明らかにすると同時にMET28を中心とした一連の転写因子の制御ネットワークを明らかにすることができた。

 

 

 

P-49   バクテリア生細胞内でのゲノム可視化とその動的変化         

 

仁木 宏典   山市 嘉治

国立遺伝学研究所 放射線・アイソトープセンター

 

塩基配列が解読されたバクテリアゲノムを巧妙な遺伝学的手法を使い大規模に改変することが可能となった。このような染色体レベルでの変異株の体系的な解析により、細胞内でバクテリア染色体を構築するための機構を解き明かすことができると期待できる。しかし、このためには細胞内での染色体構造を知ることが必須である。この目的のため、生細胞での染色体の可視化を試み、動的な構造変化を明らかにすることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-50   シアノバクテリアの運動性、走光性の分子機構の解析         

 

吉原静恵、鈴木布美子、小林玲児、亀井綾子、片山光徳、池内昌彦      

東京大学・院・総合文化研究科          

 

我々はこれまでに、単細胞性シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のゲノム情報をもとに、運動にかかわる線毛の構成成分や線毛形成の調節因子、さらに走光性にかかわる光受容体や調節因子などをコードする遺伝子を同定している。本発表では、近年明らかにされている複数のシアノバクテリアのゲノムにおける上記の遺伝子の保存性や多様性について考察する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-51   枯草菌スポアタンパク質の網羅的解析

 

高松宏治、桑名利津子、笠原康裕*、小笠原直毅**、渡部一仁             

摂南大・薬、*茨城大・農、**奈良先端・情報             

 

枯草菌をはじめとするスポア形成細菌は栄養増殖に適さない環境条件になると長期休眠能と種々の抵抗性を備えたスポアを形成する。我々はLC/MS/MSを用いて精製スポアから122種類の機能未知タンパク質を同定した。これらについて遺伝子発現制御因子の検索を行い、38種類がスポア形成期特異的シグマ因子に制御されることを明らかにした。また、遺伝子破壊株の解析により4種類が発芽に関与することを明らかにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-52   細菌ゲノムに分布する新規フラビン結合センサー () タンパク質

 

岡島 公司1  三木 邦夫2  片山 光徳1  池内 昌彦1             

1東京大学大学院総合文化研究科 2京都大学大学院理学研究科   

 

シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803slr1694遺伝子は正の走光性にかかわる新規のフラビン結合タンパク質をコードしている。これと相同な配列は多くの細菌ゲノムに見つかっているが、その機能は明らかではない。われわれは、シアノバクテリアのこれらのタンパク質の生化学的解析と結晶化を進めている。これによって、細菌に存在する新規フラビン結合センサー () タンパク質の構造や機能を明らかにできると考えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-53   病原性真菌Candida albicansのゲノム解析

 

知花 博治、岡 奈緒、三上 襄             

千葉大学・真菌医学研究センター      

 

Candida albicansのゲノムは16Mbp,染色体数は8本,2倍体で1倍体の世代はなく10kb以上の反復配列と相同染色体間でヘテロな領域を多数含み複雑である.1997年に開始したスタンフォードにおけるゲノムシークエンスプロジェクトはcontig270本をもって近々終了する予定である.我々は千葉大学においてプロジェクトを引き継ぎ全ゲノムシークエンスの完成をめざしている.

 

 

 

 

 

 

 

 

P-54   ウェルシュ菌におけるリーディング鎖、ラギング鎖上における遺伝子分布の違いの研究

 

沖田卓矢、平川英樹、大谷郁、清水徹、久原哲             

九州大学 生物資源環境科学府 遺伝子資源工学専攻 遺伝子制御学講座      

 

ウェルシュ菌と枯草菌間のオルソログ遺伝子と全ゲノム解析された7種のグラム陽性細菌間の最小ゲノムセットの遺伝子を同定し遺伝子の分布を調べたところ、ウェルシュ菌のリーディング鎖上のterori-にオルソログと最小ゲノムセットの遺伝子が偏って分布していた。また、オルソログ遺伝子や最小ゲノムセットをCOGで機能分類したところ、ウェルシュ菌では生存に必要な重要な遺伝子がterori-に多く分布していた。

 

 

 

 

 

 

 

P-55          Genome-wide expression analysis of the responses to nitrogen deprivation in the  heterocyst-forming cyanobacterium Anabaena sp. strain PCC 7120         

 

得平茂樹、大森正之、佐藤直樹

埼玉大・理・分子生物、東大・院・総合文化             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-56   制限酵素修飾酵素遺伝子のゲノム多型への連鎖:Neisseriaの場合

 

中尾圭一郎(12)、知念秋人(1)、内山郁夫(3)、信里綾香(1)、河合幹彦(1)、小  林一三(1

1:東京大学医科学研究所 遺伝子動態分野 小林研究室。  2:慶應義塾大学 理工学部。  3:国立岡崎共同研究機構。             

 

制限酵素修飾酵素遺伝子単位RMが、ゲノム間を動き、ゲノムを造り替えたことが、ゲノム情報解析と実験解析から示唆されている。私たちは全ゲノム配列が決定されている2株の髄膜炎菌Neisseria meningitidisRMの解析を行った。コドン使用頻度の偏りおよびGC含量から、水平伝達が示唆され  た。RMがオペロンに挿入された形の多型、見かけ上転移しそれにISが伴っている形の多型、I型のRMの多型を解析した。

 

 

 

 

 

 

P-57   クラミジア・フェリスの全ゲノムDNA配列の決定と解析

 

東 慶直1、平川英樹2、山下敦士3、藤 英博3、蔡 燕4、福士秀人4、服部正平3、久原 哲  2、白井睦訓1       

1山口大学医学部、2九州大学大学院農学研究院、3北里大学理学部、4岐阜大学農学部             

昨年、ネコ結膜炎の原因細菌クラミジア・フェリスの全ゲノムDNA配列の決定した。動脈硬化と密接に関係する肺炎クラミジアや先進国における性感染症の第一病原菌トラコマティスとの比較ゲノム解析が主要な目的である。本研究会では、クラミジア・フェリスのゲノム構造や遺伝子構成の特徴、他のクラミジアのゲノムとの比較解析の結果を紹介し、クラミジアのもつ病原性因子などについても議論したい。

 

 

 

 

 

 

 

P-58   シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の挿入配列(IS)の解析    

小林真理、加藤浩、池内昌彦             

東京大学大学院 総合文化研究科 生命環境科学科             

 

Synechocystis sp. PCC 6803のゲノムには99個のtransposaseが存在しそれらは9グループ77個のIS に帰属できる。Cl-要求性のpsbV破壊株はCl-の排出ポンプと考えられる遺伝子にISが挿入されることでCl-欠乏耐性を獲得する。この系を利用してSynechocystisからの内在のISの転移を網羅的に解析した。この結果からISの構造の多様性と活性の関係について考察する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-59          Bacteroides fragilisゲノムの多様性

 

桑原知巳1、中山治之1、山下敦士2、平川英樹3、黒岩希実子1、岡田奈津実1、服部正平2  久原 哲3、大西克成1             

1徳島大院・医・分子細菌学、2北里大・ゲノム情報、3九州大学大学院農学研究院

 

Bacteroides fragilisはヒト腸管内に常在する偏性嫌気性グラム陰性桿菌であり、現在、  NCTC9343株とYCH46株の2株について全ゲノムシークエンスが進められている。この2株間のゲノム 5.3 Mb)を比較した結果、それぞれの菌株に特異的な領域の総和は約700 kbと推測された。これらの菌株特異的な領域にはconjugative transposon、莢膜生合成遺伝子や外膜タンパク質遺伝子が数多く存在し、これらの遺伝子群の多様性がB. fragilisゲノムの多様性を生み出していると考えられた。

 

 

 

 

 

 

P-60   黄色ブドウ球菌ゲノムの多型性と病原性予測の可能性         

 

馬場 理・黒田 誠・伊藤輝代・崔 龍洙・平松啓一      

順天堂大学医学部細菌学教室            

 

黄色ブドウ球菌は、現在までに7株もの全ゲノム配列が解読されている。各株のゲノム間の差異は、外来性遺伝因子と考えられる「ゲノムアイランド」に集中している。その多型性、及びそこにコードされている病原性因子や薬剤耐性因子の比較から、黄色ブドウ球菌の持つ病原性の決定要因を考察し、臨床応用法を模索する。また、ゲノムアイランドが黄色ブドウ球菌のゲノムで保持されるメカニズムにも触れたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-61   糸状性ラン藻におけるPASドメイン含有タンパク質のコンピューターによる網羅的解析

 

成川礼、岡本忍、池内昌彦、大森正之

東京大学大学院総合文化研究科      

 

近年ゲノム解析が終了した糸状性ラン藻Anabaena sp. PCC 7120には、情報伝達タンパク質が多く存在し、特にPASドメインが非常に多く含まれていた。その近縁種であり、ドラフト配列が公開されているNostoc punctiformeにおいても、同様にPASドメインが多く検出される。本研究では二種間のオーソログを比較し、PASドメインが分子内で重複、欠失、挿入していることを見出した。

 

 

 

 

 

 

 

P-62   シグナルペプチド判別システムSOSUIsignalによる微生物ゲノム解析

 

五味雅裕, 赤澤史嗣, 美宅成樹             

東京農工大(工・生命工)

 

シグナルペプチドを高精度にて判別予測を行うソフトウェアシステムSOSUIsignalおよび膜タンパク質予測システムSOSUIを組合わせたSOSUI-SOSUIsignalにより、各種微生物ゲノム配列に対する判別解析を行った。SOSUIsignalにより、これまで判別が困難であったシグナル配列と膜貫通領域の判別が可能となり、分泌型水溶性タンパク質の予測、膜タンパク質判別と膜貫通領域予測精度を向上させることに成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-63   大腸菌の新規必須遺伝子群の同定、解析と大規模欠失株の作製      

 

橋本昌征1、溝口寛2、田中喜美枝2、森英郎2、市村俊治1、大手友武1、山川武廣3、山崎由紀子3  加藤潤一1 1

都立大・院理・生物、2協和醗酵、3遺伝研             

 

大腸菌染色体上の増殖に必須な全ての遺伝情報を明らかにするために、染色体全体に種々の欠失変異を作製し、欠失させることができなかった領域の中から必須遺伝子を同定している。同定した未知必須遺伝子については遺伝学的に機能解析を進め、またセットとして最低限必要な遺伝子群を明らかにするために、大規模欠失変異を作製し、さらにそれらを組み合わせることにより染色体全体の縮小化も行なっている。

 

 

 

 

 

 

 

P-64   細胞性粘菌の細胞周期における遺伝子発現プロファイルの解析

 

森尾貴広(1), Chad Shaw(2), 千田淳司(3), Nancy Van Driessche(2), 加藤磨理子(1), Miroslava   Ibarra(2), Sujata Sharma(2)Ezgi Okyay(2), 雨貝愛子(3), 漆原秀子(1), Adam Kuspa(2), 田仲  可昌(1), 前田靖男(3), Gad Shaulsky(2)             

(1) 筑波大・生物科学系、(2) Baylor College of Medicine(3) 東北大・院・生命科学             

我々は細胞性粘菌の増殖から分化への切り換え機構を明らかにするため、低温処理による細胞周期同調系を用いて細胞周期の各相における遺伝子の発現プロファイルをマイクロアレイ解析により調べた。その結果、細胞周期においては共通の発現パターンを持つ遺伝子グループが少なくとも3種類存在することを見出した。また、このうち1つのグループに含まれる遺伝子の多くは、発生過程の後期に発現レベルが上昇することが観察された。

 

 

 

 

 

 

P-65   微生物の全ゲノム配列の迅速な決定に適した条件

 

小川倫洋1、大西真2、林哲也2、安永照雄1、黒川顕1

1阪大・遺伝情報、2宮崎医大・微生物学             

 

ホールゲノムショットガン法で全ゲノム配列を迅速に決定するには、配列決定に必要なDNA断片およびリンキングクローンの数、およびこれらの最適な比率を知ることが非常に重要である。またシークエンス決定過程で生じるエラーの許容限界も、プロジェクトの管理上有用な情報である。そこで筆者らは既に報告されている110種の微生物全ゲノム配列を用いて本法をコンピューター上でシミュレートし、これら条件の決定を試みた。

 

 

 

 

 

 

 

P-66          Vibrio属細菌の比較ゲノム解析

 

黒川顕,名嶋真智,安永照雄,服部正平,飯田哲也      

阪大・遺伝情報実験センター,理研GSC,阪大・微研             

 

腸炎ビブリオの病原性をゲノムレベルで解明するため,2002年に腸炎ビブリオのゲノム全配列を決定した.本研究では,腸炎ビブリオと2000年に全配列が決定されたコレラ菌においてゲノムレベルでの比較解析をおこなった.さらに,2002年にゲノム全配列が公開されたVibrio vulnificusを加え3者比較することで,Vibrio属細菌の進化過程をゲノムレベルで解析した.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-67          Vibrio属におけるSuper-integronの比較解析

 

名嶋真智1、飯田哲也2、服部正平3Shin-Feng Tsai4、安永照雄1、黒川顕1             

1.大阪大学遺伝情報実験センター、2.大阪大学微生物病研究所、3.理化学研究所GSC4.Division   of Molecular and Genomic Medicine, NHRI

 

Vibrio parahaemolyticus RIMD2210633株のゲノム全配列を決定し、外来性遺伝子の獲得機構である Super-integron(SI)の構造を決定した。さらに、Vibrio choleraeVibrio vulnificus SIの構造  を決定し、Vibrio3種間におけるSIの比較解析を行い、外来性遺伝子の獲得先、遺伝子獲得に関与すると考えられる回文配列などを示唆した。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-68          Synechocystis sp. PCC6803のフィトクローム様遺伝子破壊株におけるDNAマイクロアレイ解析

 

片山 光徳、耿 暁星、池内 昌彦

東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

 

シアノバクテリアゲノムに複数個存在するフィトクロームに類似した遺伝子は多様な構造を持つこから、それぞれ異なる光情報伝達に関わると予想される。これらの遺伝子sll1473, sll0821, sll1124, slr0473, slr1805, slr1969, slr1393, slr1212破壊株の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて野生株と比較した結果、それぞれに特異的な発現パターンが観察された。

 

 

 

 

 

 

 

P-69   微生物ゲノムプロジェクト支援システム GenomeGambler の最新機能    

 

道賀康祐1、森泉泰司1、上月登喜男1、大山 彰1、高木善弘2、高見英人2             

1株式会社ザナジェン、2海洋科学技術センター      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-70   微生物ゲノム情報データベース XanaGenome を用いた比較ゲノム解析      

 

宮澤達也、坂井寛章、山本 佑、上月登喜男、中川 智、大山 彰          

株式会社ザナジェン   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-71   微生物ゲノム情報データベース XanaGenome でのドラフト配列解析         

 

上月登喜男、宮澤達也、坂井寛章、山本 佑、中川 智、大山 彰          

株式会社ザナジェン   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-72   電荷バランスによるダンベル型タンパク質の探索      

 

内古閑伸之、高橋俊哉、Ke Runcong、園山正史、美宅成樹             

東京農工大学・工・生命工学          

 

タンパク質の立体構造とアミノ酸配列の電荷分布の特徴を関連付けることによって、様々なゲノムについてアミノ酸配列からタンパク質の構造、とくにダンベル型タンパク質を分類できた。分類されたダンベル型タンパク質はカルモジュリン、トロポニンCのほか、DNA結合たんぱく質も多く見られた。ダンベル型タンパク質予測ツールSOSUIdumbbellについて紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-73   大腸菌の解糖系全酵素の精製とモデル化に向けた酵素活性測定    

 

吉野昌孝(1,2)、小川匡之(1)、伊藤文(2)、富田勝(2)、森浩禎(2,3)

(1)愛知医大・医・生化 (2)慶応大学・先端生命科学研 (3)奈良先端大・遺伝子センター      

大腸菌の代謝モデルの構築を目的として、解糖系全酵素を精製し、速度論的解析を試みた。E. coli K12 W3110株にpCA24Nをベクターとして解糖系酵素遺伝子を組み込み、過剰発現させた。Hisタグをつけた16酵素をNi-NTAアフィニティクロマトにより精製し、均一標品を得て、速度論的解析を行った。酵素パラメータの取得とともに代謝制御因子を検索し、解糖阻害剤としてphosphoenolpyruvateによるGlucokinaseの強い阻害を認めた。

 

 

 

P-74   枯草菌のtRNAのアンチコドンを修飾する酵素遺伝子の同定          

 

相馬亜希子1、池内与志穂2、小林和夫3、小笠原直毅3、渡辺公綱2、関根靖彦1、鈴木勉2           

1立教大・理・生命、2東大院・新領域、3奈良先端大・バイオサイエンス          

 

tRNAをはじめとする機能性低分子RNAが正しく機能する上で、転写後のプロセシングや修飾は必要不可欠である。RNAの修飾塩基は、原核生物と真核生物を合わせ、現在までに約80種類の存在が報告されているが、解析の困難さから、その合成系路及び合成酵素遺伝子が完全に解明されているものは非常に少ない。本研究ではゲノム解析及び低分子RNA解析が最も進んでいる生物の一つである枯草菌を材料に、未同定のtRNA  修飾酵素遺伝子を同定する事を目的としている。枯草菌では、ゲノムプロジェクトの一環として、生育にお  けるessentialityと機能に基づいた分類が全遺伝子についてなされており、既に非必須遺伝子の破壊株、及び必須遺伝子の発現制御株が構築されている。これらのうち、機能未知遺伝子群の中には未同定のtRNA修飾酵素遺伝子が含まれている可能性が非常に高い。本研究では機能未知遺伝子の破壊株や発現を抑制する条件で培養した制御株の細胞から抽出した全RNAに存在する修飾塩基の量的変化を解析することにより、修飾塩基の合成に関与する遺伝子の網羅的な同定を試みた。全RNAをヌクレオシドまで消化し、各修飾塩基の量的及び質的な変化を、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)によって観測した。その結果、いずれもアンチコドン1文字目に存在し、コドン認識やアミノアシルtRNA合成酵素による認識に重要な役割を果たす事が知られている、1)リシジン、2)イノシン、及び35-カルボキシメチルアミノアメチル2-  チオウリジン(cmnm5s2U)の合成に関与する遺伝子の同定に成功した。

P-75   祖先ゲノム構造の推定に基く微生物ゲノムの進化過程の解明      

 

渡邉日出海、黒澤桂子、木村隼人          

奈良先端科学技術大学院大学          

 

生物進化過程の詳細を明らかにするためには、祖先ゲノムの進化過程を明らかにする必要がある。我々はそのための方法を開発し、実際に微生物を含む現生生物のゲノム配列データの比較解析に基いて多くの祖先生物ゲノムの構造を推定した。その推定した祖先ゲノム構造同士を比較することで、ゲノム構造の変化をとらえることができる。昆虫の共生微生物と大腸菌の共通祖先が持っていたゲノム構造とその変化についての解析結果等を示す。

 

 

 

 

 

 

 

 

P-76   遺伝子発現プロファイリングによる光合成順化機構の網羅的解析:シアノバクテリアSynehcocystis   PCC6803と緑藻クラミドモナスのトランスクリプトーム解析によるCO2と光環境への順化         

 

○福澤秀哉1、三浦謙治1、山野隆志1、小日向務1、能岡智1、嶋田絵美1、皆川純2、瀬口武史2、浅  水恵理香3、中村保一3、田畑哲之3、大和勝幸1、大山莞爾1             

1京大・生命科学、2北大・低温研、3かずさDNA研究所             

 

シアノバクテリアSynehcocystis PCC6803におけるストレス応答遺伝子の破壊株、クラミドモナス CO2応答性遺伝子Cah1の調節変異株、光呼吸酵素ホスホグリコール酸フォスファターゼの変異株 pgp1、無機炭素輸送体変異株pmp1のトランスクリプトーム解析を通じて、CO2と光に関して光合成順化機構の全体像を理解する試みを紹介する。

 

 

 

 

 

 

P-77   微生物ゲノム塩基配列アセンブルシステムWGSAの改良

 

大山 彰(1)、斎藤 仁浩(1)、高木 義弘(2)、平川 英樹(3)、久原 哲(3)              

(1)ザナジェン、(2)海洋科学技術セ、(3)九大院              

 

微生物ゲノムの断片塩基配列結合に適したDNAアセンブラ、WGSAを開発し、その改良を進めている。最初に塩基配列結合時に生成されるアラインメントに対しその一致度を示すコンセンサス指数を導入し、結合エラーをタイプ別に検出する方法を述べる。DNAシーケンサから出力されるゲノムDNA断片の塩基配列は実験段階でのエラーを含むだけでなく、ゲノム中に存在する反復配列などを含み、重大な結合エラーを生じる場合がある。このため結合エラーを分類しそのタイプ別に検出と自動修正のアルゴリズムを開発し、結合エラーの検出および修正を自動的に行う機能をWGSAに組込み、フィニッシングまでの時間を短縮することが可能となった。さらに、全ゲノムが既知の種とシーケンシング中の種のドラフトゲノムとの比較機能や、コンティグ同士の結合可能性を解析する機能、およびシーケンシングデータの品質管理を行う機能を追加したため、これらについても述べる。

 

 

 

P-78   好熱性シアノバクテリアのゲノムとポストゲノム解析         

 

池内昌彦・田畑哲之      

東大・大学院総合文化研究科、かずさDNA研究所      

 

好熱性の光合成生物は、不安定な光化学系複合体などが単離できること、進化的に古い時期に分岐していること、有用物質の生産などさまざまな点で利用価値が高い。本発表では、全ゲノムを決定した好熱性のシアノバクテリアThermosynechococcus elongatus BP-1のゲノムの特徴と現在進行中のポストゲノム解析などについて、紹介する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

P-79   異なる炭素源で生育した枯草菌のメタボローム解析とトランスクリプトーム解析

 

○西岡孝明(1)、松田敬子(2)、山口弘毅(3)、上野由希(4)、曽我朋義(4)、藤田泰太郎(3)

(1)京都大学大学院農学研究科、(2)奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科、(3)福山大学生命  工学部、(4)慶應義塾大学先端生命科学研究所          

 

枯草菌6種の異なる炭素源(グルコース、フラクトース、グリセロール、グルコン酸、ピルビン酸、リンゴ酸)いずれかを含む S6 培地で培養し、対数増殖期に集菌した。菌体から代謝物質を抽出し、キャピラリー電気泳動/質量分析計(CE/MS)で 88 種の代謝物質を定量した。同じ培養条件下で DNA マイクロアレイを用いて 4320 遺伝子の発現を調べた。グルコースとリンゴ酸でそれぞれ培養した場合についてメタボローム解析とトランスクリプトーム解析を併せて枯草菌の代謝活動を総合的に考察した結果について発表する。

 

 

 

 

 

 

P-80   高度好熱菌 Thermus thermophilus HB8 蛋白質の網羅的発現と精製の進行状況 

"中川紀子1,海老原章郎1,甲角幸秀1,佐藤伸哉1,上利佳弘1,真岡伸子1,上利和子1,飯野均1  柏原愛子1,井上由美子1,増井良治1,2,三木邦夫1,3,横山茂之1,4,倉光成紀1,2"             

1理研,2 阪大・院理,3 京大・院理,4 東大・院理             

 

高度好熱菌をモデル細胞として構造ゲノム科学的研究が進行中である。本発表では,蛋白質の構造解析・機能解析に不可欠である蛋白質の量産化と精製についてその進行状況を報告する。


P-81   ARMでみる微生物アミノ酸代謝         

 

有田 正規             

産総研CBRC             

 

Atomic Reconstruction of Metabolism (ARM) プロジェクトでは、酵素反応中における原子移動を全て記述したデータベースを構築している。この情報を用いて、1)トレーサ実験のシミュレーション、2)未知代謝経路の予測、3)代謝ネットワークの巨視的な解析 が可能になった。ポスター ではARMプロジェクトで開発するソフトウェアを用いてアミノ酸生合成経路の視覚化を紹介する。ソフトウェアおよびデータベースは  http://www.metabolome.jp/ よりアクセスできる。

 

 

 

 

 

 

 

P-82   構造プロテオミックスの進捗状況      

 

増井良治、中川紀子、倉光成紀             

大阪大学理学研究科、理化学研究所   

 

構造プロテオミックスによって、代表タンパク質の全立体構造が明らかになる数年後には,アミノ酸配列から蛋白質主鎖の立体構造が予測可能な時代が到来する。その目標に向かって、日本は、世界に先駆けて構造  プロテオミックス研究に着手しているが、米国、ドイツ、フランス、イギリス、EU、カナダ、韓国などでも  同様のプロジェクトが世界協調で進められている。それらの進捗状況について紹介する。


P-83   ラン藻と根粒菌ゲノムの GO 注釈    

 

中村保一、金子貴一、田畑哲之              

かずさDNA研究所      

 

かずさ由来微生物ゲノムのタンパク質遺伝子機能注釈を、InterPro GO により完全自動作成した。この系によるアノテーションと従来の手作業による機能注釈とを対比し、注釈可能な割合、正確さ、機能特異性、ユーザの使いやすさなどを議論したい。