オーキシンが引きおこす屈性反応の信号伝達分子機構を明らかにするために、屈性異常のシロイヌナズナ突然変異体の研究をおこなった。屈性反応のモデルとして、胚軸の片側にオーキシンを塗布して胚軸を反対側に屈曲させる人工的な反応系を考案し、オーキシンを塗布しても左側に屈曲しない突然変異体nph4msg2を得た(図、一番右側の列)。これら変異体は、屈地性でも(一番左側の列)、屈光性でも(左から2番目の列)、胚軸のフック形成でも(右から2番目の列)野生型ほど屈曲しない。NPH4はオーキシン応答性転写調節因子ARF7を、MSG2は転写抑制因子AUX/IAA19をコードしている。この二つの因子はC末端側に共通に持っているタンパク質間相互作用ドメインを介して結合することができ、この相互作用によって後者は前者の転写活性を抑制すると考えられる。一方、AUX/IAA19の転写はNPH4を介してオーキシンによって促進されることから、両因子はオーキシンによって引きおこされる屈性反応を調節するネガティブ・フィードバック回路を形成していると考えられる。

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