高等植物の茎頂では細胞が層状構造を成しており、最外層（Ｌ１層）は各器官の表皮へと分化する。シロイヌナズナを用いたこれまでの研究から、Ｌ１層に特異的な遺伝子発現に関わるプロモーターのシス配列として、Ｌ１ボックスを同定し、ホメオドメインを持つ転写因子ATML1 がこの配列に結合することを明らかにした。シロイヌナズナには、ATML1と相同性の高い遺伝子としてPDF2が存在し、両者共にＬ１層で発現する（左図、GUS染色）。これらの遺伝子欠損変異は単独で正常に生育するが、二重変異は表皮細胞の分化が正常に起こらない（右図）。本研究では、胚発生の過程でＬ１層がどのように確立し、茎頂において維持されるのか、その分子的基盤の解明を目指し、PDF2, ATML1の発現制御機構および機能の解析を進めている。また、これらを含むHD-GL2ホメオボックス遺伝子群の、器官分化における役割について包括的に明らかにしたい。