
説明
A. SHL2遺伝子の強い対立遺伝子(shl2-3)を持つと、幼根は正常に形成されるが、シュートメリステム(SAM)は全くできない。しかし、弱い対立遺伝子(shl2-6, shl2-7, shl2-8)を持つものでは、不完全なSAMができる。SAMが分化する直前の胚でのホメオボックス遺伝子OSH1(未分化な細胞で発現する)の発現領域は、野生型で最も広く、強い対立遺伝子ほど狭くなる。従って、強い対立遺伝子を持つものでは、十分な数の未分化細胞を確保できないために、SAMが形成されないと考えられる。
B. shl2-8変異体は発芽すると、異常な葉序や糸状の葉を分化し、異様な植物体となる。
C. shl2-8植物体のSAMでのOSH1の発現領域は、野生型より狭く、頂部から毛(左写真 矢頭)ができたり、葉原基に転換(右写真 矢頭)したりて、SAMが消失する。
D. 強さの異なるshl2の対立遺伝子について、球状胚でのOSH1を発現する細胞数(未分化細胞数)とSAMが分化する頻度を調べると、両者の間には正の相関が見られ、未分化な細胞が約30細胞以下であると、SAMは分化せず、約30~90細胞では不完全なSAMが、それ以上の未分化細胞が確保されると正常なSAMが分化する。このようにSAMの分化は決して"all
or nothing"な過程で決定されるものではないと考えられる。