植物は、茎の先端にある茎頂メリステムと根の先端にある根端メリステムが、次々と新しい細胞を作り出すことによって生長する。2つのメリステムはどちらも中央が盛り上がったドーム状の形状をしていて、その中央部には細胞分裂が盛んな未分化の細胞群が存在する。中央部の細胞が増えて、中心から周縁部に押しやられた細胞は、その位置に応じた分化を行う。そのため、植物はドームの中心を軸に幾何学的に均整のとれた構造になる。
 幾何学的に均整がとれたメリステムの構造が崩れると、その植物には様々な形の異常が生じる。TONSOKUと名付けられた遺伝子に欠損を持つシロイヌナズナは、根端メリステムおよび茎頂メリステムの構造が異常となる(野生型株(a)に比べtonosku変異株(b)の茎頂は横に拡がった形をしている。また変異株では複数の場所でwus遺伝子の発現が見られる) 。その結果、根が短くなるばかりでなく、葉序がおかしくなったり、花茎が帯状に広がり、著しい場合は茎の二又分岐がおこったりする(図(c)とその横断切片(d))。
TONSOKU遺伝子はタンパク質相互作用に関わると考えられる領域を2つ持つ新奇タンパク質をコードしている。このタンパク質の局在部位を調べたところ、体細胞分裂時に、染色体に先立って娘細胞へと分配されることが明らかになった。TONSOKU遺伝子の解析は、メリステム構築機構ばかりでなく、植物の細胞分裂に関わる基本因子の解明に役立つと考えられる。

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