葉の左右相称的な形はいかにしてできるか

植物の葉は、主脈を中心軸として基本的に左右相称です(図A左端)。しかし、シロイヌナズナの asymmetric leaves1 (as1)asymmetric leaves 2 (as2) の突然変異体の葉は、このような左右の対称性が壊れています(図A中央、右端:それぞれの変異体では、葉の切れ込みの様子や、葉脈のパターンが、野生型(WT)と比べて、非対称になっていることがわかる)。私たちは、このような葉の形ができる仕組みを研究しています。
 AS1 遺伝子はアメリカのグループが単離・同定し、図Bにあるように、MYB という構造を持つ転写因子と似ているタンパク質をコードしていることがわかりました。AS2 遺伝子は、私たちが単離・同定し、新たな構造をしているタンパク質をコードしていました。ただし、ロイシンジッパーなどの分子間相互作用に関わると推定される領域を持っています。また、AS1 と AS2 タンパク質は互いに結合して、細胞核の中に存在することがわかり、何らかの遺伝子の転写を調節していると考えられています。
 その後、as1as2 の変異体の葉では、KNAT1 などのホメオボックス遺伝子が、葉の周辺部で非対称に斑点状に発現し(図C下段の青色の部分)、その結果、葉の切れ込みが起こっていることがわかりました。野生型では、このような発現は全く見られないことから、AS1-AS2 の複合体が、KNAT1などのホメオボックスを持つタンパク質の遺伝子の転写を完全に抑制することが、左右相称的な葉の形成に重要であると考えられるようになりました(図C 上段)。

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