実験プロトコール、実験する際の注意点、Q&A
マクロアレイ作製に関しての情報 (かずさDNA研究所 桑田主税)
1) フィルターに固定するEST由来DNAの調製について
ESTの由来
ESTクローンのPCR増幅に関して
ベクター配列のプライマーを用いてESTインサートをPCR増幅する。
13,542クローンのうち数%はPCRで増幅されない、または、コンタミが原因による複数のバンドがでるものがあることを認識すべきである。アレイのクローンは96穴プレートベースで管理しており、この中から、数百クローンを1クローンずつ個別にPCRまたは再植菌することは、新たなコンタミの可能性を生じ、困難である。データの最終的な解釈は注意すべきである。
PCR産物を濃縮するか、しないか?
以前は、100μlのPCR産物をイソプロ沈殿を行い、20μlの5倍濃縮にしていた。5倍濃縮の場合は、ハイブリダイゼーションのシグナル強度は強くなり、データの精度は高まると予想される。しかし、タイタープレートでのイソプロ沈殿はDNAをロスしやすい。現在ではPCR産物をそのままスポットしており、解析に十分なシグナル強度を得ている。当然、1回のPCRで作成できるフィルターは5倍となる。ちなみに、PCR産物のDNA濃度は30〜60ng/μl程度である。
2) アレイフィルターの作製
スポッティング方法
スポッティングはバイオメック2000(Fig.1-1、47KB)を用いている。バイオメックは、表面積0.45mmの96本のピンを96穴タイタープレートのテンプレートDNA溶液につけて、フィルターにスポットする(Fig.1-2、33KB)。スポットの密度は、各スポット中央の間隔がを1mmとし、8×12cmのフィルターあたり8×8×96=6144スポットとしている(Fig.2、53KB)。フィルターには、ナイロンメンブレン(Biodine)を用いている。1回のプログラムのランで6枚作成でき、2時間30分を要する。テンプレートDNA溶液は24μlずつ分注し、その24μlで10回のランを行うことがでる。すなわち24μlで60枚、100μlのPCRによる4回の分注で合計240枚のアレイフィルターの作成が可能である。その所要時間は2時間30分×40ラン=100時間である。
反復してスポッティングする必要性はあるか?
これまで、1枚のフィルターあたり2スポットずつ反復してスポットしていた。しかし、同サンプルでハイブリした場合では、2点間の差が1.5倍以内の範囲に96%のクローンが収まり(Fig.3、53KB)、マクロアレイでは、反復間での再現性は極めて高いことがわかった。反復せずにスポットしても十分であり、むしろできるだけ多くの遺伝子を1枚にのせて、ハイブリ間(フィルター間)の誤差を減らした方が良いと考えている。
384ピンを用いたスポッティングによる効率化
より効率的にマクロアレイフィルターを作製するために、一度に384スポットする384ピンでのフィルターの作製を試みている(Fig4、48KB)。テンプレートDNAの調整は、96プレートPCR液をバイオメックを用いてV底384プレートに自動分注する。これにより、1回のランの作業時間は従来の3分の1の50分となった。また、テンプレートDNAプレートが384となったことで、作業中の乾燥が減少し、スポットできる枚数は従来の3倍の720枚となった。一方で、ピンの表面積がこれまでのものよりやや小さいために、スポットDNA量は低下し、得られるハイブリシグナルの強度はやや低下している。
コントロールDNAのスポッティング
ネガティブなコントロールとしてλDNAをスポットし、バックグラウンドの値として利用している。ポジティブなコントロールとして外部コントロールを使う場合は、植物由来のmRNAとハイブリしないヒト由来のcDNAをスポットする。ハイブリ時にサンプルのRNAに一定量混合することで、実験間の誤差を補正することが可能となる。
スポッティング後の処理
スポットが終了したフィルターは、アルカリ変性をした後、UV照射でDNAの固定を行う。変性は変性液で湿らせた濾紙上でフィルターを湿らす程度で行う(Fig.5、48KB)。変性液量が多すぎると、スポットが乱れることがある。
以上