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研究成果

モデル植物シロイヌナズナの研究において、遺伝子資源が使いやすくなりました。

〜シロイヌナズナの遺伝子資源情報の整備を行い、TACポジションビューアーを公開しました。〜

2015年7月31日

 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)は、普遍的な生命現象の解明のために、植物科学の分野で一般的に用いられているアブラナ科のモデル植物です。シロイヌナズナでは、研究に役立つ多種多様な実験材料(遺伝子資源)や解析技術が整備されており、それらを用いた研究が世界中の植物研究者によって行われています。
かずさDNA研究所は、2000年に発表されたシロイヌナズナのゲノム配列解読において、国際コンソーシアムに日本から唯一参加してその解析に貢献し、また多くの遺伝子資源を提供しています。

 かずさDNA研究所の遺伝子資源のひとつであるシロイヌナズナTACクローンは、各々のクローンがおよそ8万塩基対(80 kb)の長さのシロイヌナズナゲノムDNA断片を含む長鎖ゲノムDNAクローンです。シロイヌナズナTACクローンは、植物の遺伝子をクローニングすることなどに用いられています。この遺伝子資源は、これまでも限定的に提供されていましたが、別途、個々のクローンの情報を得る必要があり、十分に活用されていませんでした。

 そこで今回、約6,000個のシロイヌナズナTACクローンに含まれるDNA断片の末端配列を決定して、各々のTACクローンをシロイヌナズナの染色体上に整列しました。今回整列化したTACクローンのセットは、シロイヌナズナゲノム(約1.3億塩基対)のおよそ90%の領域をカバーしていました。これらのTACクローンの情報を整理したデータベースを構築して、研究者にとってユーザーフレンドリーな検索しやすい“ビューアー”方式で公開しました。

 この遺伝子資源は、ほとんどのシロイヌナズナ遺伝子を形質転換可能な形で供給していますので、植物遺伝子の迅速なクローニングや、特定のゲノム領域のコピー数を増やしたり、改変したりする研究に役立ちます。また将来、このクローンを元にして、高次元の機能が付与された新しい植物が創出されることが期待されています。

 研究成果は、The Plant Journalで2015年7月31日にオンライン公開されました。

論文のURL:
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.12949/abstract
シロイヌナズナTACポジションビューアー:
http://www.kazusa.or.jp/komics/software/TACPositionViewer